82話 『作戦会議②』
セナさんがこれから言うことが分かる気がする。
「今の話を聞くと、近接攻撃が強い二人がいるこのパーティは圧倒的に不利だから、その穴埋めをどうするかの話になるな」
お兄ちゃんがセナさんに向かってそう言った。私が思っていたことと殆ど同じ内容だ。
私はコップの水を半分くらいまで飲み、セナさんに話しかけた。
「私とおにいちゃんはさっき言った通り、魔法で攻撃するとして、メルちゃんとカグラさんが無力化しない方法……つまり、遠距離攻撃の手段を考えなきゃいけないね」
セナさんは店頭を繰り返して、「そうそう」と言った。私が提案してなんだけど、メルちゃんの魔攻は恐らく十以下だと思うし、カグラさんはそもそも刀しか持っていなくて遠距離の手段を持たない。あの有名なゲームみたいに、HPが満タンの時、剣(刀)からビームでも出せれば手段を考えずに済んだのに……!
と、小学生並みの考えに至る。
「わっちができることは、敵の気を引かせるくらいだな!」
カグラさんが自信満々に胸をたたいて言った。
「長期戦闘になるから、それは危険だと思うわ」
セナさんがカグラさんに向かってそう言うと、カグラさんは頬杖をついて、頬を膨らませて口を尖らせた。
「じゃあわっちは何ができるんだ」
「貴方を含めてメルには、二人が魔法を唱えている時の、魔力回復の補助、及び、敵が接近したときの対処を行ってもらいたい。メルはその鉄球杖を振り回すだけじゃ危ないから、開幕、またその後もサイレントと暗殺のスキルを屈指して敵に気づかれないまま攻撃を加えて引き離す。カグラは、魔力瓶を割って二人に魔力回復薬を浴びせて回復させる。対処にミスが出て攻撃を止むを得ないときはしてもいいけど、ダモンを牽制する程度で、あまり近づかず、また追いかけすぎないこと。基本的に皆で固まってダモンを倒しましょう。あと、さっき言ったけど、なつめさんとカナタは状態異常の魔法をなるべく使うこと。私もこの姿できる限り援護するわ」
セナさんが話を終え、一息ついた。そして、メルちゃんもカグラさんもお兄ちゃんも私も、皆頷いた。
セナさんの今までの対応に比べて、ここまで正確な意見が出たことはない。この人本当は凄いゲーマーなのでは? デバッガーやってるくらいだから、このゲームも相当やってるとは思うのだけれど……
「これでこの話はおしまいにしていい? 何か意見があれば聞きたいけど、なければ次の問題に行くわよ」
セナさんが皆の目を見た。
誰も意見を言わなかったが、私は手を挙げた。
「はい、なつめさん」
セナさんはキョトンとして、私の顔を見た。
「ダモンが魔法を唱えてきたり、遠距離型の強攻撃を仕掛けてきた場合にはどうすれば?」
「そうね……じゃあ私は攻撃だけではなく、防御にも徹することにする。防げない魔法やスキルの時は、全力で避けてもらうけど」
皆同意した。私も頷いて同意した。
「で、今からそのスキルや魔法に関しての話をしようと思ってたの」
セナさんは自分の胸に小さな手を当てた。
「まずは魔法についてだけど、魔法は対処ができないものはないから大丈夫。そうやったから」
設定上の安心面はここで言わなくてもいいと思うんだけど。
「勝手にタレント能力が備わって、タレントに合わせてスキルが作られるから、私にもスキルについてはよく分からない。でも、さっきのなつめさんの話を信じるのなら、スキルは防ぐ手段があるかどうか分からない。そもそも、スキルが具現化してるものか、もしくは目視不可のものかで対処の方法は変わるし」
セナさんは腕を組み耳をパタパタ前後に動かした。
スキルには目に見えないものも存在するんだ……お兄ちゃんのマイマインドエフェクトが目に見えるスキルで、私のライフアップが目に見えないスキルの例えって感じかな……そういやお兄ちゃんのスキルここり そういえばライフアップ、いつ覚えたかもわからないし、使ったこともない。ミノタウロスとの戦闘で一回使っておけばよかった。
「目視可能なものは、魔法で防ぐことができるものもある。カナタのマイ何とかも魔法で防げると思う。目視不可なものは、例を挙げるとすれば空気かな。そういうのは、浄化のスキルがないと、魔法では対処ができない」
「じゃあ、スリルさんなら――」
「彼は今手が離せない状況にあると思う」
セナさんに口を止められた。
「何でですか……?」
「ダモンが最初に標的にしたのがあの街なら、今は黒化した人間でウヨウヨしてると思う。薄黒い雲が街の上を覆っていたし、最近街には嫌な空気が漂っていたからね」
「そうですか……」
私は下を向いてザトールの街の事を思い出した。スリルさんは浄化系統のタレントを持っているからダモンの影響は受けないはず。でも、もしスリルさんやイリアさんが二人だけで荒れた街を戻そうとしているなら、私たちはこんなところで一週間も悠長に作戦会議なんてしててもいいのだろうか。その間にスリルさんやイリアさんが数で押されてしまって負けたら……
「確実に勝たなければいけない。だからこそ、この一週間を有効に活用して綿密な計画を立てなきゃいけないのよ。今いるのはこの五人だけで、街にいる元勇者の二人には頼ることができない。だから、私たちは、譬え相手が強敵であろうと、立ち向かわねばならないの」
私は息をのんだ。
改めて、強敵を相手にするのだと認識した。ここで私たちが戦わなければ、この大陸は完全に支配され荒廃する。でも、私たちが負けたら、ここで生命は途絶えて、全てが無駄になってしまう。恐ろしい。正直言うと、今すぐここから逃げ出したい気分だ。
――心を無にしないと、相手には敵わない。
マミさんとお兄ちゃんが戦闘しているところを見た時、マミさんはこんなことを言っていた。お兄ちゃんのスキルは、『心が無い敵』には通じない、と。
何故か、その言葉だけがまだ頭の中に残っている。
次話もよろしくお願いいたします!




