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03

 私の最初の記憶は、日本という国に生まれた「由莉」という名前の女性のものだ。


 割と平凡に生きていたと思う。

 由莉の記憶は大学生、二十歳の頃までで……おそらく交通事故で死んだのだろう。


 その後、この世界で「リリアン・アシャール」という侯爵家の娘として生まれた。

 そして学園に入る直前、十五歳の時に前世の記憶を思い出し、ここがかつて由莉が遊んでいた乙女ゲームの世界だという事に気づいたのだ。


 ゲームは下級貴族の少女が入学した学園でイケメンたちと恋愛を楽しむもので、私が転生したリリアンはヒロインでもライバルでもなく、ヒロインに攻略者の情報やヒントを与える、お助けキャラだった。

 ヒロインではなかったことが少し残念だったけれど、大好きだったゲームの世界だしこの目であの可愛いヒロインとカッコいい攻略対象のスチルが見られる! と張り切った私は、お助けキャラとしての役目を果たし、無事ヒロインと王太子が結ばれる様を側で見届けることができた。


 卒業後は幼馴染の侯爵家嫡男、アルノー・バシュラールと結婚した。

 夫は優しく夫婦仲も良好、二人の子供に恵まれた。

 王太子妃、そして王妃となったヒロイン、ローズモンドとも親友として、そして妃の相談役として交流を続けた。

 幸せな人生だったが、ただ一つ気がかりがあった。

 それは孫娘マリアンヌのことで……彼女は続編のゲームの、いわゆる悪役令嬢だったのだ。


 続編は孫世代が主役で平民がヒロイン。

 マリアンヌは攻略対象の一人、第二王子の婚約者。

 我儘で気位の高い性格で婚約者に嫌われており、ヒロインが彼と結ばれる場合は婚約破棄されてしまう。

 その後のマリアンヌのことはゲームには出てこなかったが……他に嫁ぐ場所もなさそうだし、修道院入りが妥当だろう。


 マリアンヌは幼い頃、ゲーム通りの我儘な子だった。

 だがそれは、忙しい両親があまり構ってやれなかったことによる寂しさから来るものだった。

 だから私はマリアンヌを領地の屋敷に呼び寄せたり、時には夫と共に王都の屋敷に出向き、親代わりに彼女にたっぷりと愛情を注いだ。

 結果、マリアンヌは気の強さはあるものの優しい子に育ってくれた。


 マリアンヌは十二歳の時にゲームの攻略対象である第二王子のフレデリク殿下と婚約した。

 お妃となるための教育が始まり、忙しくなったマリアンヌと会う機会も減ってしまった。

 それでも折々に会うマリアンヌは礼儀正しく、性格も悪くなく……ゲームの悪役令嬢となる未来は回避できると、思っていたのに。


 どうして……こんなことになってしまったのだろう。


「マリアンヌの魂は……どこにいるのかしら」

 身体はこうやって生きているけれど……もしも魂はもういないのだとしたら……。

(私はどうすればいいのかしら)

 思いがけない転生? にただ戸惑うばかりだった。

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