茨のベーゼ 1話
異能力バトルですがバトルするのは次の話からです
世界観をしっかり堪能したいのであれば是非やって欲しいですがドンパチは次の話からです
大事な事なので二かいいいました
☆N♂:
×茨♂:
△稜剱の父親(龍慈)♂/施設の職員♂/教師♂/アメリカ大統領♂/パネル上のアナウンサー/アナウンサー♂/モブ生徒♂️
□茨の母親♀/施設の職員♀️/三井♀/男子A♀/幼い稜剱♀:
Θ カナ♀/モブ生徒♀/モブBAIXE♀/エスバ♀
♂3:♀2
【単語の読み方】
BAIXE
Bring Another Impulse Xeno Existance(ブリング アナザーインパルス ゼノ イグジスタンス)
然し(しかし)
切断傷
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☆N:2003年。地球を宇宙からのあらゆる有害な放射線から守るオゾン層。
そのオゾン層が弱まっている、と。ある研究施設から論文が提出された。
世間は、最初はその論文に目も留めなかった。
環境破壊、経済の低迷、先行きの見えぬ未来.... 人々は危機に慣れ過ぎた。
そして時は少し過ぎ、2008年。
日本列島における全域での紫外線の平均値の異常上昇。
盾を失った地球は、あまりにあっけない程に宇宙からのあらゆる放射線を地上へと迎え入れた。
結果、各国の健康被害の声は何倍にも膨れ上がる事になる。
そして更に時は過ぎ、2014年。”半透明の人間を、どこからともなく呼び出す人間が現れた”との声が、全世界の全くランダムな地域、全くランダムな年齢層から寄せられた。
”全く通常の人間が、まるで携帯で呼び出すかのように、軽く目配せをするだけで。半透明の妙な衣装の人間がその通常な人間の真横に現れる。”...だとか。
□男子A:ん~~っとね....。こうやるんだよ。ほらッ!!!
ΘモブBAIXE :こっ,,,こら、かけるくん!ボクたちの関係は秘密だろぉ~っ!
□男子A:えへへ~。ごめんごめん。でもだって、テレビきょくのカメラもあるでしょ、それに大人の人も!..だから僕、嬉しくなっちゃって...
ΘモブBAIXE:もお~~...っ!....でも、かけるくんが喜んでくれてるし...っ。
☆N:”幽霊を呼び出せる謎のエスパー少年を追う!”
この世間のうわさを聞き付けたテレビ局によるインタビュー番組。
その番組内の少年と年若き”半透明の”少女の甘酸っぱい会話は、更に世間に火をつけた。
☆N:そして僅か三ヶ月後。アメリカ大統領による直前まで無告知の異例の記者会見が開かれた。
△アメリカ大統領:皆さんの混乱、そして不安。この二つを我々は把握しており、既にチームを発足させ、対策を進めています。
具体的には..全世界で同時多発的に確認されている”GHOST”(ゴースト)を呼び出せる...、いえ。”発現”させられる人間の存在への対策です。
我々は議論を重ね、このゴーストを...
Bring Another Impulse Xeno Existance
これらの単語の頭文字を繋げて...
BAIXEと呼称します。
我々アメリカ合衆国の研究によると、人間の強い感情に呼応する何かから生まれた、人間に酷似した物体であると判明しております。
基本的に有害なものでは無く、コミュニケーションは発現させた人間の使用する言語で行えます。
結論として....
彼等BAIXEと人類との共存において、我々がすべきなのは“危惧”では無く。
“相互理解”であります。
アメリカ国民の皆さん、もしご自宅でBAIXEの発現が確認されましたら、慌てずに政府に直通のこのホットラインまで.........
