第三話
今回はこれまでよりも少し長く、説明っぽい回になります。
すこしは異世界物っぽい雰囲気がでてきたかな?
過度な期待はせず、そういうものなんだとおもいながら読んでください。
顔の上にたれてきた冷たい水滴で俺は目が覚めた。
仰向けになったまま周りを見てみると、そこはやはり森だった。
その中は相変わらず暗いが枝葉の隙間には、光がうっすらと見えていた。
起き上がろうとすると全身に痛みが走り、体を動かすことができなかった。
あの狼にえぐられた腕の怪我以外にも、多くの打ち身や擦り傷などができていた。
立ち上がるのをあきらめて、這うようにして木の根元まで行き、そのままもたれかかる。
ごつごつとした木の皮と、ひんやりした地面、そしてぼろぼろの俺。
狼にやられた傷を確かめようと上の服を脱いで行く。
そこでようやく自分の腕、負傷している左のほうがしびれていてうまく動かせないことに気がついた。
肩や肘はある程度動くのだが、そこから先の手首や指などは、力を入れようとしても痛みが襲ってきてうまく扱えない。
怪我の痛みは感覚が麻痺しているのかあまり感じない。
だが、腕を動かすときの痛みははっきりと感じる。
たぶんだが、神経がやられてしまったのかもしれない。
それ異常に、全身の怪我の具合の方が緊急的な議題である。
俺の脳内では、これからどうするかの緊急会議が行われていた。
現在も地球にいると思っている俺の現実逃避的な人格は、(とりあえず病院行かなきゃな)と、少しのんきな感じだ。
異世界に来ていると確信しているリアリスティックな人格は、(まずは、ステータスのチェックだ、それをしなければ話は進まない)などと、理解不能なことを言っている。
それを聞いている自分勝手な俺は、(こんな森の中に病院なんかあるわけ無いだろっ!!ステータスぅ?そんなモノ見れたところでなんになるって言うんだ!?もっと考えてしゃべれや!!)と、自分は何の意見も出さずに批判の言葉だけは達者である。
そもそも、ステータスの見方なんて聞いてないし、あるのかすらもわからん。
それ以前に、説明してくれるはずの女神様とやらがいる場所に行くはずが、目がさめたら恐怖の森の中だ。
これが最近のゲームのチュートリアルならば、満場一致のクソゲーオブザイヤー大賞である。
おまけにチートもなし、さっき走った感じだと身体能力も地球のときと同じだろう。
森の中には凶暴な動物、食べ物も飲み物も医療機関もない。
うむ、完全に詰んだな。
ええええええええええええええっ!?
どうすんのこれっ?てか、おれどうなちゃうのさっ??
全然意味わかんないしっ!!何が話のわかる少年だよっ!!
まったく理解できないんだけどっっ!!
絶賛説明待ちだよっ!!せめてルールブックか説明書おいて行けよごらぁ!!
いったいなんでこんなことになってんだよおおおおお!?!?
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ふう、大きな声(脳内で)を出したら少し落ち着いてきたな。
あせるのはいけないぞ、双葉優。
こんな状況なんだ、まずやるべきことを決めなくては。
先ほどの脳内会議で話にあったステータス、確認しておいて損は無いだろう。
HPなどの項目があれば今の損傷具合もわかるだろうし、常態異常などがわかれば左手の痺れの原因もわかるかもしれない。
ステータスの見方なんてものは大体決まっている。
「ステータス」
声に出して呼び出そうと意識したところ、目の前に半透明のウィンドウが現れた。
手で触れてみるとタブレットのように操作できることがわかった。
大きさや出現している位置は、強く意識すれば変更できた。
ステータス自体の出し入れも声に出さなくてもできるようだ。
ちょっと恥ずかs、いや、なんでもない。
ステータスの内容はこんな感じ。
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《ステータス》
・名称・ ユウ フタバ
・称号・ 異世界人 持たざる者
・スキル・
・魔法・
・状態・ 四肢損傷(左腕) 負傷(中)
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ぱっとみてわかることは怪我がやばい。
俺の左腕はだいぶやばいかもしれない。
それ以外の怪我は、活動できないほどではない。
やっぱり魔法があるみたいだが、もちろん俺は使えない。
スキルも一切無いな。回復系があったらいいなと思ったんだが。
ほかには、称号とやらの詳細が謎だな、っと、なんだ、新しいウィンドウ?
