転生したら和歌山だった
第1章「異世界の勇者、和歌山へ転生」
俺、山下拓海は、和歌山県のある普通の高校に通っている。と言っても、最近は学校にあまり行ってない。タバコを吸いながら仲間とダベったり喧嘩を楽しむ、そんな毎日だ。
「拓海、また学校さぼってんのか?」仲間の健二が公園のベンチで笑いながら言った。
「ああ、そうだよ。つまんねー授業なんて聞いてられるかよ。」俺はすべり台で寝転がりながら答えた。
今日も普通に公園でだらけていると、突然、空から光が降ってきた。それは目も眩むような光で、一瞬で全てを覆い隠した。
「な、なんだーーー!?」健二が叫んだ。
光が消えると、そこにはテレビゲームから飛び出してきたかのようなキャラクターが立っていた。剣を携えた勇者風の男、とんがり帽子を被った魔法使い風の熟女、それに他にも獣人や変わった格好をした子供がいた。
「これは…どこだ?」勇者風の男がキョロキョロと周りを見回しながら言った。
俺たちは驚きで言葉を失った。この状況、一体何なんだ?
「転移のアイテムが失敗したか?」勇者風の男が目を細めて言った。「いや・・・この世界に強大な悪の力を感じる。」
俺たちは彼らの会話を遠くから聞いていた。彼らが何を言っているのか、ちっとも理解できなかった。
「うん?なんだお前たちは?」勇者風の男が俺たちに向かって言う。「ヘルメス、奴らをスキャンしろ。」
魔法使い風の熟女が手をかざすと、不思議な光が俺たちの体を撫で回した。
「二人ともレベル16か… 能力も大したことないわね。こいつら弱いわよ!」魔法使い風の熟女がバカにするように言った。
「なんかすごくひどいことを言われている気がする…」健二がつぶやいた。
「おい!頭のいかれた格好をしているお前!どっから来たんや!」俺は怒りを抑えきれずに叫んだ。
まだ状況が理解できていない両陣営だったが、その言葉を契機に勇者風パーティーが戦闘態勢に入った。
「こいつら、敵か?それとも…」勇者風の男が言いかけたが、熟女が彼の腕をつかんだ。
「弱いけど気をつけなさい、特殊攻撃を出すかもしれないわ。」
俺と健二、勇者風の男と魔法使い風の熟女。お互いの目が交わり、空気が張り詰めた。
「ヘルメス!攻撃しろ!」勇者風の男が叫んだが、すでに魔法使い風の熟女は杖から閃光を放ち、俺と健二の方に向かってきた。
「ちょっと待てよ、なんで俺たちが戦うんだ!?」健二が慌てふためいて叫んだ。
だが、俺は逆に興奮していた。この状況は理解できなかったが、なんだか心の奥底で、これが楽しいと感じていた。
「おい、健二! こいつら相手にやってやろうぜ!」俺が叫ぶと、健二もやる気を出してきた。
「当然だろ、拓海!」
勇者風の男とヘルメスという熟女は、俺たちに攻撃を仕掛けてくるが、俺たちは何とかかわし、反撃を始めた。
俺たちのアホみたいな日々の喧嘩の経験が、この戦いで役立っている。
しかし、戦いが進むにつれ、勇者パーティーの戦闘の経験と技術が俺たちを圧倒していく。俺たちは劣勢に追い込まれた。
そこへ、突如、新たな力が加わる。
「待て、皆!」別の声が響いた。
戦闘が一瞬の静寂に包まれた。そこには、見たこともない美しい格好をしたエルフの女性が立っていた。
「戦うべき相手はお互いではありません。ここに来た理由、そして強大な悪の力について、話し合いましょう。」
その言葉で、すべてが一変した。
「うぇぇ。。。エルフだ。」健二が目を丸くして言った。「あのゲームとかで有名な耳が長いあのエルフだ。」
俺も信じられない光景に目を奪われた。勇者風の男や魔法使い風の熟女といい、これにエルフ風の美女まで加わると、なんと異世界転生組の方が多いという転生してきたのはどちらという状況だった。
エルフ風の美女が名前を名乗った。「私がエスセロと言います。私があなたたちをこの世界に呼び寄せました。」
彼女がさらっと重要なことを言った。
