茨のベーゼ 2話修正途中
×茨♂:
△雲黒♂:
□N♂/佐野♂:
☆ターラ♀
Φ三井♀/トロイ♀/シズカ♀
♂3:♀2
※『穴が有れば何だって良い(ブラックホワイト・ホールズ)』ですが、『穴が有れば何だっていい』の部分は読み上げず、『ブラックホワイトホールズ』の部分のみ読み上げてください。
<場面転換 夜19時45分。金管楽器を抱えて出てきた三井の後ろにさりげなくついていく茨>
×茨N:ストーカーねぇ....。
これと言って怪しい人影も....無ェ~な。
オレに気付いて姿を隠している....線も薄い。
そんな敏感ならば..そこらの女に気付かれるようなタマじゃねえ。
....。
依頼人の動きもおかしい。怪しまれないように普段通りのルートで帰宅しては居る....が。
挙動不審だ。
キョロキョロキョロキョロ....ったく、LIMEで指示すっか。
『ちょい挙動不審だから、普段通りに』.....(セリフに割り込まれる)
△雲黒:『動くな』。
×茨:............あ?
□N:茨稜剱の顔面の真右。そこにぽっかりと手首程の円状の空間が穴を空けている。
そこからは手が伸びていた。青白い男の手。贅肉の少ないその手には携帯が握られている。
その手は握られた携帯を稜剱の耳に近づけ、そして携帯から聞こえる声はこう続けた。
△雲黒:『女の後を....そのまま尾けろ.。
決してオレを探すな。変なそぶりを見せやがったらお前の喉を切り裂く...。』
×茨:...テメーら、グルか?
△雲黒:『.....。』
×茨:答えろよ。素直に従ってやってんだろ?
△雲黒:『黙って歩け。....まぁ、お前は女のウソを見抜けねえってのが分かって愉快だがな。クックック....。』
×茨N:明らかに訓練された支配者...。
今までのチンピラじゃあ無ェ。
距離を取ってやがる。このオレの耳に携帯を当てて安全に会話する点を見ても...ヤベえかもな。
<家々が立ち並ぶ路地裏。街道から外れた道に入ると三井はぴたりと足を止めた。>
×茨:.....。
<携帯をスピーカーモードにした雲黒。猫撫で声で三井に話しかける>
△雲黒:『三井ぃ~。言ったよな?キョロキョロすんなってェエ~......。』
Φ三井:ひいぃぃっ!!ごっ、ごめんなさいぃぃっ!
△雲黒:『お前のせいでミスっちゃってたらまぁ~~~た『お仕置き』だったんだよォォ?
仕方ないよなァ? オレはやりたくないんだけど、規則は守らなきゃだもんねェ?』
×茨N:....気持ち悪ィ奴だ。”自分の加虐はコンテンツになる”って勘違いしてるタイプ...。
△雲黒:『オレのイケボをもっと聞かせてやりて~~ぇけど♡
....本命はこの目つきの悪ィ男。
茨探偵事務所の茨稜剱だな...?』
×茨:オレが茨だって分かってっからこんな薄暗え路地まで女使ってオレをおびき寄せたんだろ~がボケ。
で、お前誰?
△雲黒:『ほォお...?ビビんないねぇ~茨稜剱...。
......いつまで見てんだァ三井ッ!!こっからは男同士の会話なんだよォ!
とっととどっか行っちまえェッ!!!!!』
Φ三井:ひいいっ...ごめんなさい、ごめんなさいィィィィィィッ!
<どたどたと逃げる三井>
△雲黒:『さて....。残ぁん念だがオレの名前は教えらんねえなぁ....?それに教える意味もねェ...。
何故なら....今からッッ!!!茨ィ!!お前は”どうしてこうなるか”が分からないまま.... "何が起きたのか”も分からないままァァァ...。
死ぬんだからなァァ~~~!!!!』
<次の瞬間、稜剱の顔の真横の穴に手が吸い込まれて消える。地面に携帯はカタン、と通話中のまま落ちる。道路に落ちたままの携帯から雲黒の声が響く。>
×茨N:ま....死ねだの殺すだの、そういう脅しは慣れっこだ。
支配者との喧嘩だって頭ァ使えば余裕で
△雲黒:『渡り合える、とか思ってんじゃねえだろうなァ~?
