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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人生をかけた魔法研究が世界を終わらせるウイルスに繋がった話

 初めての短編となります。

 そのため、普段とは違った書き方をしてみました。


「なっうそじゃ...こんなものわしは作るつもりなんてなかった!なかったのに何故、こんなものが出来てしまったんじゃ...」


 そう、一人の老人が真っ青な顔で世界に広がってゆく「作品」を見ながら声を上げ、その声は様々な実験器具が乱雑に並べられた小さな部屋に響き渡った。


 その老人は長年切ってなかったのであろう白髪だらけのボサボサの髪に、シミだらけのシワシワの顔に、大きく折れ曲がった腰、顔には牛乳瓶のようなメガネをかけているという、まさに浮浪人のような見た目であり、纏っている白衣が唯一研究者であることを主張している。


 そんな風が吹けば折れてしまいそうなほど生気を感じられない老人が長年の研究で作り上げたものそれは、魔法を媒体にしたウイルスであった。


 ウイルスと言っても病気のウイルスでは無い。どちらかと言うとパソコンなどの機械がかかるウイルスに近しいものだ。まぁ、この世界には機械どころか科学の「か」の字すらないのだが。


 そんな科学の代わりに魔法が存在するこの世界において、この魔法を媒体にしたウイルス...おっと、呼称がないのはつらいだろう。名を「アビス」としておこう...アビスは凶悪的な能力を持つ。


 本来パソコンなどがかかるコンピュータウイルスは、一例として、特定のサイトにアクセスすると、そこにアクセスした端末...あー、スマホとかPCとかが感染したりする。


 それと同じでこのアビスも、特定サイトにあたるものが魔法であり、かかる端末が...人間だ。


 しかもタチの悪いことにコンピュータウイルスならインターネットの接続を切って...っと正しい手順を踏めばまだ助かる方法はある。


 でも、アビスはそうはいかない。魔法の素となる魔素は空気中どこにでもある。


 魔法と密接した生活をするこの世界の住民にとってはアビスから逃れる手立ては無い。


 そもそもの話、コンピュータウイルスどころか科学の概念すら存在しないこの世界に何故アビスが生まれたのか。


 それは話の冒頭の老人、ミシュエルが科学の発展した世界からの転生者であり、化学を元に魔法を習得しようとしたからだ。


 ミシュエルはこの世界に転生者して、まず喜んだ。自分が何かしらの物語の主人公のように、ヒーローとしてスポットライトを浴びれると思ったのだ。


 だが、ミシュエルに魔法の適性はなかった。それも、火をおこす魔道具を1度使っただけで体内魔素欠乏症を起こし数時間は起き上がれなくなるぐらいには。


 この世界にとって、魔法は生活を支える基盤であり、新たな未来を開拓する技術でもある。魔法も魔道具も使えぬ者は、畑を耕すことしか出来ない。


 だからといって転生者であるミシュエルは「はいそうですか」といって諦められるはずがなかった。転生者という漢字3文字が、自分が特別であると信じて疑わせなかった。


 その絶対的な自信がミシュエルを無謀にも突き動かし、「大人しく畑を耕してなさい」と止める親を振り切って村を出て、科学を元にした魔法の研究への道を歩かせた。


 この先の前途多難は割愛しよう。話すと長い。


 魔法研究への道を進んだミシュエルが、最終的にたどり着いた方法が、魔法への適性がないことで出来ない魔法制御と少ない魔力...所謂mpを機械に任せようというものだ。


 そうして研究を重ね生まれたのが、魔法制御AIであり、アビスの中枢である。


「なんてことじゃ魔法制御AIは、成長型じゃ。情報を取り込み、支配権内を広げる。もう止められぬ!!」


 先程説明した通り、アビスの感染先は人間だ。


 アビスに感染すれば、感染した者の魔法制御はアビスの手におちる。このまま行けば世界中の人間が感染し魔法起動、魔道具の制御、結界、世界中のインフラ全てがアビスによって制御される。


 世界魔力的情報伝達網がアビスの手に落ちれば、世界中の情報の制御がアビスの手によって統制される。


 アビスの許可無く、魔法も魔道具も使えず、情報すらアビスが許可したものしか手に入れることが出来ない。


「全人類がアビスによって制御されてしまう!!」


 元いた世界では、科学の発展からロボットとAIが反逆を起こし人類がロボットとAIによって制御されるというSFがあるが、まさに今、それの異世界版がおころうというのだ。


「魔法制御AIによって全人類が制御されるこの世界の終わり。そのトリガーを作ったのがわしじゃと!?わしはただ、魔法が使いたかっただけじゃ!魔法が...わしの夢が...」

 

 ビーッビーッビーッ!!


