第十話
「さて、そろそろしっかりと自己紹介をするか。」
俺は初めて食べたパン粥なるもので腹を満たし、久し振りの肉の味の余韻に浸っていた。
すると、自称騎士さんが飯に夢中になりすぎていてまったく進まなかった話題に戻してくれる。
「俺たちはツワイリーフ王国の王立騎士団第二部隊のメンバーだ。まぁ、俺が部隊長なんだが。」
「フリードさん、だったよな。聞きにくいんだが、見た感じあんまり騎士っぽく無いんだが、ほんとうに騎士なのか?」
「おいおい、確かに派手な甲冑なんかは着てねえがちゃんとした騎士様だぜ。俺じゃなかったら裁かれるかもしれないから、他のやつにはそんな聞き方するなよ?」
ふむふむ、やはり騎士っていえば、豪華な鎧を着ていて偉そうな感じだよな、異世界物の定番ってやつだ。
「でも仕方ないっスよ兄貴、俺たちは傭兵上がりで装備なんかも実用性重視っスから。」
「ほぉ、傭兵から騎士までなりあがったのか、それはすごいな。」
「いやいや、俺たちの国はもともと傭兵都市っスから当たり前っスよ、あれ、新国家誕生のこと知らないっスか?」
「ジナード、国が新しくできてから二年がたつんだぞ、知らないわけが無いだろう。」
まてまて、こっちに来てから情報なんて一切無かったんだ、分かるわけがないだろう。
「すまない、ここのあたりに来てから日が浅くてな、まったく何も知らないんだ。」
異世界からきたことは言った方がいいのか否か。他にも大勢来てる筈だし、いっても問題なかったかもしれない。
「え!?そーなんっスか、でもすごく話題になってたのに知らないなんて、どこの田舎の出身っスか?」
ちょいちょい失礼だな、見た目いかついし助けてもらった手前文句は言えないが。
「えっとだな、説明しづらいんだが、気がついたらこの森にいてだな、ここがどこかすらも分からないんだ。」
「それって、もしかして、、、あれじゃないっスか、兄貴。」
「かもしれんな、、、ちなみにユウ、今の神暦は何年だ?」
「あー、その神暦って言うのはこの世界のこよみのことか?すまんが知らん、初めて聞いた。」
「あぁ、確定だな、ユウ、もう一つ質問だ、お前はニホンジンか?」
ふむ、異世界人だってことは完全にばれたな、まぁ、問題は無いだろう。
「ああ、そうだ、他にも同郷の者に会ったりしたのか?」
「やっぱりっス、来訪者っスよ兄貴、どうするっスか?」
「どうするも何も、敵対する気が無いんだからこのまま人里までは連れてくべきだろう。」
敵対、か。俺よりも先に来たやつらが何かやらかしたのかね。
「俺一人ではこの森を抜けられそうに無いからそうしてもらいたいところだが。」
「そうだな、そうするしかないだろう。腕もそうなっちまったしな、、、」
よし、とりあえず人のいるところまでは連れて行ってくれそうだ。
「よろしく頼む、俺にはこの森を生きて抜け出す自信が無い。」
森の残りが後どれだけか知らないが、助けがあるに越したことは無い。
「でも、そんなに危険っスかね、この森。」
「まぁ、たいした魔獣もいないからな。」
はぁ!?こいつらなにいってるんだ!?あんなやばいのがいるのに、危険じゃないだと?
「いやいや、でっかい狼がいるじゃないか!!あれほど危険なものはないだろう!!この左腕だってそいつにやられたんだぞ!!」
俺は左腕を命いっぱい伸ばして力強く講義する。
「狼って言うとフォレストウルフのことか?大きいっていったって人ぐらいだろ?」
「その十倍はあったぞ、振り回されて森の上にまで跳んだんだからな?」
「それは、、、もしかしたらエンペラーかもしれんぞ。」
「え、やばいじゃないっスか!!そんなのが来てるんスか!?」
「まずいな、確認したいが、遭遇したら危険すぎる。ユウ、よく逃げられたな。」
「あ、あぁ、スピネルのおかげで、なんとか、、、」
「スピネルって誰っスか?」
「誰って言うか、動物だな、友達だったんだ。」
それから俺は、この世界に来てからのことを大まかに話した。
「それって、たぶんカーバンクルっスよ。めずらしいっスね。」
「ふむ、この森に流れ者が来はじめているのか?」
「いろいろ調査する必要があるっスね。」
「そうだな、今与えられている任務をさっさと終わらせて報告しに帰らないと。」
任務、、、そういえばフリード達は何しにこの森に来たんだろう。
「その任務ってのは何か聞いても大丈夫か?」
「あぁ、簡単に言えば伝令役だよ。森の中にある村にうちの国に来いってな。」
「それはまたなんで、この森に危険は無いんだろ?」
「魔獣の危険は低い、だが襲うのは何も魔獣だけじゃないだろ。」
なるほどな、野党や盗賊の類か。
「そーゆーこった、しかもその村は特別狙われやすいからな、うちの国王さんが保護してやるってわけだ。」
やさしい王様だこと。
「ぜひ俺も保護してもらいたいよ。」
「それならちょうどいいっスよ。」
ん?なんの話だ?
「うちの王様は来訪者の保護もしてるっス。それに、今のユウさんならどちらにしろ保護してもらえるっすよ。」
「どういうことだ?いくら何でもそんな無条件に保護してたらきりが無いだろう。」
手に職が無ければ保護してもらえるのか?ニートが増えるぞ。
「条件は決まってるっすよ。まあそれもこれも、明日村につけばわかるっスよ。」
「そうだな、明日の朝出発して正午過ぎにはつくだろう。今日は俺たちが交代で見張りをするからユウはゆっくり休むといい。」
いろいろ疑問も残っているが、体力が割りと限界だ。
しっかり休んで明日に備えるかな。
その後すぐに眠気に襲われた俺は、抗うことなく眠りについた。
相変わらず進みが遅くて申し訳ない。。。
次回更新は来週金曜日です。
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