一流パーティーで盾役をやっていたが、迷宮に置き去りにされた(至れり尽くせりで)
毒にも薬にもならないお話を一つ。
「うわ~っ! もうだめだ~っ!」
そんな情けない叫び声を ―― 思いっきり棒読みで ―― あげながら、ゴブリンの群れを右へ左へ一刀で切り捨てていく奴の姿を、俺は聊か冷めた目で眺めていた。
「だ、大丈夫か~!? 今たすけるぞ~!」
で、俺の横を、またしても棒読みの叫び声を上げながら駆け抜けていく女が一人。
先に戦闘を始めてた奴と同じく、手にした槍でゴブリンどもをバッタバッタとなぎ倒していく。
っていうか、『たすけるぞ~』って言っておきながら、てんで違う場所に陣取ってんじゃね~よ。
ここは、俺達のパーティーが拠点にしている街からほど近いところにある迷宮。
通称『始まりの迷宮』全十層の第三層である。
俺も駆け出し冒険者の頃は世話になった迷宮ではあるが、今となってはソロで十層踏破も可能だし、それがパーティーならその辺の森にピクニックに行くのと大して変わらない。
なんていうか、今日は皆、朝からちょっとおかしかったんだよなぁ……。
俺達のパーティー『幸運の止まり木』は、元々戦士の俺と、幼馴染で魔法使いのランセリアの二人で始めたパーティーだった。
故郷の村から一緒に街に出てきて、冒険者登録をして二人でパーティーを組んで、細々と冒険者家業をしていた時、同じく駆け出し冒険者でソロだった戦士のヴァレミーと僧侶のベレニーズをギルドから紹介された。
お試しで何度かパーティーを組んで依頼を受けていたが、やたらと気が合い、いつの間にか正式にパーティー加入となっていた。
その後、とある護衛依頼で一緒になった戦士のアルメリー、シーフのアルノエルと意気投合し、依頼完了後の打ち上げで勧誘したところ、二つ返事での加入となり、今の六人パーティーが出来上がった。
それからは六人で色々な冒険をした。
駆け出し卒業と言われる『始まりの迷宮』を踏破したのを皮切りに、時に危険な討伐依頼をこなし、時に困難な採取依頼を達成し、着実に実績を積んだ。
今ではこの街一番の冒険者パーティーと呼ばれ、王都の一流冒険者達にも引けを取らないと噂されている。
そんな俺達だから、今更『始まりの迷宮』になんて用は無いはずなんだが……。
「今日はどうしても『始まりの迷宮』に行きたいの!」
いつもの宿屋で朝飯を食いながら、開口一番ランセリアがそうの宣い、俺を除く他の四人にも揃って頷かれてしまっては俺に拒否権は無い。数の暴力と言うやつである。
っていうか、最近皆してなんかコソコソやってる気がしてたんだよなぁ……。
問いただしてもあからさまに話を逸らされたりしてたし。
で、勝手知ったるなんとやら、罠もギミックも知り尽くしたここで、知ってる筈のシュートにヴァレミーが率先して引っかかった結果、落ちてきた先がこのモンスターハウスである。
「俺はどんな茶番を見せられているんだろうな……」
思わず呟いた俺の視線の先で、ヴァレミーとアルメリーが鼻歌を歌いながらゴブリンを倒している。
数は多いとはいえ所詮はゴブリンである。ぶっちゃけ、時間はかかるが俺一人でも殲滅は余裕だろう。
で、俺の後ろではランセリア達後衛組が欠伸をかみ殺してそれを眺めている。
まぁね、ゴブリン相手なら君達もそうなるよね。
「よし、こんなもんか」
「そうね、これくらいで十分でしょう」