☆N:然し、人類は強かであった。
未知の知的存在。
過去から多く議論されてきたそれが現れたというのに、人類はそれを飲み込んだ。
あれほど世界を騒がせたBAIXEによる騒動は、
BAIXEが発現すれば政府に連絡し、個人情報を登録。
あとは“万一の事態”に備え月に一度の検査をするのみ。
BAIXEという存在は人類に驚くほど早く、そしてスムーズに浸透していった。
☆N:時は進み、2023年。
BAIXEの存在が人間社会に完全に受け入れられ、法整備や警察によるBAIXEへの対策が徹底された日本。
その中の東京都のとある町。
そして、駅から徒歩12分の小さな汚いビル。
1階と2階のテナントを通り過ぎ、更に階段を上った先にある3階の茨探偵事務所。
其処には.....20代くらいだろうか。
片眉には縦に一本ラインが入っており、眼鏡の奥には鋭い眼が覗いている。
極めつけには右耳のたぶには揺れるピアス。
とても探偵には見えない風貌の男。
×茨:おかしい.........絶対におかしい!
今月の.........ッ....我が茨探偵事務所の家賃が払えねェ!!!!
めちゃくちゃ働いてんのにッッッッ!!!!!
N:そんな男の慟哭に、男の横に立っている女性。
男と同年代だろうか。
美しい腰までの長い黒髪をたたえた彼女は、整った表情を歪め、男を見下すようにしている。
Θカナ:....はぁ。
×茨:今朝の時点で現金が1000円しかねえ.....
Θカナ:....はぁ。
×茨:んで今は880円...
Θカナ:ジュース飲んでんじゃないですよハゲ!
×茨:ハゲてねえわ!!!!
Θカナ:....ッ!!でっ、でも!実際ジュースは買っているじゃないですか!
ほら!なんですかその変な甘いメロンのジュース!
×茨:ぐ、ぐぬぬ
Θカナ:大体何でこんなに金欠なのか分かっているんですか!?
貴方が浮気調査やストーカー調査っていうこの茨探偵事務所のメインのお仕事を!
毎回毎回最後に犯人と取っ組み合いの喧嘩で締めくくっているからですよ!
医療費でマイナスになっちゃっているんです!
×茨:ぬ、ぬぬぐ
Θカナ:し・か・も!!!!!
貴方の医療費でマイナスなんですよ!
どうして喧嘩を吹っ掛ける貴方も毎度ダメージおってるんですか!!!
勝率高くないのに喧嘩吹っ掛ける人なんか見たことないですよ!
黙って標的にコソコソついていくのが尾行!!!
聴こえます!?私達がやるのは!!!び!!!こ!!!!う!!
×茨:依頼は来てっから良いだろうが!!!
それにちゃんとだな、標的の決定的瞬間の写真を取ってからぶん殴ってるし(割り込まれる)
Θカナ:ぶ!!ん!!な!!ぐ!!!る!!!な!!!と言ってるんですよ!
おまけにこのうちの事務所の最近のレビュー!
読み上げてください!
×茨:えーとなになに....
『浮気調査はして頂けましたが、浮気していた元旦那は前歯が折られてしまいました。』
星...2。
『ストーカーで困っていましたが、此処の事務所の探偵の方にストーカーを特定してもらいました。
しかし、頼んだのは特定をしてもらうだけで、あとは警察に突き出そうと思っていたのに、まさか全治五か月の大怪我を負わせてしまうとは思いませんでした。』
星....1。
カナ:何か、言いたい事は。
×茨:いや~、俺ってホント元気な男の子ですよ。
Θカナ:出産の瞬間か!
ホント、よく半年も持ってますよね!
ペット探しや“乱暴な依頼”がなかったらとっくにこのビルも追い出されてるんですからね!
とにかく、もう限界です。正社員になれたのはイイですけど、なんで私が経理やら!!
給料計算!!!
メールや電話の応対までやらなきゃいけないんですか!!!
もうパンク寸前なんです!!!!
しっかりと!地に足を付けた探偵業を!!!営んで!!!!従業員を!!!!増やしてください!!!!
あと!!!!!!!今月の!!!!!!!!!!給料!!!!!!!!!!!!!!!!!
×茨:へいへいうるせいな。
オレはあれなの。スロースタートなの。
こっから俺はロケットスタートになんの。
Θカナ:もうスタート切っちゃってるんですよ!