これはすでに喧嘩なんて生易しいモノじゃねえんだよ。
綿密に綿密に綿密にオレが仕組んだ.....ッ!
”殺害行為”なんだぜええええ~~~ッ!!!』
□N:頭上で音が響く。
容易に聞き取れるその音に反応できない茨では無かった。
だが、余りの虚。余りの不意に、稜剱の反応は通常の反応速度を大きく下回った。
×茨:なっ........
△雲黒:『“穴が有れば何だって良い”!!!!!!!!!!
お前の位置もその地形も把握している今!
弱点など無ぁぁぁぁぁぁ~~~いッ!!!』
×茨N:の...ッ!!!
濃硫酸だとォォォォォォォォォ~~~~~~ッッッッ!!!
<茨稜剱の頭上に“穴”が現れ、そこから“濃硫酸”のラベルが張られた、蓋のされていない瓶が投げ込まれる。>
△雲黒N:キッ...キッキッキッキィィィ~~~!!
オレの“穴が有れば何だって良い”はオレの半径1mに『入口』....ッ!!半径20mのどこにでも『出口』を設定できる...ッ!!
△雲黒:『これであの茨稜剱を始末すれぶぁぁ...♡
オレ達はしばらく遊んで暮らせるううう~...♡
なぁ、ターラぁぁ~...♡』
ターラ:『そぉ~んの通りィ♡
も~っと高い所に引っ越してぇ、毎日イチャイチャしてぇ...♡やん、今日も斎の声、カッコいィィ~~っ...♡』
<2階建てのアパートの上から茨の居る路地を見下ろす雲黒。
特攻服の様な衣装を身に纏った雲黒がニヤつきながら自分の特攻服に向かって猫撫で声で話しかけると、その特攻服も甘い声で返事を返す。>
<後ろに飛び退いて流れ落ちる濃硫酸の滝を回避する茨>
茨:っクッソ...!!
コイツ....ッ、BAIXEの能力を最大限に使いやがる...ッ!
こんな...っ、こんなふざけた野郎にッ...!
雲黒:『そんなモタモタしてていいのかァ~茨稜剱....♡
お前への攻撃はまだまだ始まったばかりなんだよォ!!!!
ターラ!!』
☆ターラ:『分かってるよォ斎ッ!!』
<ブウン...と低い音が鳴り、雲黒の前に手首程の穴が現れる。>
△雲黒:『コイツを避けてみろォ~~~~茨ィ...。
避けられれば...だがなァ~~~!!!』
□N:雲黒斎。
BAIXEが発現し、支配者となるまではただの軍事オタクであった。
そして支配者となった今。内向的だった性格は支配者としての覚醒を機に威圧的に変わっていった。
そして、軍事オタクであるが故の犯罪。
毎日眺めていたインターネットのブラックマーケット人間とコンタクトを取り、兵器を受け取る。
兵器を受け取る代わりにカネを渡す。
金など簡単に用意できた。
自分の愛しいターラと共に備わった能力、“穴が有れば何だって良い”を使えば、スリ等欠伸が出るほど簡単であったから。
だから、彼は様々な兵器を収集することが出来た。
拳銃、サバイバルナイフ、赤外線スコープ....そして、
×茨:対人地雷................ッだと..............!!!!!!!!!
△雲黒:『起爆ねぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!』
×茨:ッッッだらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!
<目の前に穴が現れ、対人地雷が現れた瞬間に、身体を捻りながら対人地雷を横に蹴り飛ばす茨。対人機雷が爆発するも、爆風と共に射出された金属片は茨の左腕を僅かに掠っただけだった。>
△雲黒:『なかなかやるなァ~~~~茨稜剱ンンン...。支配者相手に喧嘩とはいえ数はこなしてきてるってのは本当らしい...。』
☆ターラ:『そろそろ本気出しちゃおうよぉ斎う...』
△雲黒:『あんま騒ぎになっても困るしなァ...
ま、奴が対人地雷を避けるのは想定内...。
ま~~~だまだお前をぶっ殺す手段はあるんだぜェ....?』
☆ターラ:『キャッハハあ♡
斎ってばぁ、クールでスマート~~ッ♡』
<場面転換 路地裏の茨>
×茨N:クソ...っ、このイカレ野郎のBAIXEによる能力は十中八九“転送”で間違いねえ...ッ!