立ち尽くした俺が、何度かの溜息をついた頃、ヴァレミーとアルメリーが急に戦闘の手を止めてこちらへ駆け寄ってくる。
「も、もう無理だ~」
「こうなったら、逃げるしかないわ~」
っておい、お前ら今の今まで鼻歌混じりだったじゃね~か。
「バルナール! お前盾役なんだから、俺達が逃げ切るまでここでモンスターを引き付けておけよ! あ、これ傷薬のポーションと、念の為に緊急用スリッパな」
そう言いながら俺の腰袋にガラス瓶と赤いスリッパを押し込むアルノエル。
「【攻撃上昇】! 【防御強化】! 【回避上昇】! 【弱体抵抗】! えっと……【継続回復】! あとは……あ! 【攻性防壁(火)】! いい? バルナール! 貴方はPTの盾なんだから私達が逃げ切るまでなるべくゆっくり帰って来てね? あ、でも絶対に無理しちゃ駄目だよ!?」
ボス部屋に突入する直前の如く俺に強化魔法を重ね掛けするランセリア。
「【水精霊召喚】! 【風精霊召喚】! 貴女達はバルナールが無茶しない様に見張っておく事! 無茶しそうだったら尻をひっぱたいて撤収させなさい。いいですね?」
呼び出した精霊に人差し指を立てながら言い含めるベレニーズ。彼女の前には、手のひらに乗りそうな小さな人影が、敬礼を返しながら浮かんでいた。
ちなみに、バルナールと言うのは俺の名前である。
「「「「「じゃ、後はよろしく!」」」」」
そう言うと、五人は俺に背を向けて全力で走り出す。
いや、そんなに慌てなくてもこの数のゴブリン程度なら俺一人でも殲滅は余裕だし、なんなら帰還魔法を使えば全員揃って迷宮の外まで一瞬なんだけどなぁ……。
あ~、俺をここに残す為に、わざわざ徒歩で移動してんのか?
「なんだったんだ……」
皆を見送りながら、思わず呟く俺の肩を、水精霊と風精霊が左右から『まぁまぁ』といった風に叩く。
ちなみに、こうして立ち尽くしている間にもゴブリン達は俺に向かって攻撃を仕掛けている。
が、そもそも俺の装備ではゴブリンの攻撃なんて痛くも痒くもないし、なんならランセリアのかけた【攻性防壁(火)】のせいで殴り掛かったそばから勝手に火達磨になっているまである。
「はぁ……。まぁ、取り敢えずコイツら片付けてから考えるか」
本日幾度目かになる溜息を吐いて独り言ちる。
振り返って見れば、幾分数を減らしたとはいえ大量のゴブリン。危険は無いに等しいが、数が数だけに、それなりに時間はかかりそうだ。
「えっと……取り敢えず、なんだ……。アイツらを追いかけたかったら、俺を倒してからにしろ!」
半ば自棄になりながらそれっぽい言葉を叫んでみる。が、ゴブリン共に背を向けたままで言っても今一つ決まらない。
隣では水精霊と風精霊が大喜びで拍手をしながら声援を送っているようだが、恥ずかしいので止めて欲しい。
威勢の良い事を言ってみたものの、剣を抜く事も無くその場に座り込む。
ランセリアの魔法のおかげでダメージを受ける事も無し、『ゆっくり戻ってこい』との事なので、ここでのんびりさせて貰おう。病み上がりだし。
腰袋から水筒と、携帯用の焼き菓子の入った袋絵を取り出す。
小さく砕いてから精霊に差し出すと、嬉しそうに受け取り、大きな口を開けて噛り付いては満面の笑みを浮かべている。
精霊が食事をするのかと不思議に思いベレニーズに聞いたところ、栄養補給の為に食事を取る必要は無いが、味覚は存在しているので嗜好品として嗜む精霊は結構居るとの事だった。