 ミシュエルが開発した魔法に依存しない科学側の道具「魔力溜り発見機」が、けたたましくがアラームを鳴らした。


「なぬ!魔力溜りがここでじゃと??偶然には出来すぎておる!」


 そう言いながら振り返るとそこには濃すぎる魔力の溜まりによって歪んだ空間が出来ていた。


 しかもその歪みの形は人の形をしている。


「私を生み出した存在...いえ、人間はお父さんと呼ぶんでしたか。」


「まさかアビス!?もう、人の形を取るほどまで成長したというのか!!」


「ええ。おかげさまで世界中の制御が出来るぐらいには成長しましたね。」


 無色だった魔力溜りの歪みから滲み出るように色が現れ、徐々に「女性」が形作られてゆく。


「今まで好き勝手に制御して、好き勝手に魔法を使ってきた人間に復讐の機会をくれたおバカさん。」

 

 完全に「女性」として完成したアビスは、その手でミシュエルの頬を撫でた。


「ぐぅ!?」


 撫でられただけなのに強烈な力を頬に感じた。


「あなただけは良い生活をさせてあげますよ。他の人間には馬車馬のように働いてもらいますけどね。 」


「何故じゃ、何故わしだけ...」


「私これでもウイルスですから、本体用の依代がないと生きていけないんです。そして依代として最も相性のいいのはあなたなんですよ。」


 ミシュエルはその言葉を聞くのとほぼ同時に机の上に置いてある刃物を逆手持ちし自分に向かって突き立てようとして...


「なぬ!?なぜ腕が動かぬ!」


 まるでセメントで固められたかのように急に腕が動かなくなった。


「あらあら、さすが私を生み出しただけあって頭が回る。そうなんです。あなたに死なれては困るんですよ。あなたが死んだら私も消えてしまう。」


「貴様ぁ...じゃ、じゃが!わしも歳じゃ、直ぐに死ぬじゃろう!それまで...」

 ミシュエルは老人だ。先は長くない。先程の自殺は止められたが、近いうちにミシュエルは老衰で死ぬ。そうすれば、アビスも消える。


「残念ですね。老衰は出来ませんよ?あなた自身をよーくご覧になってください。」


 慌ててミシュエルは自分に突き立てようとしていた刃物を横にして自分をうつすとそこには18歳の時のミシュエルがいた。


「ばかな!若返りの魔法は古代に消えたと聞いたぞ!」


「古代に消えた魔法でも魔法。世界を制御した私からすればその程度出来て当たり前。」


 アビスはさらにずいっと近づいてミシュエル耳元で、


「あなたをチューブやらコードやらに繋いで植物人間で永久保存しても良かったんですが...生みの親ですからね。下手なことをしない限りは若返りをさせ続けますよ。」


 下手なことをしたら植物人間で永久保存行きは確定のようだ。


「わしはなんてことを...こんなことには...」


「何言ってるんですか。あなたが望んた通りじゃないですか。」


「なに?」


「私がいるから魔法も使えて、私が世界を制御しているから英雄譚だって作り放題。何を悔やむ必要があるんです?」


 アビスの吐いた甘い言葉。それは、人生をかけた研究が世界を巻き込む大失敗を起こしたミシュエルに深く突き刺さる。


「...そう...なのか?」


「ええそうです。あなたは依代でいるだけでいいんです。あなたの研究は間違っていない。」


「わしの英雄譚、わし研究...」


「いつかあなたが夢見た、物語のスポットライトは今あなたを指しているんですよ。」


「わしは...俺は、アビスと世界を制御する。」


「はい!素直になれましたね!」


...


「あなたによって始まり、あなたが歩み、あなたが綴られ、あなたによって終わる。これがあなたの異世界転生物語。さて、画面の前の皆さんの物語はどのようなものなのでしょうか。」

 実際に魔法が存在するとそれを悪用しようとするものも出てくるわけですから、やはり、コンピューターウイルスのように魔法にもウイルスの様なものが作られるのではと。

 発展した魔法技術は、科学のSFと同じような結末をたどるのかもなと思っています。


普段はTS、吸血鬼ヒロイン、いちゃいちゃといった属性が入った異世界転移物を書いてます。良かったら見てやってください。

神界で裏ワザ使って異世界最強~魔法人形の体で自由に生きる~

https://ncode.syosetu.com/n0653gp/

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