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見習い初日➁ 電気は上から下へ 配管は下から上へ

作中の建築現場の専門用語について、初めの一回のみルビを振らせていただきます。

 現場に着くと建築地内に車を停めた。敷地(しきち)は、比較的街中の住宅地の中にある新築の2階建ての住宅だった。外観は片流(かたなが)れ金属屋根に金属の外壁。後から聞いた話だとガルバニウム鋼板(こうはん)と言うらしい。色は黒っぽい細かい織り目のある今風のオシャレな外観。まるで住宅には見えず、事務所か店舗かと思ってしまった。

「さぁ和、まずは荷物下ろすぞ」

そう言うとバックドアを開けた。荷台に一杯積んである大工道具。

「いいが、これはな、コンプレッサーって言うんだぞ。コンプレッサー、そうこれで空気送って鉄砲を繋いで…」

「鉄砲っ?」

すると心太が

「圧縮空気で釘を打つ、釘打(くぎうち)ち機のことだよ」

と言って、釘打ち機を2台ほど取り出し、1台ケースから出して実物を見せてくれた。

「これが釘打ち機、通称鉄砲。このコンプレッサーにホースつないで、ここにね繋いで、これで圧縮空気で釘打ってくんだよ」

「へー」

「それからこっちは三脚ね。これも高いところ施工するのに使うからね」

言われるがままに建設中の住宅に運んでいく。

「それと和君、これ足袋靴(たびぐつ)って言うんだけど、建物のも裸足じゃ危ないし、かといって土足では汚しちゃうから、まあ大工が履く上履きだと思って。確か和君、足27cmだったよね。用意しといたから」

と言って、新品の真新しい布製の黒作業靴、内履きを渡された。玄関の鍵を開けると中にはまだ壁が張ってない状態だった。

「これが現場なんだ」

「和、初めてだべ、現場見んの。いいか、住宅ってのはな、建前で骨組みまでは見たときあんべ。まずなこれ。これが柱でこっちが間柱(まばしら)。でこれが筋違(すじか)い。そこさこれ胴縁(どうぶち)くっつけて。これにな今日これから届くボード張っから」

 建物にはもうすでに窓も窓枠も取り付けられている。ただ中の壁はむき出しになっていて、中には綿のようなものがビニール袋に詰まって壁の中にびっしり入っている。

「いいか、これが断熱材って言うからな。グラスウールって言うんだぞ。それからよく見てみ、ほら配線入ってんべ。天井から壁の中に降りてきて電気配線入ってるからな。家のコンセントとかスイッチ、壁についてるのは、みんなこうなってっから。電気の配線は天井から壁、つまり上から下に入ってるんだ」

重が天井の下地から壁に配線されているケーブルを指で指してくれる。

「よく見てみ、ほらこれ配管なあ。配管は床下から上な」

重が指さした壁の中を見ると、床からピンクと青のプラスチックのホースのようなものが取り付けてあり、灰色のプラスチックの管が床に穴が開いて床下から立ち上がっている。

「これが配管なの?」

「これねさや管と言って、中に架橋(かきょう)ポリエチレン管と言う白い管が入っているから。青が水、赤がお湯。床からの灰色の管は、塩ビ管って言って排水用。これからここに壁のボード張って、その後、水栓(すいせん)、つまり蛇口(じゃぐち)を取り付けて配管とつなぐんだよ」

心太が手に取って説明してくれる。

「こう言うさ、ほら薄白いホース入ってんだけど。青い方が給水、赤い方が給湯(きゅうとう)、お湯が出てくるんだよ。今はね、こんなふうに配管がぐにゅぐにゅ曲げることできるから、とっても施工が楽になったって設備屋さんが言ってたよ。それからはもう床張っちゃってるけど、床下には、排水管の横引き管が入ってるんだよ」

心太は説明が上手い。重がざっくり教えてくれるのに対して、心太の説明はとっても分かりやすかった。

「フローリングで床の仕上げやってあるから、これから天井と壁に石膏(せっこう)ボードっていうの、今日張ってくんだけどね。僕と重さんとでボード釘打ちとカットするから、和君はボード持ってきてね。とりあえず今日は、運ぶのと支えるのに徹してよ。あぁ駄目か。足まだつらいかな」

「大丈夫だと思います」

「そうか、それならいいんだけど」

 施工中の建物の内部を見るのは初めてだったので、住宅の壁の中ってこんな風になっているのかと思った。天井は格子状に木が組まれていた。和也が天井の下地を見上げていると、

「あ、それは天井下地の野縁(のぶち)。壁の下地が胴縁(どうぶち)って言うんだ」

天井の下地と、壁の下地を指さしながら説明した。

「重さんも教えてくれましたけど、同じ下地でも天井と壁では名称が違うんですね」

建築は覚えることがたくさんあって大変だな~と思った。

「天井はボードを貼る位置に柱に(すみ)出して。あぁ、墨って(しるし)出すってことね。ボード取り付ける印の上に、部屋の周囲の柱にこの野縁っていう材料を取り付けていくんだ。そしたら取り付けた野縁に同じ高さで野縁を455㎜間隔で取り付けるんだけど、その上に野縁の直行方向に野縁受(のぶちうけ)けを910㎜間隔に取り付けて、梁から吊木(つりぎ)で吊っているんだよ。ほら、野縁受けと野縁が直行して付いているでしょう。後で下から天井用の石膏ボード張っていくけど、ボードの重さで中央部が下にたわむから、若干天井の中央部分を、上に膨らませる感じで吊っているんだよ。ここの部分はこの2階床下の30㎝(せい)、つまり30㎝高さのある梁から吊木で吊っているのが見えるでしょう。こういう天井を吊天井(つりてんじょう)って言うんだよ。案外、建物って完成しちゃうと、その下地の構造なんて分からないから。普段見慣れてないけどね、大工はこれを作ってくのが仕事だからさ、日常茶飯時なんだよ。分からないことがあったらとにかく何でも聞いてね」

「そうだぞ和。心太は、高校を出た後、訓練校入ったんだよな。だから建築に関することをしっかり勉強してきてっから何でも聞け」 

訓練校、専門学校だったら聞いたことはあったのだけど、訓練校って一体何だろうと思った。

「専門学校じゃないんですか?」

「あ~それね、職業訓練校っていうのがあって。特にここ氷山では、高卒で2年間教えてくれる職業訓練施設があるんだよ。僕は高校出た後、技術アカデミー氷山の建築施工科に入学してね。2年間そこで建築の勉強してきたんだよ」

「専門学校と何か違うんですか」

「訓練校はより実践的なんだよ。アカデミーでは2年間のうちに、自分達で一棟小さい二階建ての住宅作っちゃうんだよ。だからこの辺で大工になってるやつはアカデミー出身って結構多いんだ」

「そうなんですね」

「あ、ごめんごめん。仕事の続きしようね」

言ってるうちにブロロロロッと、ディーゼルのエンジン音が聞こえた。


第6話の投稿になりました。

お楽しみいただけたのなら幸いです。

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