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☆さんたがうちにやってきた☆

作者: 五十路

2018クリスマス短編、その1

 まだかなー、まだかなー。


「どうしたの、みっちゃん?」

 ママがあたしをみて、わらってる。


 ひとのことみながらわらうって、なんかしつれいよね。


「どうしたって、なにが?」

 あたしはちょっとだけプンスカしながら、ママにきいたの。


「だって……みっちゃん、さっきからずっとソワソワしてるんだもの」

 あー、なんかママがニヤニヤしてるー。


 そわそわなんかしてないもん!

 ママったらほんと、しつれいなんだから。


 だってしかたないじゃない!

 おちつかないのは、ちゃんとりゆうがあるのよ!


 そう、それはあのひとがくるから。


「さんた、まだこないかなー」

 だって、きょうはクリスマスイブなんだもん。


「まだ来ないわよ、まだお昼過ぎたばっかりでしょう? あと呼び捨てにしないの、ちゃんと『さん』を付けなさい」

 さんたは……じゃない……さんたさんは、まだこないってしってるけどさ。


「おひるすぎでも、くるかもしれないでしょ?」

 もしかしてってことも、あるでしょ?


「来・ま・せ・ん・よ」

 ママがきめつけた。


「くるかもしれないじゃん! さんたさん、くるかもしれないじゃん!」

 よのなかに、ぜったいはないって、こないだドラマでいってたよ。


 あたしはちょっとだけ、ほっぺをプンッてした。

 ちっちゃいこみたいだけど、あたしだってこんなきぶんのときもあるの。


「そうね、来るかもしれないわね」

 なんかききわけのないこどもに、いいきかせてるみたい。

 あたしのほっぺが、ますますふくらんじゃう。


「ふんっ、だ」

 あたしはプンスカしながら、おへやにいくの。

 だってママが、ちょっとだけきらいになったから。


 そしておひるねしちゃう。

 おひるねしておきたら、なぜだかまたママのことがだいすきになれるのよ。


 おきにいりのスライムをだきしめて、ちょっとだけおやすみー。

 おきたらさんたさん、きてるかなぁ……。


 …………


「みっちゃん、そろそろ起きなさい。もうじきご飯よ」

 ゆさゆさゆれてる……ママにおこされてるみたい。

 ゆさゆさしなくてもおきれるのに……。


「ふあぁ~」

 あくびがでちゃったけど、ちゃんとおきた。


「起きたならお手伝いしてね、お皿出してほしいな」

 もうママったら、おきたばっかりなのに、おてつだいなんてたのまないでよ。


 いいにおいがする。

 たぶんこれは、からあげね!

 あたしにはわかるんだもん。


 おへやからでて、テーブルのうえがみえた……。

 ほらやっぱり、からあげだったよ。


 もりつけがいつもよりきれい。

 クリスマスイブだから、ママもきあいをいれたのね。


 それにさんたもくるし。

 あ、いけない……さんた『さん』だっけ。


 そうだ! おてつだいしなきゃ!

 あたしはおさらと、こっぷをテーブルにならべた。


 うん、なんかすてきね。

 でもかんじんなものがない。


「ねぇママ、ケーキは?」

「心配なの? 大丈夫よ、ケーキはもうすぐ……」


 ピンポーン

 ママがケーキのことをいいかけたとき、げんかんのピンポンがなったの。


「はーい」

 げんかんにむかって、ママがパタパタはしっていく。

 もちろんあたしもいっしょに、はしっていったわ。


 カチャリとドアがあいて、あのひとがはいってきた。

「こんばんは……じゃなかった。メリークリスマス」

 さんただ!


「メリークリスマス!」

 あたしもげんきに、ごあいさつだ。


「メリークリスマス。どうぞ、上がって」

 ママがさんたを、うちにいれた。


 えんりょしないで、すぐはいればいいのに。

 さんたはしらないひとじゃないんだから。


「みっちゃん、はいケーキ」

 そうか、ケーキはさんたがもってきてくれるんだったのね!

 それでテーブルになかったんだ。


「ありがとう! さんた!」

 ケーキをもってきてくれたんだから、おれいをいわないとね!


