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両利きの最優者  作者: ことあまつかみ
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第十一話

「よくこんな場所で生活できるな。人数も多いだろうに。」


フリードたちに助けられた日の翌日、俺たちは森の中の獣道を進んでいた。


正確には獣の道ではなく、集落の人たちが使う川と村をつなぐ道だそうだが。


「慣れちゃえば問題ないんじゃないっスかね。」


「やっぱそういうもんか。」


現代っ子の俺でも森での生活に適応し始めていたのだ、こっちの住民ならなおさらだろう。


「それに、こんな場所でもないと生活できなかったんスよ。今まではの話っスけどね。」


昨日の話のときから疑問なんだが、その村にはいったいどんな問題があるんだろうか?


「それは昨晩の話にあった、盗賊とかに襲われやすい村ってのが関係するのか?」


「それは違うっスよ。それとは別で、街なんかでは生きづらかったんスよ。」


まぁ、それもそうか。盗賊に困ってるだけなら街に逃げればよかったんだからな。


だとすると他に理由があるのか。街で生活しづらくなるような。


「なんで街では生活できなかったんだ?」


聞けることは今のうちに聞いておかないとな。村についてから問題に巻き込まれても困るし。


「あぁ、簡単なことっスよ、それは「おい、くっちゃべって無いでさくさく進め。日没前には村に着きたいんだ。」


喋ることに意識が集中していたのか歩くペースが落ちていたようだ。助けてもらっている手前迷惑はかけられない、ただでさえ俺のペース合わせてもらっているんだからな。


「了解っス!!ユウさん、この話はあとでゆっくり説明するっス。」


「ああ、よろしく頼むよ。」




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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



しばらく歩き、太陽が頂点まで来たあたりでいったん昼休憩となった。


元陸上部であった俺でも、怪我をしている上に戦闘を生業にしている人たちと同じペースで、しかも早朝から歩き続けていたらそりゃあもうくたくただ。


「あと一時間も歩けば村につく、いけそうか?」


小川に足を入れて冷やしていると後ろからフリードに声をかけられる。


「昼飯もしっかり食ったし、足も冷やせている、あと一時間なら何とかなりそうだ。」


残りの行程を聞くことができ心にも余裕ができた、ペースを保ったまま村までいけるだろう。


「もう少しの辛抱だ、、、っていってもなぁ。」


「ん?どうかしたか?」


フリードは俺の左手を見るとやり切れないといった表情をした。


「一つ聞きたいんだが、いいたくなかったら言わなくてもいいぞ。」


「あ、ああ、なんだ?」


「ユウの能力を教えてくれないか?」


ついに聞かれてしまったか。他にも異世界人が来ていて話を聞いているだろう。


しかも、持っているスキルが重要視されるであろうこの世界、これからの生活にもかかわってくる。


なんて答えたらいいだろうか、、、うそをついても仕方が無いか。


「実は、だな、、、無いんだ。」


「、、、、、、は?」


フリードは目を丸くして停止する。


「スキルは一つも持ってない、魔法なんて見たこともない。」


「冗談じゃ、ないんだな?」


「こんなこと、冗談で言うと思うか?」


俺はフリードをまっすぐに見ながら答える。


「それもそうか、、、そうなると、少しの辛抱ではすまないな。」


フリードは、俺が冗談や嘘を言っているのではないことがわかるとさっきよりも深刻そうな顔つきになる。


「やっぱり、この世界で何の能力も無いやつは珍しいのか?」


「そうだな、こっちでは十歳を迎える年に教会で能力を授かるんだ。」


異世界物の定番っぽいな。


「そこでもらえたスキルでそいつの将来がだいたい決まる。」


まぁ、スキルに関連した仕事に就いたほうが生き易いだろう。


「俺の場合は``戦の心得``って称号と``剣術スキル``だった。」


「ほう、剣術はなんとなく分かるが、戦の心得とは?」


称号だから何か効果が付与されるんだろうか。


「この称号は集団戦闘に関する知識と、戦争で役に立つ能力の詰め合わせだ。」


「なるほど、便利そうだが詰め合わせってのは?」


ざっくりしててわからん。


「そうだな、いろいろあってな、応急手当とか気配察知とか、数は多いがすべて初級程度だ。」


なんだそれは!!便利っていうかチートやないか!!


「その力を使って傭兵をやっていたのか」


「そういうことだ。おっと、話がずれたな。」


えっと、、、能力をもってないのは珍しいのか、だったな。


「まぁ、実際そこそこ起きることだ。要因もさまざまあるが、一番多いのはちゃんとした教会以外で祝福を受けることだな。」


ふむふむ、そこそこいるなら何とかなるのかもしれん。


「そいつらはその後スキルとかを手に入れることはできないのか?」


「無くはないが、本当に運がいいやつだけで、手に入れた原因すら分からないのがほとんどだ、期待はしないほうがいい。」


「能力が無いやつはどうやって生活しているんだ?」


俺は、一番気になっている且つ大事なことを聞く。


「ほとんどが工房とかに弟子入りして雑用だな。それか傭兵になってのたれ死ぬか、もしくは盗賊だな。」


そこまで差別されているわけではないのかもしれない。何とかやっていけるか?


「雑談はこの辺にしといて、そろそろ行くとするか。ジナード!!荷物まとめろ、出発だ!!」


「了解したっス!」


フリードの掛け声でジナードはすばやく行動しだす。


四十秒とまではいかないが、数分で準備を終えて俺たちは歩き出した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



言われていたとおりに一時間ほどで着いたその集落は、日差しがさしこみとても明るく、たくさんの人が動いているにもかかわらずなぜか暗い印象を覚えた。


目に付く人たちの表情は薄く淡い、感情が表に出ていないような顔だった。


そんななか、一番近くにいたひげを蓄えた初老の男がこちらに気づき近づいてくる。


その男は、いや、村の中にいる人たちには欠けているものがあった。


「おやおや、こんなところまでよくきたね、新入りかい? ようこそ、``ゴミ捨て場``へ。」


片目と片腕のない初老の男は感情のこもっていない笑顔でそう告げた。


読んでくださりありがとうございます。

感想やアドバイスお待ちしております!!

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次回更新は来週金曜日を予定しております。

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