問題はその能力の活用法!!!
予想外の位置から予想外の攻撃が飛び出してくる.....、強制的な後手の対応を取らされている!
明らかに自分の能力を研究し!
綿密に作戦を立ててオレを殺害しようとしてきている!!!
今までの雑魚とは別格....!!!
ッックソ、何故!!!!
...いや、今はそんな事どうだってかまわねえ...、この戦いは長引いたら間違いなく能力のないオレが負ける...ッ!
だがオレの位置を何処からか必ず把握しているはずだ!
何処だ!どこからオレの位置を把握している...ッ!
△雲黒:『おいおい良いのかァ~~....?
そっちに倒れこんでも....良いのかァァァァァァ~~~~~~~~~ッ?』
×茨N:何ッ....
これは...ッ...
☆ターラ:『斎とあたしの“穴が有れば何だって良い”でサバイバルナイフを六本ほど地面に送って...ナイフの柄の部分を入口に残す。
そのまま穴を閉じれば.....♡』
△雲黒:『柄が地面に埋まった状態で転送されるッッッ!!!
ナイフの柄は地面に埋まり固定され....刃の部分が地表に露出するように転送されるッ!
つまりィィィ~~~~ッ!!!』
☆ターラ:『即席の槍の生えた地面の完成ってワケぇぇぇえぇぇッッ!
地面に向かって自分から飛び込め!!!この間抜けッッッ!!!』
×茨:くっ....クッソオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!
<何本ものナイフが茨の右半身に突き刺さる。>
×茨:ぐあああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!
△雲黒:『ヒィィィ~~~~~ット♡』
☆ターラ:『きゃははははあ~~~っ♡ 斎ってば最強~♡あっ、ていうかぁ、斎の漢字って斎とも読むしぃぃ~~♡
斎強っ♡斎強~~ッ♡』
×茨:ゼェ....、ゼェ.......、
△雲黒:『なんだァ?携帯に向かってヨチヨチとみっともねェえ!
命が惜しいなら!!!
───ッッッ土下座だろ普通よォォ!?!!?!?』
☆ターラ:『でもダァ~~~メ♡
私達は賢ォォ~いの♡
携帯はミュートにしてある...あなたの声に私達が返事なんてしてあげなぁぁぁぁ~~~いッ♡』
×茨:カッコ悪ィなぁあああ~....。
<携帯を手にして携帯に向かって呟く>
△雲黒:『あ?』
☆ターラ:『ハァァ?』
×茨:返事が聞こえねェェ~~~なァ~~~???
ビビッてミュートにしちまってんのかァこの三下発情ネズミ共ォォ~~~~!!!
△雲黒:『んなっ....なっなっなっ.....』
×茨:『女使ってよォ~~~
オレを誘い出して....
ネズミみてぇにコソコソ隠れてバレねぇように眠てえオモチャ投げつけやがってチンピラ崩れがァァ~~~~~~ッ!』
△雲黒:『こっ、こっこっ、こんんんんんのォオオオオオオオオッ...............!!!!!!!!』
☆ターラ:『ダメ斎ッ!挑発に決まってるわ!
落ち着いて武器を奴の下に転送し続ければ』
×茨:『テメェのそのブッサイクな作り声に股濡らしてる横のバカ女が哀れでならね~~~ぜこの単細胞がァァァァ~~~~ッ!!!!
漢なら拳でかかってきやがれやァァァァァァッ!!!!!!!!!!!』
△雲黒:『ン上等だクソガキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
□N:稜剱の顔面。
その真正面に穴が生まれ、腕が飛び込んでくる。
...が、雲黒の腕が茨を捉えることは無かった。
×茨:だから単細胞だっつ~んだよ。
ようやく.....
テメェを捉えたぜェッッッッ!!!!!!!!!!
□N:稜剱の顔面を打ち抜くはずだったその拳は、稜剱の腕で絡め(からめ)取られていた。
△雲黒:『何ィ!?!?!?!?』
×茨:どっからパンチが来るかなんざ大体分かってんだよアホンダラ。
お前らの位置...、大体把握してんだからよォ。
オレの向く方向...、その足元と頭上! そこを真っ先に狙える位置...ッ!
背後や真横から全く来ない攻撃...。
恐らくお前は“目”でッ!上からオレを“見下ろして”いるッッ!!!
