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001 第1部プロローグ

初日は1時間ごとに更新!

明日(24日)以降は第1部エピローグまで毎日0時更新!

応援よろしくお願いします!

 高校3年の冬。

 周囲が受験勉強のラストスパートを掛ける中――。


 俺は、自殺しようとしていた。

 高層ビルの屋上で、フェンスを飛び越えようとしている。


 深い理由はない。

 中二病だからか、もしくは中二病が終わって万能感が消えたからか。

 とにかく、客観的に自分を評価した時、どうやっても負け組だと思った。


 俺には特筆するものが何もない。

 顔も、財力も、その他の能力も、全てが普通。平凡。凡の凡。

 この世界において成功者とは最もほど遠い、有象無象の一人。


 唯一の取り柄はオンラインゲームだけ。

 それもeスポーツとして扱われるものではなく、クリックするだけのMMORPG。

 いくつかのゲームを渡り歩き、その全てで最強レベルになった。

 ――だが、こんなものは負け組の典型であり、極めても勝ち組にはなれない。


「そろそろ逝くか」


 あとは助走を付け、ひと思いに柵を跳び越えれば終了だ。


「よし」


 頃合いを見計らって動き出す。

 恐怖で足が竦むと思ったが、そんなことはなかった。


「お、おい、君!」


 警備員の声が聞こえる。

 周囲の客が悲鳴を上げた。


(もう後戻りは出来ねぇ)


 体が宙に舞う。

 天地がひっくり返り、猛スピードで落下していく。

 あと数秒で頭からアスファルトに叩きつけられて俺は死ぬだろう。


 ――と、思った。


 唐突に視界が白くなっていく。

 隅の方から真ん中に向かって白色が侵食していく。

 そして、完全に視界が白く染まった時、意識が途切れた。


 ◇


「なんだ……?」


 気がつくと俺は立っていた。

 何もない純白の空間に。

 本当に何もなくて、どこまでも続きそう。


「何がどうなってんだ!?」


「なんだよこれ!」


 あちこちから喚く声が聞こえる。

 周囲には俺の他にも大量の人がいた。


 本当に多い。

 とても数えきれる規模ではない数。

 数千、いや、数万人規模の可能性がある。


 この場にいるのは日本人だけではなかった。

 韓国人、中国人、ロシア人、あっちにいるのはフランス人ぽい。

 ありとあらゆる国の人間が集まっているように感じた。


「なぁ、これは一体どういうことなんだ?」


 俺は近くにいる男に話しかけた。

 スーツ姿の日本人で、年齢は20代後半から30代前半といったところ。


「知るわけねぇだろ!」


 男は俺に向かって怒鳴った。

 それから両手を頭に当て、純白の空に向かって「あー!」と叫ぶ。


「せっかくデカい案件を取れたのに! なんなんだよ、これはよぉ!」


「案件?」


「そうだ。億単位の案件を取った祝いに彼女とディナーを楽しんでいたんだよ。ついさっきまで。なのに、気がついたらこんな状況だ。ありえないだろ?」


 俺は「はぁ、そうすか」と適当に流す。


(自殺しようとしていたわけではないのか)


 勝手にスーツの男も自殺志願者かと思い込んでいた。

 この男だけでなく、全員がそうなのかと思っていた。


(それにしても……このままだとまずいな)


 凄まじい速度で混乱が拡がっている。

 なにかの拍子に殴り合いへ発展しかねない。

 そんな時だった。


「ようこそ、冒険者よ」


 遥か前方に巨大な爺さんが降臨したのだ。

 文字通り純白の上空からスーッと降りてきた。


 この爺さん、どんな馬鹿が見ても只者ではないと分かる。

 数十メートル級の巨体で、白く光るローブを纏っているのだ。

 見た目こそ人間だが、明らかに人間とは違う未知の存在。


「これから君達には異世界に行って〈冒険者〉として活動してもらう」


 俺達の混乱をよそに、爺さんは説明を始めた。


 ◇


「――以上だ」


 爺さんの長々とした説明が終了した。

 簡単にまとめると、以下のようなことを言っていた。


 1.爺さんの正体は神様

 2.この場にいる10万人の群衆はランダムで選ばれた

 3.俺達はこれから〈冒険者〉として異世界で活動する

 4.異世界には冒険者以外の人間こと〈現地人〉がいる

 5.異世界でどのように過ごすかは各人の自由

 6.〈天使の塔〉なる塔の最上階を攻略すると地球に帰れる

 7.この塔は攻略すると強い装備が手に入る為、帰る気のない者も挑むべき


 爺さんの説明を受けた俺は「いいじゃん」と喜んでいた。

 異世界とか意味不明だけど、新たな世界に行けるのは胸が躍る。

 少し頑張ってみて飽きたら死ねばいい。自殺はお手の物だ。


 だが、大半の人間は動揺し、怒っている様子だった。

 特にデカい案件を取ったという営業マンの男は喚き散らしている。

 この1時間足らずの間に500回は「ふざけんなよ」と言っていた。


「冒険者に栄光あれ!」


 渋い声と共に両手を広げる神様。

 次の瞬間、周囲の景色が純白ではなくなり、異世界生活が始まった。


お読みくださりありがとうございます。


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