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「この世界に、終焉を」  作者: 空乃慧
第1章 紅く染まってしまった世界
3/58

少女との出会い

 

 ーーードサリ、と。



 舞い降りてきた…とは形容しがたい音とともに落下してきた少女の登場に、カレンは言葉を失った。

 むさくるしい男兵を想像していた彼にとって、小さく華奢な少女を目にした衝撃は冷静さを欠かせるにはじゅうぶんすぎるほどだった。


 かなりの高さから落下してきたにもかかわらず、素早く体勢を立て直した少女。しかし、すぐにぐらりと体が傾き、また倒れ伏してしまう。


「お、おい、大丈夫か…っ」

 

 とっさに駆け寄ってしまったカレン。彼女が武器を所持していないことに攻撃する意思はないと判断し、剣を鞘に収めて素早く様子を確認する。

 彼女の脚を覆うロングブーツに目を向けると、金属質のそれは細く煙を上げて火花を散らしていた。


 ーー倒れた原因は、これか。



 しかし。



「う、わっ……!」


 少女に、外套の襟を掴まれ。

 思わぬ行為に、油断していたカレンは体勢を崩してしまう。


「……私を、運びなさい」


 至近距離まで顔を近づけられ、告げられた言葉。その声は微かに幼さを残して可憐であり、内容と声の不釣り合いさにカレンの思考が一瞬停止する。


「ちょっと、意味が…「早く……っっ!!!」


 鬼気迫る表情で言葉を遮られ、とっさの判断で彼は少女を担ぎ上げる。細く見えるカレンだが、長年の傭兵業で培った筋力は馬鹿にできないところがある。少女もまた、驚くほどに軽かった。


「走って!!!」


 担がれるまま、カレンに指示する少女。訳もわからず走り出した彼だったが、直後に激しく後悔することになった。



 

「見つけたぞ!!!」


 複数の足音が背後に迫り、振り返ったカレンはさらに目を見開く。



「な、んで、お前……





 王国騎士団なんかに追われてるんだよ!?」




「追え!!」


 名誉ある王国騎士団の鎧を身につけた10名ほどが、カレンと少女を追って来る。重量ある鎧や兜、武器を身につけた騎士たちと違い、彼の軽装が功を奏した。そのおかげで距離はなかなか縮まらないが。


 追っ手もただ走っているばかりではない。


「………っ!!」


 耳によって察知した銃弾の訪れに間一髪のところで攻撃を避ける。


 なおも担がれたままの少女にカレンは疑問が募るばかりだ。

 見たところ、戦場に不似合いな外見をしている。鮮やかな長い紫髪を頭の高い位置で2つに結わえ、それを揺らしたまま何も言わない少女。



 ーこの少女が、何をしたというのか。



 しつこく追い続けて来る騎士たちに、少女はようやく口を開いた。それは、カレンへの今置かれている状況の説明などではなく。


「レザリア!!!」


 何かの名前と思われる単語だけであった。





 すると。



 彼女が伸ばした右手の先に紫に光る魔法陣が浮かび上がり、その中から巨大なライフル銃が抜き出されていく。と同時に、カレンの肩にかかる重量が今までと比べ物にならないほど膨れ上がり、思わずぐらりと体が揺らいでしまう。


 しかし、彼だってこんなところで意味もわからず殺されたくはない。なんとか気合いで転倒を回避し、走り続ける。



 と、少女が信じられない行動に出た。



 カレンに担がれた状態のまま、首を後ろへ向けて銃を乱射し始めたのである。

 もちろん、銃という武器を所持していたからには攻撃には銃弾を発射する行為しか考えられないのだが。


 いかんせん、担がれた状態である。


 耳元で超重量のライフル銃が唸りを上げて敵に銃弾を発射する様は、ただただ恐ろしいものだ。


「あっ、ぶないだろ…っ! 気をつけろっっ!」


「うるさい! じゅうぶん気をつけているわ! 死にたくなかったら、口よりも足を動かしなさい!!」


 どこかで聞き覚えのあるようなセリフを言われ、その最中も少女は攻撃をやめない。走り抜ける者の肩の上という不安定な場所からの攻撃にもかかわらず、その正確さは驚くほどだ。



 やがて、追って来る足音が聞こえなくなっても、カレンはなりふり構わず走り続けた。

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