んで.....ガキでも分かるぜ。
今のオレを見下ろせる、オレの正面か背後の建物.....!!
テメェらは今ッッッ!!!!正面のアパートの屋上に居るッ!!!!
そりゃァ頭に血が上った状態かつ今のこの有利な状況なら....!オレの顔面にワンパン入れてぇわなァ!!!
△雲黒:『ぐうううっ...!!!』
×茨:携帯がミュートされてんのが残念だなァ.....。テメェらの悔しがる無様なブタみてぇな鳴き声が聞けねぇからよォォ~~~!!!
でもまぁ....。関係ねェか...。
こうして穴を通じて対面できたんだからなァァァァ~~~~~~~ッ!
っく....。くっくっくっ.....。
気持ちの悪ィ作り声のわりに....オタクみてぇな顔しやがってよォ~~~ッ!!
オラァァァァァァァァ~~~~~ッ!!!
<掴んだ雲黒の腕にナイフを刺す茨>
△雲黒:『あぎゃばああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~ッ!!!!!!』
×茨:ギャァアアァァァ~~~~ッハッハッハァ!!!!!
オラ何とかしてみろよ!!!
転送の穴でも閉じてみるかァ!?
だが...閉じたらテメェの腕も切断されるんじゃあねェのかァ!?!?
すぐに閉じねェのが何よりの証拠ッ!!!!!
何より....お前にそんな覚悟があるかァ!!?!?ねェよなァ腰抜けがァ!!!
△雲黒:『痛ええええぇぇぇ~~~~っ!!痛えよぉぉぉ~~~~~っ!!!』
<雲黒の腕に何度もナイフを突き刺す茨。>
×茨:テメェがゲロするまで何度でも突き刺すッッ!
海賊危機一髪みてぇに.....当たりが出るまで何度もなァ~~~~~ッ!!!!!!!!!!
△雲黒:『痛えぇぇぇぇ.....、痛ぇよォォォォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!!!
ッグウウウ.......!!!!!!!
っく.....。
クックックック...............!!!
だがよォ...... 良い事に気付いちまったぜぇ~~~.....?
逆にお前も!!
逃げられねぇって事になァ~~~ッ!!!!
ターラァ!!!』
☆ターラ:『分かってるよォッ!“穴が有れば何だって良い”!!!!
入口の位置を前方向へずらすッッ!!!!』
△雲黒:オレの腕の拳の先端に入口を移動させれば...ッ、テメェの上半身ッッ!!!!
腰辺りで入口が途切れる....ッ!
ここで穴を閉じちまえばオレの腕は無事なまま!!テメェを輪切りにしてやれるぜェェェッ!!
×茨N:ヤベェッ....!!
×茨:クソがッ....ッ!!!!!!!!
△雲黒:“穴が有れば何だって良い”解除ッッッッッ!!!!!!
<ギュウン、と穴が閉じる。間一髪で茨はナイフを雲黒の腕から抜き、体を引いて難を逃れる。>
×茨N:クソ.....っ、クソッッッッッッ!!!!!!
逃がしちまったッ....!!!
今の場所からアパートまでの距離は20~30メートル....、このダメージじゃ...ッ...。
△雲黒:『茨稜剱んんんんんん.........。
舐めていたよ....。
やはりお前は“俺達”の大きな敵....。
あァ~~~~痛え痛え痛えええええよォォォォ......血があ...血がいっぱい出てるよォ......
だが......もう油断はしねえ...。
さっきの動きでテメェの体はもう限界だったようだなァ....!
血を失い過ぎてフラフラだぞッッ!!!
お前を確実に殺してやるッ!!!!!!』
×茨N:腕が....上がらねェ.....
△雲黒:『間抜けがッ!!!!!!!!
クソッ...、死ねぇええええッ!!!!』
☆ターラ:『いいぞォ斎ゥウウ!!!
そのままそのバカを殺しちゃえええ~~~っ!!!』
<正面の方向から自分の体を襲う衝撃。
暴徒鎮圧用のショットガンのゴム弾が穴を通じて全身に浴びせられる茨>
×茨:ぐぼッ...、ごぼォッ!!!!!
ゲホッ......、ぐッッ...、がはァッ!!!!
△雲黒:『弾も安くねェ、安価な弾から行かせてもらうぜェ~~~~~~~~?