スタート切った後にロケットスタートって意味わかんないでしょ!
っていうか給料にロケットもスローも無いですから!
毎月必ず渡されるものですから!!!!
×茨:ガミガミガミガミガミ.....っせ~な。
依頼してくる奴らも浮気やらストーカーやらオレに証拠持ってきてもらって解決してんだろうが!!いちいち気にすんなっつうの。
ほれ、給料。
(ぱさ、と机に投げ捨てられる茶封筒)
Θカナ:(茶封筒をばっと手に取って中身を確認して)...確かに。
...それに、良いのか悪いのか...まあ悪いんでしょうけど....最近は茨さんの喧嘩癖を知って、標的が徹底的に痛い目に遭うのを明らかに見越した依頼も増えてきてますからね。
×茨:んじゃいいじゃぁねえか。
商売繁盛はいい事だろがい。
Θカナ:電気・ガス代や水道代は遅れがちなんです!
こないだだって止められましたし!
ギリギリですよ、ギリギリ!!!
今月も請求!どうするんですか!
×茨:うっせーーー!!!
オレがバリバリやって稼いでくっから黙ってろい!!!!
Θカナ:この際お金が入れば悪評でも何でもいいですけど!
...命あっての物種なんです。
.......ちょっとは、考えてください。
×茨:..........んじゃ、新規の依頼の打ち合わせ行ってくるわ。
電気代の請求に業者が来たら、オレは居ないって伝えといてくれな。
Θカナ:えっ、ちょっ....!!
....行っちゃった。
ホント自分勝手なんだもんな...。
....心配させないでくださいよ。貴方には、BAIXEなんてものは居ないんだから。
<携帯を出してメールを確認しながら打ち合わせ場所に向かう茨>
×茨N:今度の依頼は....ッと、ストーカー被害か。
フン、“証拠さえ提出していただけるなら犯人への対応については関与いたしません”...か。
ボコってもらえる....ッて分かってて依頼してるクチだな、依頼者も。
自分の手は汚さず、「ボコってくれ」とは言えないもんだから...オレんとこに来る。
.....探偵の仕事じゃねェぜ。
<場面転換 回想>
☆N:茨稜剱の過去には、友人も家族もいなかった。
いや、正確には小学校の時は家族がいた。
が、中学校、高校と天涯孤独で過ごした彼の過去は、成程確かに灰色と評するに値するものであった。
だが、なにもドラマチックな何かが起きて孤独になったわけではない。
△稜剱の父親(龍慈):綺麗だよ....綺麗だよ、エスバ。
エスバ:やだ...恥ずかしいよ...。
☆N:稜剱の父のBAIXEの発現と同時に、父親は家族に費やしてきた時間を全て自らのBAIXEに費やした。
その愚行に、稜剱の母の心が壊れるのに時間はさほど必要では無かった。
そして幼い稜剱も部屋で半透明の見知らぬ女に猫なで声で話しかけ、夜中BAIXEとの行為に耽る自分の父を眺めながら、自分が母を癒してあげたい、と強く思っていた。
幼い稜剱:....お母さん。
☆N:だから、母の病んだ心が暴力となって自分に吹き出す事も、何も苦しくはなかった。
自分の体に紫の痕が残る事は、何よりの勲章だった。
茨の母親:ううううううう.......ごめんね、稜剱.....。
お母さん、お母さんはもうどうしていいか分からなくて、それで、それで....
