第二話
結局ぎりぎりですいません。
本文も少なくなってしまいました。
なかなか展開がすすまなくて、申し訳ないです。
森林浴、それは主に都会に住む人や、自然と触れる機会の少ないものが、日常生活の中でたまった肉体的、精神的な疲れをリフレッシュするために行うものである。
そのほかに行くとしたら、その森で何かしらの仕事があるか、もしくは社会から逃げ出し相当追い詰められたものだろう。
どんな場合だろうと、現代社会での森とは、ほぼすべての者を受け入れる奥深さがある。
感じる魅力は人それぞれだろう。
しかし、人間とは大自然を前にすれば自然とその魅力に引き込まれて行くのだ。
とはいえそれは現代の、それも、日本の安全な森の中という条件がある。
海外の大いなる自然を前にすれば、知識の無い現代の若者たちは恐怖を覚えるだろう。
未知の植物、未知の地形、未知の生き物、未知の病原菌、などなど。
つまり、未知とは恐怖なのである。
人間というものは、自分の理解できるもの、知っているものには恐怖を抱くことはほぼ無い。
逆に言えば、知らないもの、理解できないものには、無条件で恐怖を覚えるのだ。
学校で、苦手な英語の授業を受けるのに、大きなストレスを感じたことは無いだろうか?
それは、慣れ親しんだ日本語とはまったく違う言語に、無意識的に恐怖を抱き、その感情がストレスとなって表れているからである。
話がずれてしまったな。
何が言いたいかというと、つまりは、「異世界かもしれない場所」、「獣のいる森」、「月が三つもある夜空」。
こんな状況にいきなり、だまされたようにつれてこられたこの俺こと双葉 優は端的に言えば、恐怖していた。
「ここ、どこだよ、、、」
自分の置かれた状況を、体を丸めたまま必死に分析した俺は、どうしようもないことに気づいた。
少し時間を戻して説明しよう。この森に俺がやってきた直後のことである。
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少し肌寒い空気のなかで、俺はまったく動くことができることができなかった。
何が起きているのかまったく理解できていないのだ。
しかし、ゆっくりと考えてる暇も無かった。
少し強めの風が吹き、それにつられて風下のほうに顔を向けたとき、遠くのほうから獣の遠吠えが聞こえてきた。
それは、今までにまったく聞いたこと無い、しかしこちらに対する敵意だけははっきりと伝わってくる、犯行予告的なものだった。
それを聞いても俺は、なかなか動くことができなかった。
いや、その威圧感のこもった、鳴声を聞いたからこそ動けなかったのかもしれない。
等間隔で聞こえてくる鳴声が、少しずつ近づいてくるのが感じられた。
そうしてから、やっと俺は動き出すことができた。
のっそりと立ち上がり、よろよろと獣の存在から逃げようと、反対側へとあるきだした。
慣れない森の中、木々の隙間を、おぼつかない足取りで進んで行く。
しかし、森での狩りに慣れているだろう獣からは、簡単に逃げ切れなかった。
遠吠えは聞こえなくなっていたが、背後に感じる存在感は、次第に近づいて行った。
その気配がだんだんと、追いかけるものから、捕らえようとするものに変わって行くのを俺は感じとった。
自分のことを、エモノとしてとらえてくる視線から、逃れようと必至に走った。
「はぁっ、はぁっ、、ぐっ、、はぁっ」
息を切らしながらも懸命に進んでいるのだが、正体不明の獣との距離は離れて行かない。
それどころか、徐々に、だが確実に距離をつめられて行ってる。
少しでも、隙を見せれば一気に攻めてくるだろう。
そうなった場合、俺には抵抗する力が一切無い。
そんな都合よく能力になど目覚めるわけがないし、古武術の心得などあるわけが無い。
そんなどうでもいいことに意識が向いていたからだろうか、俺は木の根につまずいてしまった。
転ぶまではいかなかったが、よろめいてしまい、スピードは大幅に落ちてしまった。
俺は、そのまま走り出すのではなく、とっさに転がり方向を変えて進んだ。
よろめいたタイミングで、獣はこっちにむかって飛び掛ってきていた。
奇跡的に直撃は避けることができたが、爪が腕をかすめていった。
「ぐあ、くそっ、何だっていうんだよ。」
痛みにうめきながら、俺はまた走り出した。
やつも、迷うことなく俺を追いかけ始める。
先ほどよりも距離を離すことができたが、俺のほうの限界が近い。
前を見ると、永遠に続くと思われた森が切れているのが見えた。
木の間を走り抜けていては逃げ切れ無いだろうし、逃げる以外の行動に移すにしても、相手のホームではうまくいくことはないだろう。
つかまらないように必死に駆け抜け、俺は木々の切れ目から飛び出した。
いや、俺は実際に飛んでいた。
森を抜けた先には地面が無かった。
十数メートルの高さの崖になっていて、そこから下はどこまでも森だった。
一瞬の停滞と浮遊感、そして急激な落下。
落ちて行く瞬間、俺をおっていた獣の正体を、少しだけ見ることができた。
そいつは、狼だった。それもひどく大きなものだ。俺の身長を大きく超えた高さに、全長は4、5メートルはあるだろう。
俺が落ちて行くのを見て、やつはつまらなそうに戻って行った。
その光景を最後に、俺の意識は、強い衝撃とともに闇に飲まれて行った。
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