ゆっくりじっくり...確実にお前の命を削ってやるからよォ~~~~~~~~~~!!!!!!』
□N:稜剱が痛みを感じず、ゴム弾を”熱い”と感じるようになった頃。
×茨N:ど~~~してこうなっちまったんだ....。
クソッ.....。
何が....何が....支配者だ......
“持つ者”....、“持たざる者”.....、......
何が..........
..................やけに世界がスローに見える......
走馬灯..............。
過去の........オレ............。
こんなに仏頂面だったん....だな....。
□N:その瞬間、ある女性の顔が脳裏に浮かぶ。
×茨N:..........この女.......誰.............,
□N:柔らかい笑顔で、頬を僅かに朱に染め。
×茨N:母さん................じゃない..............
□N:何よりその女性の瞳は、この世のものとは思えぬほど美しく輝いていた。
Φトロイ:思い出してくれたんだね。
□N:声が聞こえたわけでは無い。
唇の動きだけ。
ただそれだけで、音の説得力など一笑に付す程力強く、彼女は囁いた。
Φトロイ:ケンちゃん。大好き。
<場面転換 アパートの屋上>
☆ターラ:『あぁん、ゴム弾切れちゃったよォ斎ウ...。
ほ~ら、パパっと実弾で終わらせちゃいなよッ♡
なんかまだちょい息あるみたいだし~。
あ、でも立ってるだけでやっとっていうか、もう死んでそ~~~ッ♡
我が人生に~、なんとかの悔いなし~って感じ♡きゃははははッ!!!』
△雲黒:『ターラ。
おい....。アイツの両腕。なんかおかしくねェ....か....。
遠くてよく見えねぇが.....
光ってねぇ....か........ッ!!』
<ギリギリ立っている、という状態の茨を目を見開き、冷や汗を流しながら凝視する雲黒>
☆ターラ:『えぇぇ~~~?街灯が反射してるとかじゃなくて~~~?』
△雲黒:『もしかして....、もしかするぜッ!
☆ターラ!アイツの死角...ッ!
背後に“穴が有れば何だって良い”を設置しろッ!』
☆ターラ:『な、なんで...ッ....、アイツの背中に穴なんて...、弾が確実に当たるかどうか分からないじゃんっ!
正確に穴が配置できるようには私達まだできるようになってな
△雲黒:『良いから穴を配置だッッッ!!!!!!!!
くそっ、クソクソクソクソクソクソ....ッ!!!
アイツ....!“目覚め”やがったッ!!!』
☆ターラ:『バッ....バカなッ!!!
有り得ないッ!!!
.....ッうううう!!!
“穴が有れば何だって良い”ッ!!!!!!!!』
△雲黒:『展開イイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!死ねェ稜剱んんんんんんんんんんんッッッ!!!!!!』
×茨N:今の音はッ.....!!!
オレの背後!!!
△雲黒:馬鹿め!!
ノロノロお前が振り向くのがこっちの穴から丸見えだァァァ~~~~ッ!
位置は完璧ッ!!!!
FIREEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!
□N:拳銃に付けられた消音器の気の抜けたような音が響く。
真綿を殴りつけるような音と共に、二発。
その二発は稜剱の右太腿と左脇腹を容易に貫通した。
×茨:ぐ......ぉ..................ッ............。
☆ターラ:『やったぁぁぁぁ~~~~~ッ♡
太った豚みたいな鳴き声上げやがってェェ!!!
私達の勝利ッ♡
やったねェ~ん、斎ぅ♡』
△雲黒:キッキッキッキッキィィィ!!!
バカにしやがって茨ァァァァ!!!!
オレの腕じゃあ致命傷になる様な箇所は狙えなかったが....
今のお前を殺すには十分すぎる位置ッ!!!
俺達の勝ァァァァ~~ちだァ茨稜剱んんんんん!!!
<そして、銃撃を食らって倒れながら茨稜剱が恨めしそうにつぶやく>
×茨:..............くたばれ.......。
△雲黒:なんだってェェェェ~~~~~????
聴こえねぇなァ~~~~~!!!!!!
稜ブー(りょうぶー)ちゃんの出荷前の最期の一言なんざよぉ~~~~!!
これっっっっぷぉっちもォ!!!聞こえねェ~~~ぜェ~~~~~!!!!
