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君と彼らが僕の心に火を灯す  作者: 牧村せつら


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オープンキャンパス④ 決意


「こんにちは、今話にあった月島の長女です。小暮先生のところでお手伝いさせていただいています」

「あぁ棟梁の娘さんか。坂崎と申します。以前10年以上前に事務所にお伺いしたときにお会いしてますね。まだあの時は小学3~4年生だったはずです。妹と弟さんもいらっしゃいましたね。僕が棟梁とお話していた時に4人で事務所の中で仲良く遊んでましたから」

「弟?」

「あれ、違いましたか?」

「妹はいますが。あ、それ彼のことです。彼、隣の幼馴染で。昔から彼の妹とうちの姉妹4人でよく遊んでいましたから」

そう言って和也の方を見た。沙紀はよそ行きモードになっている。

「あぁ、あの時の…」

「すみません、僕はよく覚えてないんですが」

本当に記憶にない。子供の頃、月島工匠の事務所で遊んだことは頻繁にあった。その時はいつも沙紀を筆頭に4人一緒だった。そう言えば小3でサッカーを始めてから空いている時間はサッカーばっかりするようになっていった。

「そうだろうね。まだ小学1年か2年生位だろ。そりゃ覚えていないよね。それじゃあここで、設計についても、大工についても、施工管理についても、しっかり学んでみるといいかもしれないよ」

「はい」

「9月のオープンキャンパスに今回来たってことは、まだ部活でもやっていたのかい。でもバイトしていたってことはそうじゃないんだろうし」

「あの~、2年の時、部活で大会中、大怪我をしまして。しばらく入院していました。それでやっとリハビリ期間が終わって。で、リハビリも兼ねてバイトしていました」

「大怪我、どこ怪我したんだい」

「右足の膝を、半月板損傷と靭帯断裂をしまして。逆に大工仕事、大丈夫でしょうか」

「今は普通に生活できるのかい、でもバイトやってたんだよね」

「はい、普通に生活したり作業したりする分には問題ないです」

「運動するにはどうなの」

「軽く体育をする程度なら大丈夫ですけど、本気で走ったりはできません」

「それなら大丈夫だよ。大工仕事をするのに影響ない。靭帯損傷なら僕も膝半月板損傷と併せて学生時代にやっているし。体育もここの体育はレクレーションみたいなものだから。ストレス解消にやるって感じだしね。本気で大会に出ようとか何をしようっていう感じじゃないから大丈夫だよ」

 最後に鉋(かんな)削(けず)りの体験をさせてもらった。坂崎や先輩達はデモンストレーションでいとも簡単にカンナを引くとティッシュペーパーよりも薄い鉋(かんな)屑(くず)が、ヒノキ材の長さと幅で途中に切れることもなくきれい削られていく。

「脇を閉めて無理な力を入れないで、まっすぐ引くことだけ軽く押さえる感じで引くことがポイントだよ」

現場で鉋削りをしている重の姿は見ていたけれども、実際に鉋を削ったのは初めてだった。簡単そうでこれが難しい。均一に薄く材が削れない。既に鉋台(かんなだい)の刃の調整はしているはずなのに薄く削れない、坂崎が、

「ほらかして」

と和也の使っていた鉋をとって、木材の上に当てると、いとも簡単に鉋屑が引かれていく。これが腕の差だ、技能の差なのだとつくづく実感した。こんな人に習ったのだから、心太が何でも出来て、何でも知っているのが分かった気がした。

 和也は技術アカデミーの建築施工科に、この時本当に入学したい、そして技術と技能を身につけたいと強く感じていた。


第13話目の投稿になりました。

ついに和也がアカデミー入学を決意しました。

次回は和也のアカデミー推薦入試挑戦になります。

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