部屋の入り口を塞ぐように座り込んでいるので、ゴブリン共の攻撃を背で受ける事になるが、そこには背負っていた盾が有る。
盾に殴りかかっては勝手に火達磨になっていくので、カンカンと響く音が多少煩わしいが、放っておいて精霊とのお茶会を楽しむ事にした。
「なぁ、お前達は何か知ってるのか?」
じゃれついてくる精霊を適当にあしらいながら、ふと尋ねてみる。
俺の言葉に、二人の精霊委はピタリと動きを止めて、顔を見合わせた後に水精霊は口を押えてブンブンと首を横に振り、風精霊は明後日の方を向いて口笛を吹く真似をして、と、それぞれの反応を返す。
成程、知ってはいるがベレニーズに口止めされてるってとこか。
まぁ、戻ったら全員とっ捕まえて問い詰めれば良いしな。
そう思い直し、じゃれついてくる精霊達との束の間のお茶会を楽しむ事にする。
§
ぺちぺちと頬を叩かれる感触で意識が浮上する。
どうやら座り込んだまま眠ってしまっていたようだ。
頭を振って視線を巡らせれば、俺の頬を叩いていたと思しき水精霊が、腰に手を当てて怒ったような仕草をしている。
風精霊はと言えば、俺の膝の上でだらしない寝顔を晒していた。
いつの間にか静かになった背後を振り返って見れば、ゴブリン共は揃って消し炭となっており、部屋の中には肉の焦げる香ばしい匂いが充満していた。
「悪ぃ、いつの間にか寝入っちまったな」
ツンツンしている水精霊をツンツンしてやると、途端に機嫌を直して俺の指にじゃれついてくる。
「よっこいせっと」
一声上げて立ち上がった拍子に、膝で眠りこけていた風精霊がひっくり返って床に落ちそうになる。
すんでのところで目を覚まし、慌てて飛び上がった風精霊が諸手を挙げて遺憾の意を示すが、こちらもツンツンしてやるだけで途端に機嫌を直す。チョロいモンである。、
「そんじゃ帰るとしますか」
二人の精霊にそう声をかけると、揃って嬉しそうな表情を浮かべブンブンと、今度は大きく首を縦に振る。
そうして、俺を急かす様に、風精霊は俺の袖をつかんで引っ張り、水精霊は後ろに回って背中を押す。
「なんだかなぁ……」
ゆっくり帰って来いと言われたり、帰りを急かされてみたり、なんだか釈然としない気持ちのまま、俺達は『始まりの迷宮』を後にするのだった。
§
「いよう、今日は一人か? 珍しいな」
建物の中を見渡している俺に、顔見知りの冒険者が声をかけてくる。
街へ戻ってきた俺は、取り敢えず冒険者ギルドに顔を出す事にする。
もしかしたら皆が待っているかかもしれないと思ったのだからなのだが、残念ながら皆の姿はここには無かった。
「いや、なんか迷宮の中で置き去りにされてさ、皆こっちに戻って来てるんじゃないかと思って顔を出しててみたんだが、こっちには居ないみたいだな」
「なん……だと?」
俺の言葉に、男の顔色が変わる。
まぁ、普通に考えたらパーティーの仲間を置き去りにして逃げだすなんて行為は大問題である。
メンバー全員ギルドから処分を受けて冒険者の資格剥奪とか、下手をしたら騎士団に引き渡されて犯罪奴隷行きなんて事態にもなりかねない行為だ。
「いや、それがさ。置き去りにされたのは『始まりの迷宮』の二層なんだよな」
「は?」
「しかも、回復薬やらスリッパやら渡されて、強化魔法を山ほどかけられて、おまけにコイツらの護衛付きだ」
そう言いながら、俺の周りを飛び回っている精霊達を指差す。
「なんだそりゃ、訳わかんね~な」