□幼い稜剱::大丈夫だよ、お母さん。
僕がお母さんのお父さんになってあげる。
僕は全然痛くないよ。
☆N:───そして、夏休み明け。
母に殴られた鼻が折れ、折れた鼻の部分が大きく腫れ上がったまま小学校に登校した時。
その日の昼には、自分を連れた教師と見知らぬ大人たちとで、学校を早退した。
そこからは覚えていない。
子供ながらにショックだったのであろうが、それよりも。粛々と、淡々と行われていく事務手続き。
最後に記憶にあるのは、まるでつまらない宿題を解くように書類に何かを書いていく父と母。
□幼い稜剱:....なに、してるんだろ。
気付けば、自分は見知らぬ中年女性ににこやかに微笑まれながら「ここがあなたの家よ」と言われていた。
□幼い稜剱:そっか。僕は...捨てられたんだ。
☆N:悲しくはなかった。ただただ、捨てられたという事実が、妙に胸にすとんと落ちた。
父は人間ではない何かに執着し、母はいつも悲しそうに自分を殴った。
そんな二人が、自分をどう思えば傍に置くのだろう。
そして。
そんな二人が下す選択は、社会は当然想定していたのだ。
あぶれた子供を塵取り(ちりとり)で集め、施設で育てる程度のシステムは、構築されていたのだろう。
□幼い稜剱:父さんと母さんは、制度を利用しただけ。
僕が憎くて捨てたんじゃない。
☆N:だから、何も悲しくはなかった。
ただ、施設の人間にバレない様に持ち込んだキーホルダー。
□幼い稜剱:....きれい...。
☆N:母にわがままを言って連れて行ってもらったプラネタリウムで買ってもらったそれ。
1回いくらだったか、くじで当てた太陽の絵の描かれたそれを見る度。
□幼い稜剱:うっ...ふぐっ.....ひっく....
☆N:喉の奥が、ピンと張り詰めているような感触に襲われた。
□幼い稜剱:うえええええええん......
☆N:“悲しい”と、誰にも言えなかった。
△教師:茨-。
ったく...茨!
欠席扱いにするぞ!茨稜剱!
×茨:....はい、すみません。
△モブ生徒♂:アイツ、やべ~よな.. なんか、ボーッとしてるしよ。
モブ生徒♀:バカ、茨の家って超複雑なんだから!可哀そうでしょ!
茨N:...クソが。
☆N:中学校では、この調子であった。
全てにおいて意志薄弱。
好奇心など沸かなかった。何にも集中できなかった。
毎月やってくるカウンセラーにも、何も話せなかった。
きっと自分の人生は、死人の心電図のように動かないのであろうと思っていた。
△パネル上のアナウンサー♂:続いてのニュースです。
BAIXEによって生活や精神が不安定になった都民が、発現したBAIXEと共に社会復帰訓練を行う更生施設、「よぞらの家」が襲撃される事件が起きました。
N:帰路のビルに微かに残った記憶が、嫌な感触で蠢く。
×茨N:よぞらの家、って...。
△パネル上のアナウンサー♂:なお、襲撃した人間にはBAIXEは発現しておらず、支配者ではない模様です。
犯人はペイン・グインレッド42歳。
「BAIXEによって落ちた人類を税金で保護をするなど馬鹿らしい」と供述しており....
×茨N:そこは、オレの親父が入ってる....。
△パネル上のアナウンサー♂:被害者は....
