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山門春樹

「春樹ーこっち」


バーに入ると手を上げて、私に存在を教えてくる。


「ごめん、待たせた?」


隣に座る。


「なわけ、私があんたを待つ理由は無いね」


そう言って私に手の甲を向けてしっしとやってくる。


「マスター、ホワイトルシアン頂戴」


ここは、女マスターが経営している店でくるのは二度目。

同級生らしく、私の隣に座る角田杏は仲がいいらしい。


「で、本題。もう11時よ、なんでこんな時間に呑みたいだなんて言い出すわけ?」


杏は、ぶすっとした顔で言った。


「さっき後輩と飲みに言って来たんだけど、飲み足らなくてっていうか、杏に話を聞いて欲しくて」


そういうと、杏は目を輝かせた。


「恋愛の話でしょ?」


変なところ勘がいい。たまにその勘のお陰で深く話さず理解してくれるから楽だけど。


「まぁ、そんなところ」


「ん?なになに?」


嬉しそうな顔でニンマリ笑う。


「あ、えっと。今日飲みに行ったの例のあの子なんだけど。


4年付き合った彼氏に2年浮気されてたらしくて、別れたみたいなんだけど」


と言うと、杏はマスターの方を向いて


「それってチャンスじゃん!」


ねぇ?マスターと言った。


「チャンスも何も向こうは男性経験しかないし」


「んなこと、気にしてたら生きて行けないでしょ。

あんた、顔だけは昔から綺麗なんだからさ」


角田杏は同級生で幼稚園の頃からの幼馴染。

中高大全てにおいて同じ学校で、私の恋愛事情をよく知る人物。


きっと、親よりも私のこと知ってる。


「ありがと、それより杏はどうなの?」


「あ、付き合うことになりましたー」


「相手は結局誰なの?」


私の問いに、杏はため息つく。


「高校が一緒だった、立花さん覚えてる?あの子」


立花さん?


「え、誰?」


「言うと思ったから言わなかったの。


覚えてないの?あんたに告白した子だよ」


振られた挙句名前も顔も忘れられて可哀想と頭を抱えた。


「写真みせてよ」


仕方ねーなと言わんばかりにケータイを雑に扱い、ツーショット写真をみせて来た。


「へぇ、綺麗な人ね。なんで振ったのかしら」


私頭とち狂ってるわと、私自身頭を抱えた。


が、この顔知ってる。


目の前のマスターと顔を見比べてみると、完全一致した。


「え?え?まさかの、マスター?」


マスターは、恥ずかしそうに顔を赤らめると会釈をして来た。


「気づくの遅〜い」


「だから、あんたここに入り浸ってんのね」


「悪い虫がつかないように警護してんの」


人聞き悪いこと言わないでと、冷たくあしらわれる。


マスターの左の薬指には控えめな指輪が付けてある。

同様、杏の指にもついている。


いいなー、幸せそうで。


そう思って私は、おめでとうと2人に言った。


「大変だったんだからね、あんたの事が忘れられない沙耶を落とすのは」


ねぇ?とマスターこと立花さんに同意を求める。


顔を赤らめるだけの立花さんに、杏は「可愛い」とベタ惚れ。


何杯か飲ませてもらい、私は帰宅した。


帰り道、まだ少し肌寒い風で頭を冷やし、相澤さんのことは、諦めようと言い聞かせた。

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