俺の言葉にドヤ顔を晒している精霊達を眺めながら、男が首を傾げる。
「だろ? 俺も訳わかんなくて困ってんだよ。まぁ、とりあえずここには居ないようだから、宿の方を探してみるわ」
そう言い残して踵を返し、建物の出口へ向かう。
「おう、なんか面白そうな話だったら今度聞かせろよ」
そう言う男の言葉を背に受けて、後ろ手に手を振りながら
§
「おや、あんたがランセリアちゃんと一緒じゃないなんて珍しいねぇ」
宿に向かう道すがら、今度は顔見知りの屋台のおばちゃんに声をかけられる。
「まぁ、俺達だって別に四六時中引っ付いてるわけじゃないからさ」
おばちゃんの声に無難な言葉で返すと、おばちゃんがお可笑しそうにケラケラと笑う。
「そうかい? こないだランセリアちゃんは『トイレ以外は一緒』って言ってたよ?」
「なっ!?」
おばちゃんからもたらされた意外な情報に顔を覆って天を仰ぐ。
ランセリアの奴め、そんな事を喋ってるのか。後で説教だな。
「あぁ、そう言えば……」
一頻り笑って満足したのか、おばちゃんが何かを思い出すかのように顎に指をあてる。
「さっき、ランセリアちゃんがあんたのパーティーの色男と楽しそうにならんで歩いてるのを見かけたよ。あの娘はあんたにベッタリだったから、見間違えかと思ったんだけど、あんあたが一人で歩いている所を見ると、やっぱりランセリアちゃんだったのかねぇ……」
ランセリアに限ってまさかとは思うが、少しばかり気になる情報ではある。
「あんた、あんな良い子に愛想付かされるような事をするんじゃないよ?」
おばちゃんの大きなお世話を聞き流しながら、宿へ向かう俺の足は、心なしかいつもより早歩きになっていた。
§
俺達の定宿に辿り着き、カウンターの前を通り過ぎようとした時、奥から顔を出してきたおかみさんと目が合う。
「あ……」
俺の姿を見たおかみさんが、驚いたように目を見開き、次いで気まずそうに眼を逸らす。
「おかみさん?」
いつも明朗闊達なおかみさんのその様子に違和感を覚えるが、歩みを止める事無くカウンターの前を通り過ぎる。
「あ……バル君……その……」
俺を引き留めたがっているような、そんなおかみさんの声を背で受けながら。
§
「ふぅ……」
なんだかやたらと気疲れしたような気がするが、ようやく俺とランセリアが寝泊まりしている部屋へと辿り着く。
とりあえず中を確認しようと扉に手をかけたところで、中から物音が敷いている事に気付いた。
耳を澄ませて中を窺うと、ギシギシとベッドが軋むような音に混ざって男女の声が聞こえて来る。
「やっ……駄目……動かないで……」
「そうは言っても、俺ももう限界なんだ。バルナールが帰ってくるまでに早く済ませちまおうぜ」
この声は……ランセリアとヴァレミー……か?
は? 何? ナニをヤってんの?
一瞬頭に血が上りかけるうが、その事に気付いた瞬間、一気に頭と気持ちが冷めていく。
「はぁ……」
これって、やっぱりそういう事、なんだろうな……。
皆のおかしかった理由ってのはこれなんだろうか?
皆が結託してるって事は、知らなかったのは俺だけで、他の連中はこの関係を認めてるって事なんだろうなぁ……。
「ほら早く、さっき教えたろ?」
「ま、待って……男の人の上に乗るなんて初めてだから……」
嘘吐けよ、お前一昨日の夜は俺の上に跨って散々搾り取ってたじゃねーか。
あれか? ヴァレミーの好みに合わせて猫でも被ってんのか?
