1話「ゲーム開始」
俺はゲームが好きだ。
色々な作品が好きだ、シュミレーションもアクションもstgもアドベンチャーもボードゲームもTCGも良く出来たヤツは面白い。
でも、一つだけ、絶対にやりたくないジャンルのゲームがある。
デスゲームだ。
そう思っていた。
―――――
ある日のことである。
唐突なことだが、目が覚めた時俺は知らない部屋で寝っ転がってた。
夢。夢か?明晰夢はよく見るし、そうなのかもしれない。
立って部屋を確認する、壁も天井も灰色で不気味だ。うん。
大きさは歩きまわるには広いが走り回るには狭いくらい、学校の教室くらいだと思う。
ホラーゲームや脱出ゲームの舞台になれそうである。
そして一番大事なコトであるが、周りには人がいる、ざっと数えて9人か8人か7人。
彼らがいると部屋の全てを見渡す事が出来ないな。
そんな彼らは一同、同じ方向を向いている。
何故だ?
突然すぎて、現実感が無くただ無感情に俺は彼らにならってそっちを見た。
一人だけ、変な奴がいたのだ。
それは、俺含めた周囲の人間とは違う、コスプレイヤーのようなファッションの女性だった。
ウサギのツケ耳してるし、黒がメインの変な服装。へそは出しているし、胸元はハート型、開いているし、ブルマだし、太い脚にブーツだし、あと髪を緑に染めている。
相当な美人で、体型も豊満だからか案外似合っているけれど。
彼女はにこにこしていて細い目をしていた、糸目に近いが薄っすらと開いていた。
宇宙のように黒い瞳が。
俺を。
見る。
心臓を掴まれた気がした。
悪夢でも、見ているのだろうか?
ひどく不安になる。
「皆さま、起きましたね?私はゲームの進行を司る兎さんです」
自分を兎さんと名乗る彼女の声は、明るいものなのに、威圧感がある。
「皆様には今からゲームをしてもらいます、運営に対する問い合わせは私を通して行いください」
その物言いとこの状況はまるでデスゲーム漫画だと思った。
そして俺と同じように感じる人がいたらしかった。
殺し合いでもさせるのか?やめろや、と誰かが言った。
「皆様には”アライブゲーム”をしていただきます」
彼女は笑顔のまま、周りを無視して話続ける。
「ルールは単純、終わりまで出来うる限り皆様が生きて生きて生き抜くこと、生きのびた人が勝ちです」
つまり、死んだら負け。やっぱりデスゲームじゃないか。
「しかしただ生きるだけではありません、皆さまの左腕につけられた腕時計をご覧ください」
確かに俺の左腕にはいつの間にかデジタル時計がついていた。
ボタンがいくつかついていて、時間の表示がある、一般的なモノ。
だけど。その無機質さが不気味。
触ってみたら、異常に硬い。ハンマーでも多分壊せない。
嗅いでみたら機械らしい臭いに混じって、微かになんかの臭いがした。
昔、近所の工場から毒ガスが漏れて体調不良者が大量発生した時に似てる。
兎さんは説明を続ける。
「生存者の過半数が“誰かを殺したい”と腕時計のボタンを二つ同時押すると”審判”を行います、皆さまの中でその時一番死んでほしいと思われている者に毒が注入され穏やかに死にます」
やっぱりデスゲームやんけ、とさっき怒ってたヤツが言った。
「いいえ、この審判は一生やらなくてもかまいません、ただあなた方には人を殺す道具が与えられただけです、私としても皆さまが生き残る事は望みですので」
ふざけるな!そんな事やってられるか!と兎耳の彼女の襟へ掴みかかった奴が出る。
臆病そうな男がパニックになったらしい。
けど、いきなりその男の顔が跳ね上がる。
がくがくと、男の膝が震え、倒れた。
そうして、兎さんが脚を高くあげているのを見て。
理解した、俺に目視できない速度で“蹴った”のだと。
蹴りに熟練しているプロのムエタイ選手やカポエイリスタと比べても遜色のないその蹴りっぷりの本気さは彼女はふざけてなどいないとあからさまにしていた。
「そうそう、言ってませんでしたが私のようにゲームの進行を殺したり傷つけたりなされた場合は……」
や、ヤバい。
こういうルール説明で逆らった奴は、だいたい殺される。デスゲーム漫画とかだいたいそうだ。
走って、男と彼女の間に割り込む。いざとなったらかばわないといけない。
「殺すつもりなら、俺を殺せよ」
震える声でも絞り出して伝えたが、彼女は俺の事など無視するように話を続ける。
「……稀にゲーム進行が不可能になる恐れがあります、その場合皆さま確実に死にますのでやめておいたほうが得ですよ」
へらへらした笑顔は一切変わっていなかった。本気っぷりも変わらず。
……ゲームの進行役を殺したら、死ぬ。
脅しとは思えなかった。でも、疑問はもっと色々ある。
なぜ俺達をここに連れてきた、どうやって、なぜ。
声を出したせいか色々な疑問が喉までせり上がる。
でも、落ち着いて、なにから聞くか考えることにした。
「もっとも、私一人を殺したところで何も変わらないですし、ご了承ください」
優しい口調の彼女は、あまりにも魅力的に見えた。
誘拐された人が、誘拐犯と仲良くしようとしてしまうアレか?
たしか、そうすることで少しでも危機から脱する反応だとか妹から聞いたことがある。
それに陥りすぎないよう気を付けよう。
まぁそんなことよりも……一番聞くべきは。
「このアライブゲームは、どうしたら終わりなんだ?」
俺はたずねてみた。おそらく、これが今一番聞くべきことだ。
それがわからなければゲームのやりようがない。
「秘密です、いずれまた、時がくれば私はお話をします」
がっかり。すごくがっかり。
「なんだよそれ」
あ、やべ。つい態度が悪くなった。
「自然と理解できるよう、ゲームは作られていますので、ではゲームスタート」
その言葉と共に、ぼわ、と。
彼女の足元から煙噴き出し、あたり一面を満たす。
そして視界が晴れた時気づけば彼女は、消えていた。
まるで手品。
後に残される、静寂。
そんな中でこの異常な状況にぶち込まれてしまった焦燥が、恐怖が、遅れてやって来た。
ここにあるすべてが現実と、ようやく全身が理解したのだ。
俺は昨日まで、普通に高校に通っていた。
家に帰って来れば、体が弱い妹と話したりする生活だった。
そして趣味のゲームをするんだ。
最近はシュミレーションのやつのレベルをカンストさせるのにハマってた。
なのに。
でもなんだこれ。なんだこれ。なんだこれなんだなんだ。
床も天井も壁もところどころ朽ちた灰色で、周りにはまるで知らない人がいて。
いったいどうして、俺はここにいる。
こんなのおかしい、いつここに連れてこられた?
俺がそんな事される理由無い。
でも、だけど。
ただ一つだけわかってることはある。俺の日常が変貌を遂げていたという事だ。鈍い俺はようやくそれを、実感したんだ。
早めのペースで投稿するの頑張りたいです。