<そして両腕の輝きは失われ、ドサッと倒れる茨>
☆ターラ:『ばぁぁぁぁぁ~~~ッッか!!
私達に大人しく殺されてれば楽に死ねたのによォォ~~~~ッ!!!』
△雲黒:あぁぁぁぁぁぁ...最高の気分だぜェエ~~ターラ...。やっぱこの日本で気持ちよく....且つ後腐れなく”殺し”をさせてくれる『一族』は最高ォォォ~~~~~~の神輿だぜェェ....♡担ぎたくもなるってモンよォ...♡
よォォ~~し、ターラぁ...。今日は帰ったらお前のどわ~い好きなオレの特別の”イジワル”をしてやるからなァァ....?
☆ターラ:『もォ~~ッ♡
外なのにィ、そんな事言われちゃ......””””””””””””期待””””””””””””しちゃうじゃ~~~んッ♡』
△雲黒:さて...。
アイツの死体を写メ....イヤ...。
“アイツが教えてくれた俺の能力の新しい活用法”ッ!
オレの腕を切断せざるを得なくなるかもっつう~~~危機から得た新しい活用法ォォォ~~~~~~~~ッ!!
“穴が有れば何だって良い”の出口の輪の内側の物体はッ!
能力が解除された瞬間閉じた輪によって切断されるというこの法則を利用してッッ!
茨稜剱の首をスッパリ切り飛ばすとこを動画にしてやるかァァァ~~~....。
まるで糸羊羹を切り分けるみてェになァァァァ~~~~~~~!!!!!!!!!
☆ターラ:『糸稜剱だねェ~~~ッ!
やだ、あたしって面白ォォォ~~いッ!』
<アパートから降りて地べたに転がっている稜剱の所まで歩いて近寄り、見降ろしながらスマートホンのカメラを向け、録画モードにする雲黒>
△雲黒:さて....無様に転がったこいつの死体を動画に録りながら....
“穴が有れば何だって良い”展開ッ!!!
☆ターラ:『いっけ~~~ェ♡
ちょんぱ♡ちょんぱ♡』
△雲黒:能力を解除ォォォッ!!!!
自分の体にぶゎいぶゎいしなァ~~~~!!!
......................あ?
□N:右足首に走る柔らかな違和感。
地面に伏した虫の息の茨による苦し紛れの拳が触れた、そんな、取るに足らぬ違和感。
然し、その違和感は雲黒の心をこの上なく逆撫でする結果となる。
△雲黒:イラつくぜェェェェェエエエ~~~~~~~~~~~茨稜剱ンンンンンンンンン..........!!
☆ターラ:キモッチ悪ィィんだよゴキブリみてェェェにィィ!!茨稜剱んん!
斎ゥゥ!!はやく殺害っちゃいなよォォォォ~~~~ッ!
□N:次の瞬間。
☆ターラ:斎....その足......どうした.........の...........?
△雲黒:何言ってやがんだァターラ?
寝惚けてねェでとっととこのボロ布の
□N:そこまで口を開いたところで、雲黒斎の思考は、右足から襲う灼熱に似た痛みに塗りつぶされた。
その正体は、床に伏した茨稜剱の、再び輝きを取り戻した両腕。
その右腕から放たれる虫の息の筈の彼からは考えられぬ威力のパンチによってもたらされた痛みであった。
×茨:調子悪そうじゃァァねぇぇぇぇええぇ~~~~~か.........。
△雲黒:く....ッ........!!!
茨稜剱ッッッッッ!!!!!!
生きているだとォォォォォォォォォ~~~~~~ッッッッッ!!!!!!
<寝転がっていた状態で再び輝きを取り戻した茨稜剱の両腕。その腕で雲黒の足を思い切り殴った茨。
雲黒の右足は90度に外側に折れ曲がっている。>
△雲黒:ぎゃっ..........ぎゃばぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~ッ!!!
オレの足がアァァァァァァァ~~~
×茨:お前みてェな素人がよォォ~~~~.......。
いくら“自分は十分に警戒している” “もう目標は起き上がっては来ねェだろう”と考えたとしてもよォ~~~!
“本職”はッ!
常にその上を行くんだよォ~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!
△雲黒:なッ...、何故生きてる!!!何故生きてるッ!!!