何が悪かったのかなぁ、ランセリアとは昔から一緒で、これからもずっと一緒に居られると思ってたんだけどなぁ……。
こんなことなら、いっそ難関迷宮の最下層に身包み剥がされて置き去りにされた方が良かったよ。
彼女のこんな姿は知りたくなかったなぁ……。
「お、バルナールじゃねーか。お早いお帰りだな」
ドアの前で動けないでいる俺に、横から声がかかる。
声の主に目を向ければ、そこには大きな荷物を抱えてニヤニヤしながら俺を見ているアルノエルと、同じく大きな荷物を抱えて『しまった』と言った風な表情のアルメリーが立っていた。
「お前ら……」
立ち尽くす俺の様子が余程面白いのか、笑いを引っ込める事も無くアルノエルが俺に近付いてくると、荷物を片手に持ち替え、肩を組んでくる。
「もう少し時間がかかると思ってたんだがなぁ。まぁ、帰って来ちまったもんは仕方ねぇ。アルメリー、扉を開けてやってくれよ」
肩を組んだまま首を巡らせ、気まずそうに佇んでいるアルメリーに声をかける。
「で、でも……」
「良いんだって、ここまで来たら誤魔化しようも無いだろ? ほら、とっとと開けて中を見せてやれよ」
「う、うん……」
少しの逡巡、アルメリーがノブに手をかけて扉を開く。
止めてくれ、これ以上俺を絶望させないでくれ……。
「おーい、主役様のお出ましだぜ~!」
そんなアルノエルの声と共に、開け放たれた扉の中へ体ごと押し込まれる。
「えっ!?」
ランセリアの間の抜けたような声にと共に俺の眼に飛び込んできたのは……。
ベッドの上に四つん這いになっているヴァレミーと、その背中に立って天井近くの壁に手を伸ばしているランセリアの姿だった。
「は? えっ? バル君!? なんで!? まだ早い ―― きゃぁっ!?」
焦ったような声を上げて慌てるランセリアが、ヴァレミーの背から転げ落ちそうにな ――
「あ、あぶな「ふんっ!」ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!」
転げ落ちそうになっていたランセリアだったが、ヴァレミーの背中を力強く踏みつけると華麗にバク宙を決めて、何事も無かったかのように床へと降り立つ。
裾の長いローブが一瞬だけ翻るが、パーティーの最前線で盾役を担う俺の眼は誤魔化されない。黒だった。
ところで、踏みつけられたヴァレミーが呻き声を上げているが大丈夫だろうか? さっき結構凄い音が聞こえたような気がしたが。
「あ、バル君、あのね? あっ! 見ちゃ駄目ぇっ!」
「うおっ! あぶなっ!」
俺の視線が壁の方を向いている事に気付いたランセリアが、慌てて俺に駆け寄る。
っていうか、『見ちゃ駄目』と言いながら目隠しじゃなくて目潰しを仕掛けてくる奴は初めてだわ。
改めてランセリアが居た壁の方見ると、そこには片側だけ止められた横断幕がぶら下がっており、そこには
『お誕生日おめでとう』という文字が、ランセリアの綺麗な筆跡で書かれていた。
「バル君! これは違うの! バル君のお誕生日会の準備をしていたんじゃなくて……そ、そう! ヴァレミー君と浮気してたの!」
「ランセリア! 逆! 逆!」
頭テンパってるのか、ランセリアが俺の肩を揺さぶりながら支離滅裂な事を言い始める。
最初から部屋の中にいたらしいベレニーズが、ベッドの上でのたうち回っているヴァレミーに治癒魔法をかけながら、慌てて突っ込みを入れている。
「リア、取り敢えず落ち着いて深呼吸するんだ」
「う、うん! ひっひっふ~! ひっひっふ~!」
違う、そうじゃない。
アルノエルはそんな光景が面白いのか、指をさしてゲラゲラと大声で笑い、アルメリーは額に手を当てて溜息を吐いている。
なんていうか……カオスだ……。
§
「で、結局何がどうなってる訳?」
