問いへの答え
「………………どうして」
唇だけを動かして発された言葉。
カレン・オリヴィエは肩を竦めながら、身体中を氷が駆け巡るような寒気を感じていた。
それは、少女が目を見張りながら振り返ってもなお治まることはなく。
寒さに息も絶え絶えになりながら、頭からさーっと血の気が引いていくのを感じていた。
立っているのがやっとのような彼の状況に、エアルが悲鳴に近い叫び声を上げる。
「魔力切れ…………!?」
ーーーーーーーーカレンはふらりと前に倒れ込む。
危機一髪、駆け寄ってきたエアルの腕に支えられながら弱々しく眉を下げる。
「あなた、そのままでは死ぬわよ」
切羽詰まったようなエアルの声はどこか遠くで響いているような気さえした。
どこまでも白い光が満たす空間。
しかし光源もなければ、影もなく。
上下左右の感覚すらないこの場所をぼんやりと見つめることしか出来ないカレンには、しかしもう何があろうとも驚かないような、そんな確信があった。
しかし。
ーーーーーーーーなんの前兆もなく、左目に突き刺すような激痛が走る。
ぱたぱたと血が落ちていく。
「………………っは」
ちかちかと目の前が霞むような痛み。
ゆるゆると力なく挙げた手で左目を押さえると、エアルは素早く手を翳してその手に柔らかな白色の光を灯し、彼の左目に治癒を施すべく彼の前髪を掻き分けた。
ーーーーーーーーエアルの手が、止まる。
「…………………………あなた」
固まったように動きを止めた少女に、カレンは朦朧とした痛みの中で再度問い掛ける。
「………………なあ……ここは、どこなんだ…………? 世界は…………滅んでしまったのか………………? お前が、終わらせたのか………………?」
知りたかった。
彼女が、何者なのかを。
だが、帰ってきたその答えは彼の予想を超越したものだった。
「そうよ。あの世界は私が終わらせた」
カレンは、隻眼で少女の顔を見る。
その碧眼は、その視線は、彼の左目に向けられている。
「そして、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あなたにも、その力がある」