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火のそばの輪郭

 お盆休み。実習場前には、2台の車が停まっていた。

「おはよう玲奈ちゃん」

「おはよ」

あいりと雄介が声をかける。実習場の外に積んであった木っ端の束をバンの荷台に積込んでいる。

 お盆休み中なはずなのに、実習場の入り口は開いている。

「えっと、他の先輩達は?」

「ああ、望とほのかはイオンに買い出しや。和也と琴葉は中におるぞ」

実習場に入った瞬間、玲奈は目を疑った。

「……え?」

削り台が並び、道具が出ている。しかも、和也と琴葉は現寸図を描いている。

「おはよ、玲奈ちゃんかな?」

ジーンズ姿の女性が、自然に声をかけてきた。

「……あの、沙紀さんですか?」

写真で見たことがある。話に聞いていた和也先輩の幼馴染のお姉さん。

「今日は、よろしくね」

沙紀は、さらっと言った。

「あの、あの2人なにやってるんですか?」

「ああ、実習場の中から持っていく物あるから、鍵開けてもらって入ったら、望君が買い出しいくってなってその間現寸描くってなってこのとおり‥」

戸惑う玲奈の横で、後から入ってきた同じ一年の美山が小さく息を呑んでいた。

「なにキャンプの前にやってるんですか?」

「まあ、キャンプ午後からだし、1時間で済むからってなってな。多分もうじき終わるから、まあ待っていてやってくれ」


 クロスの実習が終わった二日目の放課後に、望が提案した。

「夏休みだしね。お盆くらいは、木から離れてもいいでしょ」

そうして、一泊二日のキャンプが計画された。その場にいた、玲奈と美山も流れで誘われて一緒に行くことになった

 

 全国大会を目指す人たちの練習は、密度が違う。レベルも違う。朝も昼休みも、放課後も毎日先輩達は練習している。

――今日は息抜きのはず。それなのに出発前に図面って?


 沙紀と玲奈と美山は、邪魔にならないように、端で現寸を描く二人を見守っていた。

「ほら、そろそろ完成だな。望君も帰ってきたようだ。そろそろしまいにしろ」

沙紀はペットボトルでお茶を飲みながら言った。

「もうそんな時間? あ、僕も飲みたい」

沙紀はペットボトルを和也にペットボトルを手渡すと、そのまま口にする。

「あ~僕も僕も」

和也はペットボトルを手渡した。美味しそうに琴葉が口にする。

――和也先輩、琴葉先輩、沙紀さん。の距離が、近い。

身体的な距離じゃない。言葉の間。視線のタイミング。

説明がいらない関係。

そこに、割って入る“隙間”がない。

 午後の1時過ぎに、キャンプ場に着いた。郊外にある市が管理するキャンプ場だった。

テントを張る。火を起こす。作業は、自然と役割分担されていく。

「玲奈、これ押さえて」

琴葉が言う。

「は、はい!」

火がついた。ぱち、と薪が弾ける。その火を囲む輪の中で、望とほのか、雄介とあいり、和也の両隣に沙紀と琴葉が並んでいる。風香は美山と並んで楽しそうに話していた。玲奈は美山の反対隣りに座っていた。

和也先輩と琴葉先輩は、“隣にいる”というより、“同じ方向を見ている”。沙紀は姉のような立ち位置で、時に母親のような気づかいを見せる。そんな先に和也は素で応じている。

それは、恋とか、そういう言葉では言い表せない。

もっと――深い。

焚き火の明かりが、三人の影を揺らしていた。

 玲奈は、その影を見つめながら思った。

 ――ああ。

 ここが、追いつきたい場所なんだ。


第94話目の投稿になりました。つかの間の息抜きキャンプです。出発の朝まで現寸図作図。それが当たり前の生活になっている琴葉と和也です。後輩から見たら驚きの光景。

次回もキャンプの続きです。

お楽しみいただければ幸いです。


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