「こら! みっちゃん。呼び捨ては駄目だって言ったでしょ?」

 いけない、そうだった。

 ママに怒られちゃった。


「ありがとう、さんたさん」

 ちゃんといいなおしたわよ、えらいでしょ。


「それと……はい、これはクリスマスプレゼント」

 さんた……じゃなかった、さんたさんがおっきくてきれいなふくろをくれた。


 ぴかぴかで、みどりときんいろのもようがはいって、あかいリボンがついてるきれいなふくろ。


「うわー、ありがとうさんたさん! あけてもいい?」

 なにがはいっているのかなー。


「みっちゃん、開けるならあっちでね。三太さんも早く上がって、外は寒かったでしょう?」

「はーい」

 ママにいわれて、あたしはげんかんからリビングのソファーにちょっこう。

 ぽーんとすわって、プレゼントをあけるんだ!


「じゃあ、遠慮なく――みっちゃん、プレゼント気に入ってくれるかな」

 さんたさんがうわぎをぬいでテーブルのいすにすわったけど、あたしはプレゼントのふくろをあけるのにいそがしいの。


 ふくろがあいた!

 さんたさんからのプレゼントは――ひきこもりグマのぬいぐるみだ!


 うれしいプレゼントに、ついニコニコしちゃう。

 ひっきーぐまのぬいぐるみは、にんきものでみんなだいすきなの!


「みっちゃん、気に入ってくれたかい?」

 さんたさんが、ニコニコしながらきいてきた。


 どうしてさんたさんがニコニコするんだろう?

 プレゼントでうれしいのは、あたしなのに。


 あたしはもちろん、このこがおきにいりよ!

「うん! ありがとう、さんたさん!」


 あたしはひっきーぐまをぎゅーっとする。

 きょうからこのこは、あたしのこ!

 なまえは――ポテトにしよう!


「ご飯にするわよ。ほら、みっちゃん、ぬいぐるみは置いて」

「えー……」

「えーじゃありません。抱いたままじゃ、ご飯食べられないでしょ?」

 そうだけどさー。


「抱っこしたご飯食べたら、ひっきーぐまが汚れちゃうかもしれないよ?」

 そっか、さんたさんのいうことも、もっともね。

 よごれちゃったら、ポテトがかわいそう。


 あたしはソファーにポテトをすわらせてから、ごはんのまえにすわることにした。

「そこでいいこにしてるのよ、ポテト」


「ポテト?」

 さんたさんが、ふしぎそうなかおをしてる。

 なんで?


「うん、ポテト。さっきつけたこのこのなまえ」

「また変な名前つけて」

 へんななまえですって! ママってときどきしつれいなこというよね。


「へんじゃないもん!」

 へんじゃないよね?


「うん、変じゃ無いね。それよりご飯を食べようよ、実はお腹がペコペコなんだよ」

 さすがさんたさん、わかってるわね。


「そうね、じゃあご飯にしましょうか」

 ママはさんたさんのいうことには、すなおなの。

 きっとなかよしだからなのね。


 あたしはしってるのよ。

 ママとさんたさんは、こいびとどうしなの。


 けっこんしないのかな?

 あたしはちゃんとさんたさんのことを、パパってよぶこころのじゅんびをしてるのに。


 でも、さんたさんはママにプロポーズしてないの。

 きっとさんたさんはヘタレなのね。


 そんなことよりごちそうよ。

 からあげに、クリスマスリーフみたいにもりつけたサラダ、それとちらしずし。


 からあげはあんていのおいしさね。

 ちらしずしもわるくないわ。


 でも……。

「みっちゃん、ちゃんとサラダも食べなさい」


「うぅ~……」

「みっちゃんは、野菜嫌いなの?」

 さんたさんが、あたしのかおをのぞきこんだ。


 ここで『きらい』とはいいづらい。

 あたしだって、ちょっとはさんたさんにみえをはりたい。


 あたしはおもいきって、サラダをくちにパクッ……。

 もぎゅもぎゅもぎゅ。


 ……へんよ!

 きょうのサラダは、おいしい。


 やさいだというのに!


