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人狼 Zwei (ツバイ)  作者: 冬忍 金銀花
12/91

第12部 ミーシャ……就職する?


 1947年8月(昭和22年8月) 東京都・六本木


「ミーシャ……そろそろ働かない? どお? このお仕事は? あ、あぁん?」

「顔が近い……ニキータさん、そう力まないで」


「ミーシャさん初めまして。私は木之本新之助、ここのボス! さ」

「なに気取って自己紹介してんの」

「いえ、こちらこそ初めまして。奥さまには昔にお世話になっておりしたので」


「でね、ミーシャがバケモンを倒してた所を見つけたからさ、しょっ引いて来たんだけど……シン、採用して」

「顔が近い、勘弁してくれ」


「私は結構です、間に合ってます」

「ニキータさん、そう無理に誘わなくてもいいじゃないの?」

「ミーシャさん、考えておいて下さい」


「ミーシャは帰ります、ごきげんよう」


 ボロが出ないかと心配するから自分で名前を言うくらいだ、ミーシャはかなりうわずっているのだろう。


「ミーシャさんは帰ったが、おいニキータさん。本当にバケモンを倒してるんだろうね。だいたいが女三人と言うじゃないか、他の二人は誰だい」


「ん~……自分一人と言うんだよね、実際に見たのはミーシャだけだし分んないだよね~」

「もしあの双子なら確認できるよ。バケモンが出た時間に人狼と戦っているか自宅に居るか、張り込みをしてだな」


「悠木くん、今度からあの双子を見張ってくれないか。肉と野菜を経費で買っていいから、スキヤキを食べながら~ケーキも付けていいぞ」


「喜んで~、署長ありがとうございます。毎日行ってまいります」

「バカ……指示した日だけだ、毎日は外で見張りを頼むよ」


「署長~すみません、毎日見つかってます。牛の一頭を食べるまでおじゃします」



 1947年8月(昭和22年8月) 東京都・神田区


 ミーシャは自宅に帰ってさっそく対策を考える。帰宅途中で考えを纏めているが事の顛末をソフィアに伝える。そして協議の結果、覆面とコスプレをする! と決めた。


「秋祭りのドラキュラの面がいいわね」

「ダメよ暑っ苦しいし、汗でお化粧が流れるからイヤよ」

「二人に連絡してみる」

「テレパシーはダメよ、ニキータさんに聴かれるからね。明日学校で相談して」

「うん、そうする」

(学校は休みじゃん、母さんは毎日が日曜日だから分かんえ~よな)

「なにかしら、この心の声は」



「おはようー沙霧、澪霧。今日もいいお天気よ」

「おはよう」

「オハーどうしたの? こんなに早くから」


「実はね、母が特捜課の木之本の奥様に捕まっちゃってバケモノ退治がばれたのよ。母にはうちの生活安全課に来ないかーって誘われるしね」


「それで?」

「それで私たちの素性がばれない様に覆面とコスプレをしようと決めて相談に来たのよ、どうかしら」


「相談ですか?」

「それいいかも、やろうよ澪」

「いやだけどな~」

「ソフィアさん澪もOKよ。で、どうするの?」


「澪~出かける用意をなさい」


「お姉ちゃん……また秋葉原に行くの?」

「いいじゃない、これくらい」

「そうだね、このバイトはお金に成らないし」


「違うわよ、コスプレの服を買いに行くんです」


「そんな服売ってないでしょう? で、何処よ」

「三人揃って五十年後にね、跳ぶのよ」

「お金はどうするの?」

「現地調達になるわね、もっと綺麗にして行きましょう」

「おかしくはないの? この格好は」


 澪は自分の服を見て言った、やや流行遅れでもあるかな。


「五十年後だよ? 何が可笑しいの?」

「アハハハ~」

「ソフィア、何を笑ってるのよ」

「ゴメン、五十年後だと完全に私たちはコスプレ少女よ、違うかしら」

「そうよね~」X3


「孫が働いていそうだね」

「着いたらテレパシーで探してみるか」


 三人は朝餉を済ませて手を繋ぎ秋葉原まで跳んだ……五十年後、とんだ五十年後だった。


 無事に五十年後に着いたのはいいが、これは世界がまるで違う。三人は道路で固まるしかない。


「なにしてるんですか、貴女たちは向こうのお店よ。もう、早く行くのよ」


 女装した男の人に連れられて私たちは「時代屋」に着いた。ここは昭和初期スタイルの喫茶店であって、今日はバイトが三人来る予定になっていたそうだ。


 これは二人の孫の計らいである。この日に秋葉原に行ったと本人たちが話して聞かせたから、事前に困らないように計画したそうだ。だとしたら夕霧が子どもを産めば丁度いいみたいだね。


「店長……連れて来ました、合ってますか? 三人は人違いだって叫ぶんですよ」

「ええ間違いありませんわ。ありがとう小百合さん!」


「さて……初めまして。コスプレの服は用意してますので、これ着てください」

「三人とも良く似合いますわよ。ソフィアさんには赤のカチューシャをしてね」


「あのう、あなたはどなたかしら」


「お姉さんは赤のリボンね、澪さんみは猫耳がいいわね」


「あのう、貴方はどなたかしら?」


「ああ、ごめんなさい。本当に現れるんですもの、驚いて燥ぎ過ぎました」

「ウソよ」

「私は貴女の妹の孫よ、沙霧お婆様の孫ね。名前は秘密でね、教えて名前が変わると困るわ」


「さ、奥で着替えて来て!」


 三人は奥に行く。少し遅れて小百合さんが着付けの手伝いに行き、大きい叫びと共に小百合さんが飛ばされて出て来た。


「あらあら、しょうがないわね~」

「お店と彼氏を壊さないで! お手伝いしますよ」


「これは頭から被るの。これはブラの代わり、そして、これは胸パットで作りオッパイね。これで大きくなるわ。ソフィアさんには要らないね」


「ほんと、よくお似合いですわ、この袋には予備として三着入っていますからお好きなようにお使いください」


「あ、そうそう、向こうのテーブルでコーヒーを飲んでらしたご婦人はお二人のお子さまでしたよ。ニコニコして帰られました」


「多分、明日にはお二人の家の訪問が有りますでしょうか」

「さ、用意が出来ました。お代は本人様から頂いております」


「澪、金払った? ソフィアは払ったの? 私は払って無いけども」


「時間跳躍に遅い、早いは関係ありませんが、お疲れになる前にお帰り下さい」


「着替えたままでお帰り下さい。着ておられた洋服は高く売れますので、お返しはいたしません」


 コスプレ衣装は綿・100%です。もちろん小百合さんもメン・100%です、オカマですが……。



「あ、記念写真を忘れた」

「これでしょう? ご婦人の方からいただきましたわよ」


「なにこれ、足が三本と小百合さんしか写ってないじゃん」

「このステキナ足が私よね、太い足は誰ですか?」


 明日から巫女見回り隊出動す、竜王3姉妹=ドラキン34マイこの名前はどうかしら。却下ですか~あ~そうでしょうね~。


 私たちの通学服が取られてしまって明日から着ていく服が足りなくなった。コスプレ衣装で通学なんてやってたら学校から追い出しを食らうのは間違いなしよね。


 ここは忘れた頃のホロお婆ちゃん頼むしかないのね。


 沙霧や澪霧から産まれる娘が男の子を産む、巫女としてはあり得ない事が起きてオカマとなる。ここは忘れずに物語に入れなくちゃね、どうしましょうか。亜聖は絶対にオカマになんてしないからね、いいかしら?


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