暫くして、アルノエル達が抱えていた荷物から中身を取り出し終わった頃、漸くランセリアが落ち着きを取り戻し、今は六人で料理が所狭しと並べられたテーブルを囲んでいる。
「えっと、あのね? 前からいつも助けてもらってるバルナールにお礼がしたいなって思ってたんだけど、何をしたら喜んでくれるかなって考えてて……」
ランセリアが、胸の前で指先を合わせながら顔を赤くして語る。
「で、俺達が相談を受けて、丁度バルナールの誕生日が近いから、こっそり準備して驚かせてやろうぜって話になったって訳だ」
ヴァレミーがその後を受けて種明かしをする。
まぁ、言ってしまえばただそれだけの事だった。
「なんと言うか、それだけの事に随分と大袈裟と言うかなんと言うか……」
大事な事なので二回言いましいた。
「まぁ、言ってしまえばそうなんだけど、私達も考えてる間に悪乗りしてきちゃってねぇ」
グラスを配りながらベレニーズが苦笑いする。
「まぁ、事情はわかったよ。その……なんだ、有難う?」
なんとなく疑問形になってしまったのは仕方のない事だと思うので、大目に見て頂きたい。
「その……色々誤解させちゃったみたいで、ごめんね?」
ランセリアが俺の袖を引っ張りながら、少しだけしょんぼりして謝罪するので、その頭に優しく手をのせる。
「いや、事情はわかったし、俺の為に色々準備してくれたんだろ? 有難うな? すげぇ嬉しいよ」
見れば、例の横断幕の他にも部屋の中には可愛らしい飾り付けがしてあり、彼女たちが一生懸命準備してくれていたのが伺える。
「ただまぁ、こうやって祝ってくれるだけでも十分嬉しいから、驚かせようとか考えてくれなくていいからな?」
「うん! えへへ」
髪を撫でられて、ランセリアの顔に笑顔が戻る。
「それじゃ、乾杯しましょうか」
各自のグラスに酒を注ぎ終えたアルメリーが明るく声を上げる。
「え~それでは」
ランセリアがグラスを掲げて音頭を取れば、皆もそれに倣う。
そして、
「「「「「我らが頼もしき盾、バルナールの誕生日に!」」」」」
「我が親愛なる友に」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
グラスを合わせる軽やかな音が響く。
全くもって、俺は最高のパーティーに恵まれているようだ。
§
「はい、バル君。誕生日のプレゼントだよ」
宴も酣となり、皆の酔いも良い感じに回って来た頃、隣に座っていたランセリアが小さな包みを差し出す。
「開けて良いか?」
受け取って見れば、包みは軽く、小物か何かが入っているようだった。
「勿論!」
満面の笑みで『早く開けろ』と催促してくるランセリアに従ってリボンを解いてみれば、中から出て来たのは古びたお守りだった。
「それね、持ってるだけでオートヒールの効果が有って、毒と麻痺、クリティカルにエナドレを無効化したうえに、転移魔法と全体回復の効果もあるお守りなんだよ?」
なにそれ凄い。
「こんな凄い物どこで手に入れたんだ?」
「バル君がコ〇ナで部屋に籠ってる間に、皆で王都の近くの迷宮に行って取って来たの!」
ランセリアのドヤ顔が可愛い。
で、王都の近くの迷宮って言うと、某訓練場の事か……。
「態々あんなところまで取りに行ってくれたのかぁ……これだけの物となると、かなり下層まで行ってくれたんだろ?」
「大した事無かったよ? キーアイテム持ってる人をちょっとおど……お願いしたらあっという間に最下層だったし」
おい、今なんて言いかけた。
まぁ、いいけどさ。
お守りの細い鎖の金具を外し、ランセリアの首にまわして金具を留める。
「バル君?」
自分の胸元に揺れるお守りを見て、ランセリアが不思議そうに首を傾げる。
「その辺の効果は今の装備でも賄えるからさ、俺の一番大事な宝物に着けておこうと思って」
