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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1章 【引きニートと妹の異世界転生】
9/232

4話 『パンと魔法使い!』

※ここ兄視点にしておきたかったので、そうしてます。

 (一方……という感じにしたかったんだろうな。もう絶対しないです、こんなこと)


あ、改稿しました!

読んでてキツイ。

2019年11月01日(金)

 それにしても、この町は広いな。

 こんな広い町でで宿が探せるのか? 

 ……ちょっと心配になってきたぞ。


 訊くにしても、人とあまり話したくないしなぁ……。


 こんな時、なつめかあのクソウサギでもいれば、何とかなったかもしれないんだが……。

 これも自分のせいか。


 そういえば、俺らがこの世界にいる間、現実の世界の時間はどうなっているのか。

 もし時間が進んでいたら……母さん、俺たちがいないことに驚いてショック死してしまうんじゃないか……?


 ……まあ、今は宿だ。


 ゲームであれば、ベッドのマークと【INN】という文字が書いてある看板があると思ったんだが……。


 それらしいものはない。

 武器屋と防具屋とか、飲食店らしい建物は見つけたが……肝心の宿はない。


 ……そういや、お昼を食べてなかった。

 腹が減っていると思考が回らない。


 なつめから1500ギフもらったし、何か食べるとするか。




 歩き回ってよさげな店を見つけたが……。

 どうも高そうな店だ。

 何より、外装が綺麗で、ガラス越しに見える店内の上品さがそれを物語っている。


「高そうだな……」


 メニューが貼ってある看板が扉の前にあるみたいだ。


「えー……きゅーぽい……のビーフ……? 3700ギフ……!? たっか!」


 いや、高すぎかよ!

 どこの高級牛だよ!


 もっと安い所はないのか……?


 っと、お? あそこはパン屋か?

 パン生地の甘い香りが鼻からすっと入ってくる。


 綺麗な店の反対側の店だ。

 日本では、パンは基本的に高価なものはないはず……。

 試しに行ってみるか。


 ――タラララーン。


 綺麗な音が鳴った。

 占い師の館のドアについている木琴の飾りと同じものだが、音は違うみたいだ。


 見た目通り、結構小さな店だった。

 パンの甘い香りが、一層強くなった。


 店内の棚には、様々な種類のパンが入った籠が置いてあった。

 店内はそれほど明るくない。

 質素な感じではあるが、この雰囲気は嫌いじゃない。


「あのー、失礼かもですけど、安いパンありませんか? お、お金あんまり持ってなくて~……」


 勇気をを振り絞って、少し声を張った。

 すると、奥からチェック柄のエプロンをつけた男性の店員が出てきた。


「あ、お客さんですか?」

「はい……」

「そうですね……安いパン……基本的にどれも安いものですが、私のオススメはマロンクリームパンです。甘くて甘い自信作ですよ」


 と、男性店員はマロンクリームパンと書いてあるカゴを差し出す。


 おぉ! 俺の好きなマロンが入ってるパンとか!?

 めっちゃ美味(うま)そう! 


「じゃ、じゃあ、それ2つで」

「あ、はい。では200ギフ頂きますね」


 爽やかな笑顔でそう答えた。


 俺は、さっと銀貨を1枚渡し、お釣りの銅貨3枚をもらってその店を後にした。


 さて……食べてみるか!

 どんな味がするのか楽しみだ。

 とはいえ、人通りが多いな……。

 立って食べるよりも座って食べる方がいいかもしれない。


 そう思い、なるべく目立たないため、少し縮こまってベンチに座った。


「むぐむぐ……ん、うま!」


 これは……! うまい!

 こんなものが1つ100ギフで食べれるなんて……素晴らしいな!


 ……ただ、何処かからか視線を感じるな。

 誰だ……?


 キョロキョロとあたりを見回してみたが、視線の主らしいものはどこにもいない。


 その視線を感じつつ、2つ目のクリームパンを食べた。

 と、食べ終わった途端に、妙な視線を感じなくなった。

 一体何だったのだろうか?

 

 それにしても、この町宿屋なんてなくねぇか?

 どうしろってんだ?


 ……待てよ、この大陸のシステムは確か『自立共存』――

 自立しろってことか? ……だったら共存って何なんだ?