その出血量でッ!!!刺し傷も少なくとも6つッ!!!!!
ゴムショットガンは全弾命中ッ!!
オマケに!!!!実弾だって二発...ッ、二発もッッ!!!命中したはずだァァァッ!!!!
×茨:...たった二発。
たった二発の銃弾で...しかも致命傷の箇所には当たってねえことが分かってる...、分かってんのに....、俺に近づくそのお前の...
アマチュア丸出しのトーシロムーブがよォ~~~~~..!!!
お前の!!!!明確な!!!!!!敗因だぜェェェ~~~~~~~!!!!
<ごそごそと茨が服の下から何かを出す>
△雲黒:そ...それはァァァァ~~~~ッ!!!!
×茨:依頼人の大学の近くの河川敷で拾った....
△雲黒:エロ本だとォォォォォォ~~~~~~~ッッッ!!!
×茨:しかも6冊!!!!!
このデジタルの時代によォォォ~~~~...!!!
金欠の俺には有難ぇぜェェ~~~~~!!!
△雲黒:そうか...ッ!!!
消音器で威力も落ちちまった銃弾に...ッ!!!
水や泥を吸ってたっぷり膨らんだあの汚ぇエロ本が六冊も...ッ!!!
腹の銃弾は止まってやがったのか...ッ!!
×茨:オレは犬のションベンがかかってようが....
多少ミミズが住んでようが.....
服の下に入れちゃえる人間だからなァ....。
まさかこんなベタな展開になるとは思ってなかったけどよォ~~~~!!!!!
<茨の両腕が眩いほどに光を放つ>
☆ターラ:『能力を...ッ!!今なら能力をッ!!!
あんな死にかけのフラフラ野郎なんてッッ!!
私達の“穴が有れば何だって良い”の応用で切り殺しちゃえば良いんだよッ!!!!
距離はさっきなんかより断然近い...ッ、精度が甘いこの能力でも十分に殺せるッ!!』
△雲黒:分かってるッッ!!!
△雲黒N:“穴が有れば何だって良い”!!!
茨稜剱の首に出口を設定ッ!!!
<しかし、穴が生まれた瞬間に首を僅かにずらして避ける茨>
×茨:今のオレの視界は....“白く輝いている”...。
真っ白な世界にお前しか居ねェ....。
何が起こってるか分かんねえがよ...。
力が湧いてくる...。
△雲黒:何を訳の分かんねェ事ををををををををををッ!!
×茨:そして...!!
お前の転送の能力!!
この真っ白な世界で!!!唯一見えるお前以外の不確定要素!!!!
“円状の白く輝いていない空間”!!!!
これがお前の産み出す転送する穴だろォォ~....!!!
お前のその“しまった”っつう~~~~~顔を見りゃ分かる....!!
△雲黒:黙れ黙れ黙れッ!!!
お前みてェな...死にかけのドブネズミにッ....!!
“穴が有れば何だって良い”(ブラックホワイト・ホールズ)ッ!!!
連続で設定と解除を繰り替えせェェ~~~~ッ!!!!!
×茨:だからよォ...
オレにはもう見えてんだよォ~~ッ!!!
テメェのチャチな輪投げがなァ~~~ッ!!!
□N:迫る茨稜剱の姿にもはや雲黒の絞り出せるセリフは、聞き苦しく響く恨み言でしか無かった。
△雲黒:お前みたいなブ男にオレの様なイケメンが負けるわけがないんだァァァァ~~~~ッ!!!
×茨:あんま男にこういう事言いたくねぇんだがよォ~~~。
△雲黒:ターラ!ターラァ!!!何とかしろォ!!!!
×茨:もうお前しか 見えねーぜ。
△雲黒:“穴が有れば何だって良い”ッ!!!
×茨:“瞬間輝億”ッ!!!!!!!!!!
□N:茨稜剱の両腕の輝きが頂点に達し。
茨稜剱の現在の体のダメージからは考えられぬ速度で。
常人の繰り出せる速度を遥かに超えた拳が何発も。
雲黒斎の体に叩き込まれた。
×茨:右!!!左!!!!右!!!!左!!!!右!!!もう一発右ィ!!!!
左左左右!!!
───ほんで上ェェェェェ!!!!!
<顔を重点的に殴られ、ボロボロの雲黒>
△雲黒:.............へ、へぇぇぇえええ....?
