プロローグ 「勇者」の栄光は悪夢の始まり
最初は暗いスタートにはなりますが、お楽しみ頂ければ幸いです。
この話の主人公は、あくまでも「魔王」の方です。
カッコいい生き様を魅せたいと思いますので、これから頑張って書きたいと思います。
「勇者エレーナよ! よくぞ『大魔王ティタノゾーア』を討ち倒してくれた! よって其方に『名誉アムタルキア王国国民』の称号を与える!!」
「アムタルキア王国」国王:ジアルガ=タルキア3世によって、エレーナはレリーフを与えられた。
エレーナは一言、「ありがたく」と受け取ると、国王を囲んでいる人間から歓声が上がった。
だが無論、彼女一人で倒したわけではない。
仲間がいたはずなのだ。
本来ならここには。
戦士の「ウォレス」、魔法使いで、エレーナの幼馴染兼親友だった「リオーラ」、僧侶の「フラン」……本来ならこの3人も一緒にいたはずなのだが、どういうわけかここに居ない。
何故、居ないのか。
答えは一つ、戦死したのだ。
大魔王との戦いによって。
それも、一瞬にして、だ。
しかもこの戴冠式は大魔王を封印した翌日の出来事。
エレーナは内心で喜べなかったし、笑顔を一切見せることはなかった。
薄暗い金髪に碧眼、そして恵まれた肢体のボン、キュッ、ボン。
それが彼女の身体的特徴だ。
エレーナは、王に一礼し、王宮を立ち去ったあと、人知れずに泣いた。
仲間の死を偲んで、また、仲間を守れなかった自分の弱さを憎んで。
だが、彼女の物語は、これで終わりではなかった。
ここから彼女の地獄のような日常が襲いかかることとなるのだった。
まるで、醒めぬ悪夢のように。
一方その頃、過去にエレーナ達が倒した「ある魔王」が今、復活しようとしていたのだった。
それも配下だろうか、幾人もの魔物たちに囲まれて。
「ド……ドレム様が……!! お目覚めになったぞーーーーーー!!!」
漆黒の左腕に、ツンとした黒い髪、まるで人間のような姿をした、この男の名は「ドレム」。
大魔王ティタノゾーアの「7人の魔王」のうちの一人で、「悪夢」を司る魔王だった。
過去、アルタルキアの潮風が吹く辺境の村「アータイル」を支配していた魔王だ。
その行いは悪辣非道、人間に対して悪夢を見せては、人間の自我を奪おうとしていたのだから外道もいいところだ。
彼が目覚めたのは、魔族達が暮らし、本来ドレムが治めている地でもある、『オーレリア大陸』「マーレイン国」。
その城の一部屋で目覚めたのだ。
「……ああ……すまない、な。皆。」
ドレムはまだ27歳と魔族としては非常に若く、7魔王最年少。
しかし、知性が非常に高く、周囲がよく見えているので領民からの信頼は厚く、ティタノゾーアからも信頼を得ていた男だった。
種族はというと、「シャドーデビル」だ。
4番目のボスを任されただけあり、エレーナ率いる勇者一行を、「状態異常攻撃」と「闇魔法」で苦しめたものだ、実力も確かだ。
そんなドレムが目覚めて、部下達が大喜びしている。
特に彼の妹「ムーユ」は泣いて歓喜している。
ドレムは自分が何故、目覚めたのかを推測していた。
「……ティタノゾーア様が……倒されたのだな??」
ドレムは自分が目覚めた、つまり、他の7魔王も復活しているということが瞬時に把握できた。
ムーユが険しくなった顔で頷く。
「そのよう……ですね、兄上……ティタノゾーア様が、勇者一行によって、討たれたとのことです。」
「そうか……」
ドレムは一つため息を吐いた。
(じゃあ……目覚めても魔界を治めるってだけか……でもそれだけだとつまんねえし……ん? 待てよ……? そういえば……俺は……俺は……!!)
突然、ガバッと起き上がったドレム。
そして、ムーユにこう告げた。
「すまんな……ムーユ……俺は人間界に行く。だから……俺が戻るまで、マーレインを頼む。」
ドレムはベッドから猛然と抜け出して、走り出した。
ムーユや部下達の静止を振り切って、マーレインを飛び出した。
(やり残していたことがあった……!! 俺は……俺は、一目惚れしたあの女勇者に………告白するッッッ……!!!)
不純な想いを抱えて人間世界に入り込んだドレム。
ドレムの目的はただ一つ。
女勇者:エレーナに会う、ただそれだけだ。
そしてドレムとエレーナの二人の歯車が、この後「運命の赤い糸」となって絡み合っていくことになるのだが、それはまだ、誰の知る由でもない。
いかがでしたでしょうか。
まだ物語は開始しきっていませんが、序盤はエレーナの苦しむ姿、それを支え引っ張るドレムの図になると思います。
エレーナがどう立ち直っていくか、ドレムはエレーナと結ばれるのか、毎週月曜日はこの作品をよろしくお願いします。
あと今日は登場人物紹介と第一話を投稿します。
お楽しみに。