山門春樹
数ヶ月、忙しく時間が過ぎた頃。
相澤さんから寄りを戻したとの話を聞いた。
結局、彼氏さんは彼女のことが忘れられなくて玄関先で土下座したみたいだ。
彼女は何故か許してしまいそれでも幸せそうに毎日を送っていた。
止める必要はない止められない、私は沸々と湧き上がる彼女への思いを一生懸命抑えた。
「山門さーん。助けてください」
半ベソかきながら、ここが分からないですと仕事のことを聞きに来た。
丁寧に教えると、相澤さんは明るい笑顔でお礼を言い去って行った。
私は彼女に弱い。
ショートカットの髪に、文句のつけようのない顔、柔らかそうなほっぺに、フワッとした女の子らしい匂い。
耳にかからない髪を何度もかけようとする仕草、眠たそうにウトウトしては仕事に取り掛かる彼女全てが愛おしい。
彼女に好意を抱いたのは、彼女が入社して間もなく。
最初、外見は好みだと一目惚れしたが、性格はあまり好まなかった。
一緒にいると疲れるのだ。明る過ぎて。
しかし、幼さ残るあどけない表情に何故か惹かれてしまっていた。
抜けてそうで抜けてなくて、抜けてなさそうで抜けてて。
一生懸命物事に励む彼女に好意を抱くまでそう時間はかからなかった。
しかし、彼女には彼氏というものが存在して私は同性だから候補にすらならない。
私は、何度も彼女を諦めては、その心を打ち砕かれまた惹かれてしまうそんな日常を過ごしてる私の心は、打ち砕かれるたびに独占欲が顔を出すようになってった。
「山門さん、ご飯行きましょ?」
「あー、ごめんなさい。残業してかないといけないから」
そう言い彼女の誘いを断るように。
仕事中彼女と目があっても逸らすように。
彼女を好きにならないための理由を作り彼女にも好意的感情を与えないよう徹底した。
彼女が幸せならそれで良い。
自分に言い聞かせた。