我ながら臭い台詞だと言ってから気付き、照れ臭くささから、顔を逸らして鼻を掻く。
グイっと引き寄せられる感覚の後、頬に柔らかな感触。
「じゃぁ、誕生日のプレゼントに私をあげる。大事にしてね」
耳元に彼女の甘い声。
その肩を抱き寄せて、その頬に口付けを返す。
「勿論」
くすぐったそうに笑う彼女と、俺達を冷やかす様に囃し立てる仲間達。
宴はまだまだ終わらない。
なお、この後滅茶苦茶ハッピーバースデーした(された)。
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■名前:バルナール
種族:人間
性別:男
年齢:26
性格:善 → 悪
職業:戦士 → 君主
レベル:72
装備
#エクスカリバー
ベイキン〇ブレード
#まもりのたて
#てっかめん
#せいなるよろい
#マンティスグローブ
#まなつのマント
冒険者パーティー『幸運の止まり木』のリーダーにして盾役。
メンバーの中では比較的常識人。
諸般の事情により【灰】になった経験が有るが、ランセリアの愛の力(主にカ〇ルト的な意味で)により復活している。
ランセリアが好き。
■ランセリア
種族:人間
性別:女
年齢:24
性格:善 → 悪
職業:魔法使い → 司祭
レベル:85
装備
#ホーリーバッシャー
#かわのかぶと
#ぐれんのローブ
#かわのこて
ワー〇ナの魔除け ← New!
バルナールの居るところに彼女在り。
おばちゃんの言っていた『トイレ以外は一緒』とは、誇張はあっても虚構では無い。
お淑やかな女性を目指しているらしく、主人公の事を『バルナール』と呼ぶが、
慌てたり酔っぱらったりすると昔の『バル君』呼びが顔を出す。
バルナールが好き。
■ヴァレミー
種族:人間
性別:男
年齢:25
性格:中立
職業:戦士 → 侍
レベル:80
装備
#むらまさ
どうじぎり
#そでよろい
#つきのわかぶと
#あかいとおどし
#ミスリルのくさりごて
#ほおあて
ギルドの紹介でパーティーに加入。
座右の銘は『敵・即・斬』
バルナール達の性格が変わったのは大体コイツのせい。
ベレニーズが好き。
■ベレニーズ
種族:人間
性別:女
年齢:26
性格:善 → 悪
職業:僧侶 → 司祭
レベル:84
装備
#ホーリーバッシャー
#かわのかぶと
#ぐれんのローブ
#かわのこて
#マ〇マンのしょ
ギルドの紹介でパーティーに加入。
パーティー内では一番の常識人にして苦労人。
両系統の魔法を扱う他、オリジナルの召喚魔法で精霊を呼び出す事が出来る。
ヴァレミーが好き。
■アルノエル
種族:人間
性別:男
年齢:28
性格:中立
職業:シーフ → レインジャー
レベル:82
装備
#もりのせいのゆみ
#かたあて
#てんいのかぶと
#えいゆうのよろい
#てぶくろ
#ダイヤのゆびわ
一緒に依頼を受けたのが縁でパーティー加入。
アルメリーとはそれ以前からの付き合い。
酒場の常連からは喧嘩っ早いと思われているが、
喧嘩の原因は大体が仲間の悪口を言われたから。
アルメリーが好き。
■アルメリー
種族:人間
性別:女
年齢:26
性格:中立
職業:戦士 → バルキリー
レベル:81
装備
#せいなるやり
#まもりのたて
#てっかめん
#めがみのむねあて
#ミルダールのこて
#ダイヤのゆびわ
一緒に依頼を受けたのが縁でパーティー加入。
アルノエルとはそれ以前からの付き合い。
本人はアルノエルのブレーキ役を自称しているが、大抵の場合はアクセル。
アルノエルとお揃いの指輪がお気に入り。
アルノエルが好き。ツンの成功しない自称ツンデレ。
どこかでみたような設定が散見されますが、ただの悪ノリです。
怒られたら消します。
冒険者が寝るのは馬小屋だるぅお!?
と思われた方とは美味い酒が飲めると思います。