☆N:周囲の喧騒は水中に自分が飛び込んだかのように深く、重たく遠くから聞こえた。
そしてニュースのアナウンサーの読み上げる被害者の名前だけが、嫌に鮮明に聞こえた。
<場面転換 1週間後>
×茨:ああ、はい。大丈夫です。
はい、そっちの方でやってもらって。
すみません、お願いします。
☆N:彼の父親、茨龍慈は意識不明の重体だったが、刺された箇所が悪かったらしく二日後に息を引き取った。
その間、自分は一度も顔を見に行こうとも思わなかったし、悲しくもなんともなかった。
×茨:あー...そっすね、家電製品はもう新しくするんで、捨てちゃっていいですよ。
段ボールに名前書いとくんで、それだけ運んでもらえたら。
☆N:父の火葬が済み、その後の手続きの電話をしている時ですら、「これが天罰か」としか思わなかった。
□施設の職員♀:可哀そうに、お父様がねぇ....。でも、お父様のBAIXEの娘も、ずっと傍に居て...。息絶える瞬間まで寄り添って....。健気よねぇ。..何が本物の愛なんでしょ。とんでもない時代になってしまったわね...。
施設の職員♂:最期の言葉もBAIXEの名前をうわごとの様に呟いていたそうじゃないか。
子供や妻の事も、忘れてしまったのかもしれないな..。茨くんのサポート、僕達でもっと力を入れなくては。
☆N:施設の職員が自分に聞こえていないと思ってする噂話が耳に入ってきても、何とも思わなかった。
「そうだろうな」と思った。
──そして、その日の夜。
夕食後のテレビから飛び込んできた速報のニュースに、茨稜剱の心は二つの強烈な経験をする。
△アナウンサー(パネル上のアナウンサー)♂:速報です。先週の「よぞらの家」襲撃事件ですが、襲撃した ペイン・グインレッド被告が刑務所内で自殺しました。
本人は刑務作業中に突然重作業機に自ら身を投げ、即死した模様です。
そして、獄中には手紙が置かれており、手紙の内容は今までの記憶がすっぽり抜け落ちている、何故ここに居るか分からない...何かに操られているようだと書かれたものであり、警察当局は”増加の一途を辿っている支配者による凶悪犯罪とみて捜査を進める予定だ。支配者による冤罪対策、犯罪対策は日々更新されてはいるものの、後手に回ってしまうのが現状。一刻も早くこの現状を....
×茨:........は?
☆N:やっと出たのは、間抜けに響く声だった。
×茨:....なん............。
☆N:“なんでだよ”。そう口にするより先に、稜剱は倒れた。
□施設の職員♀:くっ、茨くん!?!?!?大丈夫!?!?!
☆N:無理もなかった。
茨稜剱がその年齢で受け止めるには、余りに酷な現実。
支配者。2019年ごろからBAIXEの発現した人間の中に現れる、BAIXEと融合し特殊能力を使用することの出来る人間。
見た目は大なり小なり普通の人間と異なり、金属的な質感の肌。またツノや翼を持ったデザインの人間であったり、爬虫類のような姿であったり、あるいは服の様相が変わる程度であったり、ただBAIXEが小道具に姿を変えるだけであったりと、個人の差によるものが大きい。
しかし、彼らは等しく。そしてすべからく特殊な能力を持っていた。
曰く、発火能力。
曰く、透視能力。
曰く、念力能力。
支配者としてBAIXEと適合した人間の把握、分析、検査、および法整備は至難を極め、結果支配者による凶悪犯罪の件数は爆発的に増加していた。
この支配者による冤罪事件により社会は大きく支配者への恐怖、忌避感を露にし、警察は“対支配者鎮圧行動班”を設置する事になった。
そして、翌日。
□施設の職員♀:あら茨くん。おはよう。今日から高校ね。....その、気を落とさずに、新生活を楽しむのよ。
×茨:気遣いありがとうございます。...あ、あとおはようございます。もうメシ食ったんで、皿洗っときました!
んじゃ、行ってきます!
□施設の職員♀:....まあ。どういう風の吹きまわしかしら。
☆N:深い深い絶望の中で、茨稜剱は自分なりに道を見つけた。
×茨:........そっか。オレが....。
オレがやればいいんだ...。
☆N:それは余りに稚拙で、然し余りに強い確固たる意志で作り出した道。
彼は目から涙を溢れさせながら、然し口元には笑みを携えて入学式への道を走った。
×茨:この町の犯罪者.....そして支配者の犯罪者も....全員生まれてきたことを後悔するくらい...!!
ボッッッッッッコボコにしてやる......!!
そしてこの日本の支配者共を怯えさせてやる......!!!!
お前たちは何の特権を持っているわけじゃない...!!!取るに足らない存在だってことをオレが教えてやる.....!!!!
調子に乗りやがって.....!!
くっく.......。あーーーッはッはッはッはァアアァ!!!!!!!!
