第五話
相変わらず進みが遅くて申し訳ないっ。
ぱちぱちと木材がはじける音を洞窟内に響かせながら俺は荷物の整理をしていた。
物資の調達を終えたその後は、薪になりそうな木材を拾いつつ洞穴へと戻り、火をたいた。
え?火種はどうしたかって?
確かにライターやマッチなんてものは持っていなかったし、木をこすり合わせて…なんてのもできるわけが無い。
しかし、俺の持ち物の中には組み合わせれば火をつけられるものがある。
それは、、、、、乾電池とのど飴だ!!
のど飴といっても使うのは外側の銀紙だけだが。
つまりは電池と銀紙、これがあれば火は起こせる!!
まあ、これも本で読んだ不確かな情報だが。
短冊状に切った銀紙の真ん中をぎりぎりまで細くなるようにさらに切る。
ちなみに俺はソーイングセットの中のはさみで切った。
その銀紙の端を電池のプラスとマイナスにつけて抑えるようにもつ。
すると電気が流れ、細くしたところに熱がたまり火がつく。
簡単だが少し時間がかかるし、持っていたところが熱くなって大変だった。
そこからは燃えやすいようなものから順番に太い木へと火をつけていく。
後は燃えろよ燃えろを歌えばキャンプファイヤーの完成だ。
「やはり火はいいな、人の文明が感じられる。」
俺は火の暖かさに感動しつつ芋のような植物の皮をナイフでむいていた。
剥き終えた芋を水のはいった鍋の中に入れ、川で取ったカニエビ(仮称)を取り出す。
少し弱ってきていて、手に取ると軽く抵抗しながら泡を吐いていた。
軽く暖めたフライパンにそいつらを放り込んで鍋の調理に戻る。
香りと辛味のある葉っぱやしょっぱい砂を、泉の水と剥いた芋と一緒に煮る。
疲れを感じ少しボーっとしているとフライパンのほうから何かのはぜる音が異常なほどに聞こえてきた。
俺は何が起きているんだと、見てみると。
そこには、フライパンからあふれて落ちるほどに発生している泡があった。
そしてその泡は、火に落ちると引火して小さな爆発を起こしていた。
「これ、あのカニエビの出していた泡か?何でこんなにでてるんだ?というか燃えるガスか何かなのか?」
俺はたくさんの疑問を浮かべながらも、いったん火から離そうとフライパンに近づいた。
そう、不用意に近づいてしまったのだ。
フライパンの取っ手をつかみ持ち上げようとした瞬間だった。
目の前が真っ白になりそのあとに轟音、そして衝撃と熱が起こり俺は気がつけば壁に打ち付けられ横たわっていた。
制服に引火してしまっていたが、近くにあった水がめを自分に向かって倒す。
たいした量ではないが、時間をかけて汲んできた泉の水がすべて無駄になった。
幸いなことにやけどは大きくなかった。少しひりひりする程度だ。
可燃性のガスだが熱はそれほど無く衝撃の方が強いのかもしれない。
爆心地のフライパンは穴が開いており、隣にあった鍋はひしゃげて中身はだめになっていた。
せっかく準備していた料理はだめになり、その日は木の実と水のみで夕食を終えた。
「異世界の生き物こえぇ。」
俺は異世界という常識の通用しない場所に今一度恐怖を覚えつつ、意識を失うように眠りについた。
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次の日の朝、目が覚めた俺はまず泉に向かった。
これまでの出来事を思い返し、再度恐怖を覚えつつ顔を洗う。
大きな獣に襲われ、崖から落ち、苦労して捕らえた食料は爆発する。
そんなことがおきればまともな精神でいられないだろう。
水面に移る自分の顔は、ストレスからか大分やつれて見えた。
「はぁ、、、、」
自然とため息がこぼれる。
沙耶のことや、元の世界のことを考えて気分が落ち込んで行く。
ずっとしぼんでもいられない、次の行動に移って行かなくては。
と、首を振り水を飛ばしながら気合を入れなおし、顔を上げると、泉の対岸に小さな動物がいた。
「ん?なんだあれ、、へんな、、ねこか?」
猫のような狐のような動物。四足歩行で大きさもそれほど無い、耳が大きめでピンとたっている。
尻尾は細長く先端は白い、全身の色は深い緑の色、目の色は赤っぽい色だがなぜか透き通っているように感じた。
そして一番の特徴は額にある目と同じ色の宝石のようなものだろう。
陰になっている対岸で目と額の宝石だけは少し光って見えた。
テレビで見れば、神秘的で美しさを感じるその小動物に感動を覚えるだろう。
しかし、その現実にはいなさそうな生き物に対して俺は少しの恐怖と大きな警戒を抱いていた。
感想、アドバイスお持ちしております。
次回更新は来週の金曜日です。
なるべく進めるようにがんばりますね。