上ェェェへエェェ?
×茨:下だ気持ち悪ィクソ豚女媚びがァァァァァァァ~~~~~ッッ!!!
△雲黒:もょぺぽぽぽォォッ!!!!!!!!!!
□N:一瞬両者に訪れる沈黙は、茨の強烈な膝蹴りが雲黒の顎を粉砕する形で破られた。
×茨:まだまだまだァァァ!!!!
テメェの鼻っ柱をォォ~~~!!!
90度に曲げて終了だァァァァァ~~~~~ッ!!!!
△雲黒:のりょぱほげこむらがえり~~~~~~~ッッッッ!!!!!
□N:輝く茨の両拳が、雲黒の顔面の中心に吸い込まれ。
雲黒は完全に意識を失った。
×茨:フゥ~~~~~~......。
□N:そして、雲黒の手から吹き飛んだスマートホン。
ビデオモードに設定され、録画されたままのその携帯を足で踏みつぶし。
×茨:....ハァ......。ハァ..........。
ザマーみろ........................。
□N:小さく呟いた。
Φトロイ:やったね、ケンちゃん!カッコ良かったよ。
<唐突に茨の横に現れるトロイ>
×茨:..................え誰
<目を丸くしてきょとんとした表情のトロイ>
Φトロイ:誰って....さっき、ケンちゃんは私の事を思い出してくれたでしょ?
それに、聞こえてたはず。
×茨:何がだよ。
Φトロイ:私、ちゃんと伝えられたよ。ケンちゃん。
...大好き。
×茨:....いや、マジで....誰.....
<ドサッと倒れる茨。>
Φトロイ:け...っ、ケンちゃん!?ケンちゃん!!!
<慌てて駆け寄るトロイ。そしてそれを遠くのビルの屋上から双眼鏡で眺める長身の男。>
Φシズカ:....知っておられたのですか?
□佐野:んん~? イヤ?
ただまあ....あんなに歪んだ人間が支配者にならない訳がないでしょ。
命の危機に追い込まれたら猶更...ね。
Φシズカ:....。
趣味がお悪い。
□佐野:趣味の良い男は退屈だよ?
Φシズカ:...返す言葉もございません。
然し...あの茨稜剱。
象徴種にしては掴み所が無く...、能力に応用が利きすぎている。
□佐野:まあ、間違いないね。
僕もこの目で見るのは二人目だ。
Φシズカ:...原初の英雄達。
□佐野:その通り。
業力の質もさることながら...能力発動時における強化の幅が常軌を逸しているからね。寝転んだ状態で苦し紛れに放った拳が...、成人男性の脚を完全に折るなんて、聞いたことあるかい?
Φシズカ:...危険ですね。
□佐野:危険なんてもんじゃない。
幾億にも束ねられた薄い鉄が重なったような業力。
其れを自分の肉体に影響を及ぼさず撃ち出すんだ、言ってみれば歩く小型超電磁砲みたいなもんさ、ありゃ。
唯一の救いは、発動条件の難易度が高い事...かな。
Φシズカ:.......地面に茨稜剱が伏した時...一発、苦し紛れの拳が雲黒に当たった瞬間、
□佐野:腕が再び輝きだした。
そして二発目の拳で雲黒の脚が破壊された。
つまり“攻撃対象を一度自分の拳で殴る事で自分に規格外の肉体強化が行われる”。
支配者同士の戦いで相手においそれと触れる事はなかなか難しいからね。
Φシズカ:ですが...その条件さえクリアされれば...。
□佐野:...彼の情報が少ない以上断言はできないが...ほぼ無敵だろうね。
Φシズカ:...急ぎ本部に連絡を。
□佐野:まあまあ。そう急ぐことも無い。
ああいう風に倒れていることから回復能力はないみたいだ。
本体のダメージが瞬時に回復したりするんだったら話は別だけど...ま、病院で彼が目を覚まし次第、話す事になるだろうしね。
Φシズカ:は。承知致しました。
<夜空を見上げる佐野>
□佐野:良い夜だ...今夜はドビュッシーで行こう。
Φシズカ:『月の光』ですか?
□佐野:こんな月を見せられてしまったらね。
...さ、帰ろう。家で僕のヴァイオリンが待っている。
<そう言って二人は消える>




