第5部 沙霧と澪霧の ホロ酔い大作戦!
1945年12月(昭和20年12月) 東京都・神田区
終戦に伴い警視庁・特捜課・生活安全課が再結成された。木之本新之助と妻のニキータとホロと古田透、悠木緑が揃った。もう一人、石見祐司が課長に配属されて六人が職に就いたが直ぐにホロお婆ちゃんにも招集がかかる。いや沙霧と澪霧の保護者に選定されて東京へ追い出されたというのが本当か。
前任者退職で木之本新之助が署長に大昇格した。これは偏に妻の支持が大きかったものか、将又、強力な嫁さんを利用したいと考えた人物がいたのだろうか。……人材がいなかったとか思わないで貰えれば新之助さんも喜ぶだろうか。
港区の事務所と倉庫は新築されている。
警視庁・特捜課・生活安全課が活動を始めたのには理由が有り、終戦が見えたのに伴いロシアが日ソ不可侵条約を破り侵攻して来た。併せてスパイ活動と共に人狼兵も送り込んで来ている。
復員の人々が職を求めて東京に集まり、道路には人々が溢れるようになった。スパイ活動の環境にはもう最高になる。また若い女性が襲われ出したが、人口が多いのでもうお手上げにも近い状況になっている。
1946年4月8日(昭和21年4月) 東京都・六本木
四月になって沙霧と澪霧は東京高等師範学校に上位で入学する。居処は少し遠い六本木に決まった。学校まで六キロ位あるが二人は小一時間で徒歩通学した。身体能力が高いのでなんら問題は無い、ないのだが世間はハイカラな娘を放置しないのだ。
この頃は女学生が少なく珍しく、目立つ2人には人目が少々キツイかもしれない。いわゆるお嬢さまだから……。黒い乗用車で送迎があった日は大変な眼に遭う。他の学生の眼が痛いのである。青の上下のツーピースとか目立つばかりだった。
主にお婆ちゃんのホロが買い与えていて和服も好んでいたが、通学には向かないので殆ど着る事は無く過ぎた。流行の兆しがあるミニスカートは絶対に避けるように言われていた。
沙霧は長い髪、澪霧は残念ながらお団子頭でこれ以上どうにも出来ない。
「ねぇお姉さん、会話が無いので淋しいですね」
「そうだね、作者に書く能力が無いんですもの、しかたありませんわ」
「嫌ですよ、そんなー」
「紹介もあらかた済みましたので、明日からは何を着て学校へ行きましょうか」
「もう、モンペはこりごりですから羽織袴で」
「歩くのが大変よ」
「綺麗に見えるからいいじゃありませんか」
「ねぇ澪。霧お母さんは青のロザリオを持っていたんだよね」
「澪が見た夢では持っていたよ。でも父さんと母さんは何も言わないよね。私たちには内緒にしてるのかな」
「きっとそうね」
「どうしてかな、私たちの身体の異変と関係があるから?」
「訊いてみる? ホロお祖母さまなら答えてくれるかもしれない」
「お姉、訊いてみようよ、何か大きな意味があるのよ」
「いっそのこと、ロザリオが飛んで来ないか念じてみては? どうかな」
「飛んで来る訳は無いよ。んーじれったい! 直ぐにでも知りたい」
「沙霧が、念ずる。青のロザリアよ、ここに現れ給え!」
「澪、飛んで来たよ、ほら十字架!」
「それ秋葉原で買ったのでしょう、騙されないよ」
「やっぱダメか澪に上げる。青の十字架、大切にね」
「姉さん、私たちの引っ越しの打上げをしない? ホロお婆ちゃんを酔わせて事実を聞くの。どお?」
「澪。それ、いいかもしれない」
「名付けて、ホロのホロ酔い大作戦!」
「お伺いをたてて早くしよう、ね!」
「次のお休みがいつか、ホロお婆ちゃんに明日訊いてみます」
「いやダメ、聞くのは署長によ。女の押しに弱いから、まずは署長を落としましょう。外堀を埋めてから攻撃開始ね」
「必ず休みを与えてくれるように色気で迫るのよね?」
決戦当日は広くは無い居間を片づけて飯台を二つ並べた。少ししか食べ物は用意出来なかったが、署長さんが気を利かせて持ってきて頂いた。お酒もね。自分らでお酒が用意出来ない時点でどうかと思うね。
「今日は私たちの為にお集まり頂き、感謝いたします」
「ゆっくりして行ってください」
歓談が進み、ホロお婆ちゃんに十字架の事を訊きたいので、澪は十字架をネックレスにして服の上に見えるように掛けていた。
「澪ちゃん、このロザリオはどうしたの?」
「これはね、お姉から貰ったのよ。どお? 綺麗でしょう」
先には進まなかった、失敗に終わる。
「姉さん失敗したね、何が悪かったの?」
「そうさね~作者さまの考えが、ノータリンだったのさ」
「作者さまにも、お酒を届けないとイケないんでしょね?」
「そうさね、バクダンを送れば?」
「うん、それいい。で、どうするの?」
「簡単さ、どこそこに置いてある消毒のAL,あれを貰ってきて薄めればバクダン、ね」
「あれは、エチルよ。メチルじゃないよ!」
「泡盛? とか」