「実はこの和歌山県は神話の時代から大切な土地で、神の使いである八咫烏の化身からこの土地を守ってほしいということで勇者たちは召喚されたのです。」
俺たちはしばらく言葉を失った。そんな信じられない事実にどう反応すればいいのかわからなかった。
「で・・・俺たちは?」健二がようやく言葉を発した。俺たちがこの場にいる意味を聞いたのだ。
エスセロが微笑みながら答える。「・・・さぁ?」
その答えに、俺たちは更に混乱した。この異常な状況の中で、俺たちの役割や意味が何なのか。まさに未知の冒険が始まろうとしていたのではないのか。
たまたま公園で遊んでいたところ、この騒動に巻き込まれただけなのか!俺は急に自分の存在を否定されたように感じて、頭に血が上った。
「さぁ・・・だと?」俺はエスセロの言葉にイラッとして、声を荒げた。「俺たちはなんでこんなことに巻き込まれなきゃならんのだ!」
エスセロは俺の怒りをなだめようとしたが、勇者風の男が一歩前へ出た。彼は諭すように拓海に言う。
「若者よ、わざわざ戦う必要はない。われわれはこの土地を守るために呼ばれたのだ。おまえたちは――」
「馬鹿にするな!」俺は叫んだ。「これまでの喧嘩の中でもこんなに馬鹿にされたことはない。「勇者風のお前よぅ、続きをやろうぜ!」
健二が驚く中、勇者風の男も少し驚いた顔をしたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「もし戦いを望むのなら、受けて立つぞ。だが、わたしの剣には力が宿っている。傷つけるつもりはないが、覚悟しておけ。」
「怖ぇこというなよ、イクぜ!」俺は拳を固め、勇者風の男に突進した。
この瞬間、現実と異世界、そして普通の高校生と勇者の間に生じた不思議なつながりが、運命の新しい扉を開いた。
勇者風の男の剣には本当に力が宿っていたらしく、あっという間に俺は服をすべて切り裂かれ真っ裸にされてしまった。あれだけ強かった喧嘩も、この異世界の戦士の前ではまるで通用しなかった。
俺は倒れたままで息を切らし、健二に優しく慰められた。「大丈夫か!寒くないか、拓海?」
「こんなときは…」苦しい息の中で俺は呟いた。「可愛い彼女が登場するもんだろう…」と言って、俺はガクッと力を失った。
健二の目に怒りの炎が灼きついた。「この仇取ってやるぜ。俺の相手は誰だ!」彼のこぶしに力が入り、異世界転生組に挑んだ。
その時、のっそりと狼の顔をした筋肉ムキムキの二足歩行の戦士のような獣が前に出てきた。その目には戦いへの誘いの光が宿っていた。
「君の相手は私、ガルフォードだガウ。」その獣戦士が言った。「私たちはこの世界に命をかけて戦う覚悟がある。君たちにもその覚悟はあるガウか?」
健二は一瞬で、その獣戦士の強さを感じながらも、すぐに覚悟を決めた顔をした。「拓海を傷つけた仇、必ず取り返してやる。」
健二の目は炎を宿し、心は揺るがなかった。俺の仲間を傷つけた仇、ガルフォードへの怒りが彼の中で渦巻いていた。
「行くぜ!」健二が叫び、突如その腕が眩い光を放った。
「何だ、この光は...!?」ガルフォードの声に驚きの色が混じる。
次の瞬間、健二の拳が深々とガルフォードに突き刺さった。その拳には何か特別な力が秘められていたかのようで、ガルフォードはその場で激しく後ずさった。
「ちっ、じっちゃんの言ってた通りかよ!」健二は悔しげに呟いた。彼のその拳に秘められた力、それは昔から祖父に伝えられていた特別なものだった。
ガルフォードは深い息をついた。「お前、ただ者ではないようガウな。」
健二はにっこりと笑った。「お前もな。」
二人の戦士、一人は異世界から転生した獣戦士、もう一人は普通の高校生。しかし、彼らの中には隠された力と覚悟があった。
「おい拓海!いつまで寝てんだ。楽しいのはこれからだぜ」
この戦いは、ただの遊びではない。運命の戦いであり、未来に向かう道の始まりだった。