「どう?みっちゃん、今日のサラダ美味しいでしょう?」

 ママがかちほこったかおをしてる。


 なんかむかつくわね。

 でもきょうのところは、あたしのまけにしといてあげるわ。

 おいしいし。


「なんでおいしいの?」

 あたしはひみつがしりたい。


「ないしょ」

「えー」

 ママのけちんぼ。


「じゃあ今度は一緒に作ろうか? そしたら秘密がわかるわよ」

 ママがいたずらっぽくわらう。


 いっしょに?

 なるほど、おてつだいさせるきね。


 ママのおもいどおりになるのは、おもしろくない。

 でも、おいしいサラダのひみつはしりたい。


「うーん……じゃあこんどね」

 あたしはサラダのひみつに、はいぼくした。


 ママのえがおは、かちほこっていた。


 さんたさんもえがおだったから、まぁいいや。


 …………


 ごちそうのあとは、ケーキだ!


 サンタさんや、トナカイさん、おうちやゆきだるまがのった、クリスマスケーキ!


「ママ! はやくはやく!」

「もうちょっと待ってね」

 ママがクリスマスケーキを切り分けてる。


 ちがう! そうじゃない!

「イチゴはきっちゃだめ!」

 ケーキのうえにのったイチゴは、きっちゃだめなの。


「はいはい」

 ママがケーキのうえのイチゴをずらして、ケーキをきりわけてくれた。

 そうそう、ケーキはこうでなきゃ。


「いただきまーす」

 あたしの食べてるのは、トナカイさんがのったケーキなの。


 ママはおうちののったケーキ。

 さんたさんは、ゆきだるまののったケーキよ。


 サンタさんののったケーキは、あたしがたべるんだから、とっちゃだめなんだからね!


 …………


 ちゃんとサンタさんののったケーキもたべて、あたしはだいまんぞく!

 あとはみんなで、あたしのすきな『むかいのツルル』をみるのよ。


 ……コックリ、コックリ……。

「みっちゃん、もう眠いんでしょ? お部屋行って寝なさい」

 ママがなにかいってる……。


 いけない、ちょっとだけコックリしちゃった。

「さいごまでみる」

 だってせっかくのクリスマスイブなんだもん。


 あたしはがんばって『むかいのツルル』をおしまいまでみた。


 ねむい……。


「それじゃパジャマに着替えて、今日はもう『おやすみなさい』しましょう」

 ママにいわれて、あたしはおへやへ。


 ママにおきがえをてつだってもらって、あたしはパジャマになった。


 でもまだねない。


 えにっきをかかないと!


 えにっきってしってる?

 きょうのことを、えとじでかくんだよ!


 さいきんさぼってたけど、きょうはぜったいかかなきゃ。

 だってクリスマスイブなんだもん。


 えにっきちょうをひらいて、まずきょうのひにちをかく。

『12がつ24にち ゆき』


 そしてえをかくの。

 かくのはもちろん『あたしとママとさんた』のえ。

 じゃないさんたさんだっけ……もうどっちでもいいよね。


 ねむい……。

 もうちょっとでえをかきおわるのに……。


 もうちょっと……。

 よし、できた。


 われながらいいできね。


 あとはじをかくだけだけど。

 もうねむけがげんかい。


 たくさんのことがあったけど、ぜんぶかくのはむり。

 だから、いちばんかきたいことだけかこう。


 あたしはいちばんかきたいことだけ、えにっきにかいたの。


『さんたがうちにやってきた』


 これでかんせい。

 もうねる!


 あたしはベッドにもぐりこむ。

 もちろんポテトもいっしょなのよ!


 ポテトをぎゅーってしたときに、おへやのむこうからさんたのこえがきこえた。

「実は、その……もう1つプレゼントがあって。これは、えーと……みっちゃんにじゃなくて……」


 あぁ、きっとさんたはママにもプレゼントをあげるのね。

 なにかなー。


 きになるけど、おねむはもうげんかい。


 だからあしたね。


 おやすみなさい。

メリークリスマス♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] めりくりー! いいぞ、ようじょなまいきかわいい。 [気になる点] 私も女性主人公で書いてるおっさんだからね。キモいとか言われるとショックで立ち直れないので! お互い頑張りませう
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