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第12話 タイムカプセル

この回は過去編。

 遡ること6年前。


エレーナが王城住み込みになって間もない頃、ある少女と出会った。


丁度エレーナが木刀を振っている頃、偶然通りかかった赤い髪の少女に、だ。


「あれ!? 貴女が噂の勇者様!?」


おてんばな声でそうエレーナに声を掛けたのは高名な貴族の家の末の娘、リオーラ。


炎魔法の天才と言われ、皆に愛されている存在だった。


「……邪魔。今訓練中だから。」


エレーナは素っ気ない声で突き放した。


エレーナは王城に来てから誰にも心を開いていない。


環境が急激に変わったというのはあるが、監視が多い中でやっと自由な時間を取れたのだ。


実際エレーナは一人でいた時の方が気は楽だった。


そんな中で急にリオーラに声を掛けられたのだ、そうも言いたくなる。


「えー?? つれないなあ。じゃ、私お水持ってくるから。」


「……」


リオーラは井戸へ向かって駆け出していった。


一方のエレーナは黙々と剣を振り続けていった。




 訓練後、ベンチにはリオーラがいた。


「はい、お水。」


「……どーも。」


エレーナは汗を拭きながら水を一飲みした。


「私はリオーラ。将来魔法使いを目指して勉強中なんだ。」


「……ふーん……」


「なんでそんな素っ気ないのさ、さっきから。ねえ、勇者様がなんで?」


「逆になんで……リオーラは私に声掛けるの?」


「そりゃあ格が高いからよ、私より。私、貴族の娘だもん。そりゃあ勇者様、って聞いたら格が上よ。」


「……やっぱり貴族の、なんだ……」


エレーナはボソッと呟いた。


煌びやかな雰囲気が苦手だったエレーナは貴族から向けられる好奇の目を毛嫌いしていた。


リオーラもそうだと知り、何も言わないまま立ち去っていった。


「あ……ちょっと! 勇者様!!」


リオーラが後を追うが、エレーナの足が速くて追いつけない。


「……なんなのアイツ……勇者って民には優しいんじゃないの……?」




 その後リオーラは、エレーナと粘り強く話しかけて行くうちにだんだんエレーナが心を開いて行った。


エレーナも徐々に笑顔が増えていったのがその証左で、リオーラの両親も心優しかったのも手伝って家族ぐるみの付き合いにリオーラとエレーナはなっていったのだった。


そんなある冬の日のことだった。


「ねえ、エレーナ。エレーナの故郷行ってみたいんだけどいいかな?」


「……なんで?」


「だってさー、もっと知りたいんだもん、エレーナのこと。せっかく友達になったのにエレーナ、全然自分のこと話してくれないじゃん。」


「……ヤダ……」


「えーーー!? なんでーー!? いーーーじゃーーーーん! ねーーーー!!!」


「……アンタが行くようなところじゃないから。」


「なんでー!? 逆に楽しみじゃん! ダンジョンみたいでさー!」


「……そこまで言うならいいよ。だけど……行かない方がよかった、って後から言わないでよ。絶対危ないから。」


エレーナはリオーラの押しに負けはしたが、同時に釘を刺した。


「やったー!! じゃ、明日行こう!?」


「……あの町ではそんな能天気な奴が一番命を落とすよ。」


「えー? どういう意味? エレーナ??」


「……『平穏』しか知らない子供と……『平穏』を知らない子供では()()()()()()()。じゃ、お休み。」


エレーナはリオーラの部屋を出て、寝室へと向かっていった。




 翌日。


エレーナはリオーラを連れて、故郷のバンテルへと足を運んだ。


「え……なに、ここ……」


リオーラは絶句した。


信じられないといった顔だった。


大方予想通りではあるのだが。


「……貴族の女の子が来るようなところじゃない。とりあえずフード被って。女の子だってバレたらまずいことになるよ。ロリコンもいるわけだから。」


エレーナはリオーラに黒いフードを手渡す。


リオーラは無言で頷き、指示に従った。


エレーナもフードを目深に被り、町を案内することにしたのだった。




 「……よくこんな環境で生きれたね、エレーナ……」


リオーラは自分だったら生きていけない、というのは肌で、本能で感じ取っていた。


前日の余裕はなんだったのか、というくらいに。


「今思うと本当にそうだと思うよ。……ここは腕っぷしの強いやつと狡賢い奴しか生き残れない。スラムはそんな所だよ。」


エレーナは息を吐き、歩きながら続ける。


「生きるためならなんでもした。喧嘩もしたし、食べ物も盗んだし……ただ生きたくて必死だった。」


「……そっか……ご、ごめんね、あんなこと、初めて会った時に言っちゃって……」


「……路地裏に隠れて生活してた。小さくて親もいない子供が生きるにはそうするしかなかった。今はリオーラの家に泊めて貰えてるだけありがたいと思うよ。……リオーラ、こんな私だけど……怖いと思う?」


「……怖いよそりゃ……でも……同時にスッキリしたかも。エレーナがなんであんな態度取ってたのかな、って。だから普段のエレーナを知ってるから怖くはないよ?」


「……そっか……」


と、エレーナが生活していた路地裏にたどり着いた。




 二人は路地裏に入り、(たむろ)を取って座り込んだ。


「あのさ、エレーナ……私たちが強くなってさ、魔王を倒したら……また戻ってこよ? ここに。」


「うん。いいよ?」


「じゃ、タイムカプセル書こ!! 丁度持ってきてるから!!」


「そうだね。」


二人はタイムカプセルを書き、紙を筒に入れた。


「じゃー、またいつか二人で!!」


「うん。またいつか。」


二人は何事もなかったかのようにバンテルを立ち去っていった。




 「……っていうのがリオーラとの思い出なんだ。」


過去を語り終えたエレーナは、ドレムにそう言った。


「そうか……」


ドレムも納得したような表情を浮かべる。


「確かここに……タイムカプセルが……」


エレーナが木箱をガコッと開け、筒を取り出した。


「ああ、あった。……どんなこと書いてたっけ……もう6年も前だからな……」


エレーナは筒の蓋を開けた。


「あ、これ私のだ。……『リオーラと一緒にまた、遊べますように』……か。懐かしいな、ホントに……」


「……それだけ仲が良かったんだな、お前ら。」


「成り行きで、だけどね。で、リオーラどんなこと書いてたんだろ……」


といい、リオーラの筒を開ける。


「なになに……? 『エレーナが幸せになって、彼氏を見つけてますように』……か……」


これを見終えたエレーナは涙を流していた。


溢れんばかりの大粒が零れ落ちる。


「……そっか……リオーラ……自分よりも私の幸せを願ってたんだ……」


リオーラの文面から伝わる優しさに触れ、エレーナは涙を拭う。


「……ごめん、ドレム。こんな所見せちゃって。もう大丈夫だから。」


「……じゃあ行くか? 魔界へ。」


「………行こう! 絶対にティタノゾーアをぶっ倒してやる!」


「……そうだな。」


決意を固めた二人は、人間世界の裏世界にある「オーレリア大陸」へと向かって行くのだった。

次回から新章です。

ここから登場人物が多くなりますので、登場人物紹介欄も随時更新していきます。

新章「魔王編」、お楽しみに!!

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