☆N:その日の空は、春にしては。
悍ましいほど晴れていた。
───そして、それから三年後。
青春と人間関係を犠牲に、体を鍛え資金を貯めた茨稜剱は探偵事務所を設立した。
そして現座。設立から半年、街の中の支配者、非支配者を問わず民事の事件を専門に活動。
小さくではあるが地元の広報誌に紹介されたこともあり、依頼の数だけを見れば順調な滑り出しであった。
<場面転換 現在。依頼人との待ち合わせ場所のカフェ。>
×茨:...事務所のレビュー、マジで賛否両論だな....いや、賛が4....いや3....2割....くらい....か。
クソッ!!!標的がボコられてようがなんだろうが解決してもらってっから良いだろうが!!
面と向かってオレに文句は言わねえどころか、スッキリした顔してやがった癖にッ!
急に自分は関係ないです、みてえなツラで聖人気取りやがって!
.....レビュー削除の要請...と。
□三井:あの。
×茨:んお?
...あぁ、連絡くださった。
□三井:はい。
その...、現場での解決がとても有名、ときいて。
×茨:そうっすね。法的なアレで争いたいとかそういうのはむしろお断りです。
ちょっと荒っぽくても確実で素早い解決がウリなんで。
□三井:あの...、その。
分かりました、とっても心強いです...。
ではその、早速詳しい依頼の内容を
×茨:あ~すんませんね、ちょい待ってくださいよ。
えー...実は最近ウチ、料金改定が有りまして。
いやほら、ウチのレビュー、見てきてくれてるんでしょ?
”証拠さえ提出していただけるなら犯人への対応については関与いたしません"....ってわざわざ書いてくれてますし。
ま、つまり荒っぽい手段を取る可能性が高い訳ですが。
最近ケガが多くてね。事務所のバイトの子に医療費がどうだとか言われるんで...
誓約書に一筆もらえます?
□三井:ッ...、わ、分かりました!
医療費も私が負担しますので...!
×茨:いや~助かりますわ。
それで、用件は?
□三井:あの...、メールでも言ったんですけど、ストーカーが居るっぽくて....
×茨:ふんふん。
んで、大体何時くらいに現れるかとか、服装とか聞いていいですか?
覚えてる範囲でいいので。
□三井:えと...私大学で吹奏楽をやっているんですが。
コンクールが近くて最近は帰宅が遅いので...夜の20時くらいに駅前から歩いて帰るんですが、その時に...。
×茨:あ~。20時だと、駅前から離れるともうすっかり暗いですもんね。
□三井:ここのところ毎日なんです....ッ!
私、もう本当にしんどくて、辛くて....!
×茨:...ふむ。
ま、分かりました。とりあえず今日から一週間、三井さんの事を尾行してみますよ。変な奴が居れば分かるでしょう。
合図も欲しいな....、変な奴がいたら、はい。これ。
□三井:なんですか...、これ?
×茨:イオン電池の単音発信機です。これを押すとオレのインカムに音が鳴ります。
これを服の袖に付けてください。
そう...あ、針あるんで気を付けて。そう....はい、準備オッケーですね。
すぐ来てほしいときは、これを短く三回押してください。
□三井:あ...はい。分かりました。助かります。
×茨:んじゃ、長話もあんまりよくないんで、このへんで。
今後の連絡はLIMEで取りましょう。これ、IDです。
<IDの書かれた紙を手渡し、席から立ち上がる茨>
□三井:それじゃ...、よ...、宜しくお願いします..。
×茨:ええ、んじゃ今日から。
<場面転換 大学に向かった三井についていき
大学の校門近くでぶらぶらと歩きながら事務所のカナに電話をする茨>
×茨:おう。おう。おう。そう。
やっぱ夜の尾行は付きもんだからな。しゃあねえだろ。
何?ガス業者がオレの帰りを待つって?
...............。
オレ死んだって伝えてくんね?
わかったわかったわかった!!!デカい声出すなよ!
必ず払うから1週間まてっつっといてくれ!んじゃあな!
ったくよ....
どれ、暇つぶしに近くの河川敷でエロ本でも探すか。