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《称号 詳細》
・異世界人・ 他の世界よりこの「マカリジ」に来た者に与えられる称号
・付与効果 他言語理解 詳細表示
・持たざる者・ マカリジにてスキルを一切持たない者 または、所持しているが、そのスキルが
ワールドレコードに登録されていない者に与えられる称号
・付与効果 スキルを持つものからのスキル効果を増加(小)
成長限界解除
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この世界の名前は「マカリジ」と言うのか。
それすらも知らされずに送り出されたのか。
それと、称号に効果があるのか。
ふむふむ、言葉がわかるのはありがたい。
詳細表示と言語は異世界召還のセットだろうな。
持たざる者はなんとなくわかる。きっとこの世界の者は生まれつき、もしくは成人などでスキルが手に入るのだろう。
持っているのが普通なんだろうな。
効果が少し分かりにくいな。戦闘系のスキルなどによる攻撃のダメージが増えたりするのか?
厄介だな、しかし成長限界がなくなるのはすごそうだな。
努力次第になりそうだが。
ステータスはこんなものか。
HPやMPなどの数値もないし、STRとかINTとかもなさそうだ。
増加などの程度も(小)などであらわされていてアバウトで分かりにくい。
いまはっきり分かることは、この状況をどうにかできる能力を俺は有していないということ。
それと、左腕の怪我の具合が思ったよりもひどいということだな。
このまま適切な治療ができないと悪化していくかもしれない。
次は、持ち物でも調べるか、
手に持っているものは何も無いな。
服装は学生服のままだ、ブレザータイプでネクタイを締めている。
さっき怪我を確認する際にはずしたので横においてある。
それでまずは左手の傷口よりも上できつく縛り、簡易的な止血を施す。
ポケットの中などをあさると、多くは無いがいろいろなものが出てきた。
メモ帳とボールペンがあったので、リストアップしてみよう。
・メモ帳 ・ボールペン ・ソーイングセット ・がま口の小銭入れ
・のど飴(6つ) ・ハンカチ ・乾電池
こんなところだ、うん、つかえねえ。
食料になりそうなものは飴玉のみ。
ライターやナイフを持ち歩いてるわけもないし。
ソーイングセットは何かしらで使えるだろうか。
なぜそんなものを持っているかというと、沙耶が昔からやんちゃでさまざまな場面ではしゃいで、服をほころばせているからだ。
乾電池はというと、これまた沙耶の影響だ。
彼女が親に頼まれたお使いを、なぜか俺がこなすことになってしまっているのだ。
そういえば、沙耶もこっちの世界に来ているんだったな。
探し出して合流しないと心配で仕方が無い。
きっと、楽しんで王道を突っ走って、良くも悪くも目立っているんだろうな。
あいつには俺がついてないと、無茶して怪我しちまうからな。
そのためにも、俺は早くこの森を出て怪我を治さなくては。
よし、これからどうして行くかかんがえるかな。
この森は俺が見た感じはてしなく広い。
数週間、最悪は何ヶ月か森の中での生活になるだろう。
そうなると必要になってくるのは、食料と水。
川を見つけることができればいろいろと解決するんだが。
飲み水は手に入るだろうし、食べ物は何か水中にすむ生き物がいるだろう、川をたどって行けば人里に出れるかもしれないし、そうでなくとも森は出れるだろう。
第一目標は川を見つけることだな。
その道中で食べられそうなものを見つけられたらいいんだが。
体中の痛みが少しマシになったので立ち上がって周りを見てみる。
森の中にある植物はほとんど見たことが無く、実やきのこなども見受けられるが、俺の知識には無いものばかりだ。
ずっと悩んで立ち止まっていても仕方ないので、強くは無いが風の吹く方向へと歩き出した。
こういうときは、川や水の香りや音を感じやすいように風上に向かって歩くのがいい。
自信満々に進み始めたがこの知識は何かの本で少し読んだだけのものだ。確かなものではない。
心に不安を抱えたまま、俺は森の奥へと風に逆らい進んで行った。
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それから数時間後、へとへとになった俺は奇跡的に、静かに流れる小川へとたどり着いた。
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