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84話 『もしもの時の為に』

更新が遅れてしまい申し訳ないです……

 例のごとく、機械音声が頭の中で再生された。

 いやいや、異世界コマンドαとか、何カッコつけちゃってんのって話よ。でもまぁ、これから他のコマンドも判明するかもしれないし、今回は勘だったけど、もしかしたらどこかにコマンドが書いてある書物があるかも……! この世界でデバッグするためには、そう言った要素は必要だろうし。処理するのを忘れていればの話だけど。

 と、この話は異世界の片隅に置いといて、早速魔法の名前から決めるとしよう。そういえばこの作った魔法ってステータスに表示されてなかったような。仕様かな?


「まずは……自分や他の人の身をあらゆる魔法から守るための手段として一つ。名称はリフレクションミラー、属性は……闇属性。下位魔法。MP消費量は三十五くらいが丁度いいかな……効果は、最高十枚まで、魔法を弾き返す鏡を作り出す。それと、跳ね返す枚数によって威力が上昇する。威力は魔法によるものだから、定められない」


≪魔法の創生が完了しました≫


 高い効果音とともに女性の声の機械音声が流れた。朝創った時ってこんな音声流れたっけかな。

 まずは一つ。この魔法はあくまで危ないと思った時の対策だから極力使わないようにしないと。私が一人の時は使うと思うけど。

 次に移ろう。


「マジッククリエイト」


 機械音声が流れた。


「名前はショック。光属性の下位魔法で、消費MPは十三.効果は、私から半径三メートル以内にいる生物を確定気絶させる。威力はなし」


≪魔法の創生が完了しました≫


 これでいいかな。少し私に都合の良すぎる魔法だけど、そういうものですし。

 さて、次は……


「マジッククリエイト」


 機械音声が流れた。

 名前全部覚えられるかな。段々心配になってきた。私記憶力皆無だからなぁ。


「魔法の名前は、シャットアウト。風属性の……中位魔法。消費MPは十。効果は、敵との距離に応じ、範囲風壁を作り、外部からの干渉を拒否する。威力は、風壁に当たったときのみ小程度のダメージが発生する」


≪……魔法の創生が完了しました≫


 これくらいでいいかな。一応創った魔法も融合できるみたいだから、私だけ戦略の幅は増えそうだ。

そういえば、この世界はお兄ちゃんを更生させるためにあるのか、それともただただ楽しむためにあるのか、存在理由がとうとう分からなくなってきた。お兄ちゃんがクズだったのは知ってたけど、何で今更そのプロジェクトを持ってきたのかが謎だ。私もうすぐ期末試験だし、夏休みだってあと二週間だったのに……

私はそろそろ出ようと思い、立ち上がった。

食糧庫にいると、様々な農作物のにおいが混じって少しずつ気持ち悪くなってくる。それに、とにかくここは寒い。最近肌寒くなってきていたのは知っていたけれど、この食糧庫は外よりも寒い。隙間風は入ってくるし、今日は妙に寒気するし……本当に憑いてたりして?

私はそんなことを考えながら外に出た。ここは太陽が出てるから暖かい。

南の道に向かい、街のある方角を見てみると、街の上には、墨絵で描かれたような黒い雲があった。

あの下では、今スリルさんやイリヤさんが……パン屋の人や、あのカップルの二人、あと、街の人は大丈夫なのかな……前の黒化した人みたいに、みんな気が狂って、そして苦しんでいるのではないだろうか……

 心配という言葉だけが、心の中のバケツに積もっていって、私まで心が重たくなってくる。本当は助けに行きたい。偽善者だと思われても、助けてあげたい。でも、私にはやるべきことがある。

 これが葛藤なんだ。前世の私はこの葛藤を感じたことはこんな心情にならなかった。今を創るまで私がどれだけ頑張っても味わえなかった人間心理……いやだめだ。もうあの時には戻らないと決めたんだ。これからだって、きっと戻る機会はない。うん、一先ず食糧だけ地下に運ぼう。

 あ、そういやお昼食べたっけ? たまに忘れちゃうんだよね。風呂で「あれ? さっき髪洗ったっけ?」みたいな感じにね。(実体験)

 日常生活を意識しながら生きていない証拠だよまったく。今の生活ができているのも誰かのおかげだと思って感謝しながら生きないといずれ何もかも忘れちゃうね。

 私は村長の家に戻り、廊下を歩いて村長の家の食糧庫に入った。そして、食糧庫で作る料理を決め、必要な分だけ食糧をポーチの中に入れた。四次元ポーチとか現実に遭ったら絶対買いたい。取り出したいもの出せるし、これといってデメリットが無い。

 そういえば、村長はどこに行ったんだろう。さっきここに来た時は足音がなければ物音一つしなかったし。家の裏にでも回ってたのかな。大事なものっていうくらいだから、地中に隠したとかありえない話ではないし。それか、誰も分かるはずのない全く別の場所に隠したのか。

 ……私が気にするようなことじゃないかな。

 食糧を詰め終わり、暖炉の上のボタン火を消して暖炉を潜り、梯を少し降りて横にあるスイッチで火を点けた。降りる度に、金属音が長細い空間に鳴り響く。下についても、また長く狭い通路が続く。とはいえ、終着点の位置が分かっているから不思議と長いと感じることはない。それともこの長さに慣れてしまっているのか……慣れたところで得が一切見当たらない。

 そうそう、この謎の二手に分かれた通路のことも謎のままだった。奥に入ってみたい気はするけど気が引ける。まあ、後で誰かに訊けばいい話か……

 私は右の通路に行き、扉を開けた。すると、前方の少し離れた所に見覚えのある格好をした人が立っていた。あの茶色いズボンに、緑の上着に白いベスト、村長だ。


「村長さーん」


 大き目な声で呼びかけたものの、村長らしき人は反応を示さず、少し急いだ様子で小走りして自宅へと向かっていった。

 何か急用でもできたのだろうか。肘が曲がっていたし、大切なものを早めに地下の家に持っていきたいから急いでいるのかも。でも抱えるほど大きいものを持って、老人が梯を降りれるものなのかな。意外と剛腕だったり……? いやないでしょ!

 と、悲しい一人ボケツッコミを噛まして私は家の中に入った。リビングには誰もおらず、家の中は静謐な静謐な空間だった。

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