第13話 ムーユとエレーナ
今回から新章です。
なんか一章のラストが思いの外ハマらなかったのが地味に後悔してる。
激動の展開になるという感じですんで、そんな感じでお願いします。
2人は翌日、魔界「オーレリア大陸」に続く道へと来ていた。
ドレム曰く、「裏世界」に繋がっているとのことらしい。
ドレムは何やら呪文を唱え、裏世界「オーレリア大陸」に繋がる道を開いたのだった。
「暗いわね、ここ……」
オーレリア大陸へと移動したエレーナは、あまりの空の暗さに苦い顔になった。
バンテルでも最低限の光は差し込んでいるが、オーレリアはその光すら差し込んでいない。
差している光は街灯だけだ。
「魔界はそんなところだぞ。まあ今日は俺の妹を紹介してやる。……ってわけでついて来い。」
「ええ。」
ドレムは慣れているのか淡々としていた。
寧ろドレムにとっては人間界の方が眩しかったりする。
2人はマーレインにあるドレムの家へと歩き出していった。
「お帰りなさいませ、ドレム様。」
玄関の門に着き、門番に迎えられた。
「いーよ、グレリア。とりあえず客人がいるから案内してやってくれ。」
「……しかし、勇者ですぞ? 宜しいのですか?」
流石に魔界でもエレーナの名は広まっているようだ。
ただし、オーレリアでは「悪名」という意味ではあったが。
「いいんだよ、それはもう水に流せ。俺が良いって言ってんだから。」
「ドレム様の仰せのままに……」
グレリアと呼ばれた門番は、エレーナを玄関のドアの前へ案内した。
ドレムはエレーナを王の間へ案内した。
そこにはムーユがいた。
「あら、兄上。随分と早いお帰りで。」
「おう、すまんかったな、ムーユ。……それで、異常はねえか?」
「ええ、こちらでは何とも。……ですが……その『人間』の女性のお方は?」
「ああ。エレーナだ。」
ドレムは軽口を叩く感覚でそう言ったのだが、王の間にいるシャドーサタン達はザワっとした。
ドレムはしまったな、と思ったが、異常事態なのだからそれもそうだ。
何故魔界に人間が、それも「勇者」がいるのか、と。
ムーユも例外ではなく、訝しげな顔になった。
「……彼女が……勇者……」
「まあまあ、そんな怖い顔すんなって、ムーユ。……何だったら俺の『婚約者』だからな。」
「何でだよ!!」
ドヤ顔でそう言ったドレムに対し、横にいたエレーナは左手でドレムの頭を引っ叩いて否定する。
「あれ、違ったか? エレーナ。」
「『従者にはなってくれ』とは言ったけど、『婚約して』とは言ってないでしょうが、一言も!!」
この2人のやりとりに王の間のシャドーサタン達からは笑いが起こる。
主の仇がまさか主と仲が良好だというのが微笑ましく感じたからだ。
「……とはいえムーユには話しておきてえことがあるからな。……おい、お前ら。」
「ハッ。」
ドレムはムーユにスタンバイしていた侍女に命令する。
「エレーナを宿泊の間に案内してやってくれ。ここは俺とムーユと2人きりで話しておきてえ。だから全員出ろ、外に。」
シャドーサタン達はエレーナを宿泊の間へと連れて行った。
2人きりになり、ドレムはムーユに、事の顛末を話した。
「実はな……俺はエレーナと協力してティタノゾーア様を倒そうと思ってる。」
「!?」
ムーユは寝耳に水のことを耳にし、驚愕の表情を浮かべた。
まさか尊敬している兄がそんなことを口走るとは思えなかったからだ。
「……お気は確かですか? 兄上。」
「……実際俺は諸国を回ってきたからな。そこで見てきたのは……ティタノゾーア様の支配に対して辟易している声がな。あのお方は下地民のことを何も考えてねえ。俺は……それを無くしてそれぞれの地を統治できるような大陸にしてえんだ。」
「しかし……」
「だから他の魔王どもを説得しなきゃいけねえ。俺はまず……『独裁』のファスティアの元に赴くつもりだ。」
「……それはどういう意図で?」
「俺から見ればファスティアが一番まともだ。ファスティアは頑固な奴だが合理的な奴だ。手順よく説明すればアイツの山は動く。そうすりゃ他の魔王も動くぜ。」
「ですが……応じるでしょうか。ただでさえ彼の直属の方たちでしたし……私と兄上に至ってはティタノゾーア様は恩人ですし……」
「……昔のことは関係ねえ。俺の目的は魔界の平和だけじゃねえ。人間界と魔界の和解だ。それにはティタノゾーア様は障害になる。だから消すんだ。」
ムーユは目を閉じ、顰めた顔になる。
どうやらドレムの意思は相当に固いと見たのだろう、ムーユもこの船に乗り込むことを覚悟した。
「かしこまりました。その旨をエレーナにも伝えてきます。」
「……ああ。」
ムーユは王の間を出て、エレーナがいる宿泊の間へと向かっていった。
「エレーナ、兄上から伝言です。」
宿泊の間に入ったムーユは、エレーナにドレムの伝言を告げる。
「ファスティア殿に明日お会いするとのことでした。その準備をするように、と。」
「場所は?」
「『ナチョス』です。ここから東南です。」
「了解。」
エレーナも了承したようだった。
「……ところで、エレーナ……貴女は兄上のことをどう、お思いで?」
「……ぶっきらぼうな奴だけど、悪い奴じゃないわよ。要領いいし、文句言わないで私の予定に付き合ってくれるし。」
「そうですか……恋愛感情のほどは?」
「えー……?? ど、どうかなー……??? それは分かんないや……」
エレーナの目が泳いでいる。
あまり言いたくないのだろうか。
「……兄上のことが好きなのですか?」
「え!? そ、そんなわけないじゃん!!」
「……図星ですか?」
「どー……だろ……」
エレーナの顔は赤くなっている。
「……私は兄上が選んだ女性なら……どのような方でも構いませんよ?」
「ちょちょちょ、ちょい待って、ムーユ。まだ付き合ってるわけじゃないから。アイツが勝手に言ってるだけだし。」
「……面白いお方ですね。婚姻式、楽しみにしてますよ?」
「だから何でそうなるのよ!! アンタら兄妹は!!!」
いつの間にか仲良くなったエレーナとムーユであった。
そして翌日、ドレムとエレーナは、ファスティアが治める「ナチョス」へと足を運んでいったのだった。
次回終了後、登場人物紹介欄を更新します。
魔界編は奥が深くなるので、是非是非お楽しみいただきたい。




