・第一話(前編)
-桜の花びら舞う季節…母が失踪した-
〜藍と做〜
その日、熱をだし早退した。
ふらふらになりながらも、何とか家に着く。
玄関を開け、『ただいま』。
そう言ったが、言葉が帰ってくることはなかった。
(今日母は休みなはず。買い物にでも行ってるのかな?)
そう思いながら、リビングに向かう。
扉を開け、左側にあるキッチンに行き、昼に食べれなかったお弁当を冷蔵庫にいれる。振り返り、リビングがある方を見る。すると、机の上に茶封筒と手紙のようなものが置いてあるのが見えた。近くに行き見る。その茶封筒は分厚く、持ってみるとかなりの重量だ。そして、下にある手紙を見る。そこには、ただ一言。
『ごめんね。』
そう母の字で書かれていた。
僕は、なにかのドッキリか?と思い、辺りを見渡す。だが何も無い。いつものリビングだった。
状況が理解できなかったが、ふと茶封筒の存在を思い出す。
「そういえば、これ結構重いけど、何が入っているんだ?」
恐る恐る、中を見るとお札が束ではいっており、見ただけで数百万はあると思った。
手紙といい、札束といい、何が起きてるのか分からなかった。ふと顔をあげた時、時計が見えた。
時刻は昼の十二時を少し過ぎていた。我に返り、急いでカバンから携帯を取りだした。そのまま、双子である姉に電話をかける。少したった後に、応答があった。良かった。とりあえず今あったことを話そうと思った。だが…
「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」
と言われた。かける所を間違えた?と思い、番号を確認する。番号は間違っていなかった。
「熱のせいで聞き間違えたのかな?。」
そうに違いない。なので僕は、もう一度掛け直してみることに。そして、少しのコールの後…
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
再び言われた為、さらに困惑した。あ、もしかして携帯の電源を切ってるのではないか。そうだ。きっとそうだ。なので、直接言いに行くことにした。玄関に向かうため一歩踏みだす。だがその時既に限界を迎えていた。視界がぼやけ、足がもつれてしまい床に倒れてしまった。
行かなきゃと思っていたが、僕の意志とは反対に、意識は闇に落ちていった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
未熟者ですが、これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m