 そもそも、自立の定義ってなんだよ。

 まさか、自分の家を持たなければ寝床を得られない……ってことか。(ちょっとちがう)


 ……てか、この大陸にある町が全部こんな広さだったら酷いぞ。 

 この大陸にまたはいくつあるかは分からないが……。


 食べ終わった後、再び町を歩いた。


 外には必要な時以外出ないだろうし、今、武器や防具を買う必要性は皆無だろう。

 それに、結構高いし……。

 パジャマだけど。


 そんなこんな、これからのことを考えていると、


「やめてちょうだい! こっちにこないで!」


 と、遠くから女性の声が聞こえた。

 周りの人は、その声に驚いて騒めいている。


 今のは女の悲鳴!? どこだ!? どこで発したんだ!?

 俺の野次馬魂が、ここぞとばかりに感化される。


 くそっ……町が広すぎて探しづらい……。


 元いた広場から、声のした西の道に向かい、途中の細い路地裏を通り抜けた。


 ……おっと、あそこか!


 大体、4年ぶりに走った。

 筋力は落ちていたし、体力もなくてすぐに息切れした。


「大丈夫ですか!?」


 ただ傍観しようとしただけだったが、思わずそんなことを口にしてしまった。


 ……あれ?

 大きい広場に出たのはいいが……。


 声の主、おばさんじゃないか!

 そのおばさんの周りに、ガラの悪そうな中年男性が6、7人ほどいるだけじゃないか!


 中年酔っ払いに絡まれただけの、ただのおばさんじゃないか!


 なんで俺は来てしまったんだ……。

 後戻りできないのに、酷く後悔してる。


 酔っ払いの1人が俺に気づき、鋭い目つきで睨みつけてきた。

 まずい、非常にまずい。


 タチの悪いやつらに絡まれてしまった。

 ……絡んだの俺からだけど……。


「おぉーい、おめぇさぁん。俺たちに喧嘩売ろうってんのかい? いい度胸じゃねぇか。みんな、やっちまえ!」


 赤い服を着た酔っ払いが、俺の方に向かってきた。


「「うぃぃぃぃぃ~」」


 酔っ払い全員がその掛け声に反応し、赤い服をきた酔っ払いに率いられ、全員がこちらにふらふらと向かってくる。


 やばい! 逃げるか!?

 でも逃げたらおばさんが……いや、この町での俺の評価が!

 武器はないし、素手で殴りに行くしか――


「やめてさしあげなさい!」


 背後から若い女の子の声が聞こえた。


「あぁん? 誰だてめぇは……その声は……女か?」

「罪なき人を襲いかかって何が楽しいのです? 酔っ払い(クズ)め!」


 と、声の主は、フードの中から指をさした。

 身長が俺と同じくらいだが、声は少し幼い。

 それに、ローブのようなものを着ているみたいだ。


「ク、クズだとぉ!? ……否定はしねぇがよぉ……てか、始めに喧嘩売ってきたのこいつなんだぞぉ?」


 酔っ払い口調で、酒瓶片手に俺に矛先を向けた。

 喧嘩、売ったっけ?


「……確かに」


 フードを被った女性は、手をおろして腕を組んだ。


「だ、だけど、襲い掛かろうとしてる事は事実です! さぁ、神に従いあなたたちを成敗いたします!」


 無理やり自分の論を通したな……。


「ふへへ、喧嘩を売った上に、火に酒を注ぐとは……ふ」


 うまいこと言ったつもりか?


「なかなか面白れぇじゃねぇか。よぉーし! 野郎どもやっちまうぞ!」

「「うぃぃぃぃぃ~」」


 一度立ち止まったが、またふらふらとこちらに向かってくる。


「そこのクリームパン食べてた人。私より後ろに下がっていただけますか?」


 と、女性がフードの下で口角を上げた。

 え……一体何を?

 てか、なんでクリームパンのことを……?


 そのフードを被った女性は、ぶつぶつと何かを呟き始めた。

 魔法の詠唱か……?


「強化完了です! いきますよー!」


 フードを被った女性は、背負ってる変な形をした袋を持ち、


「えいっ!」


 と、長い袋を何もない所で振った。


 ん……? 物理攻撃……?

 でも、何も――


 と思ったその瞬間、地面が揺れ、大きな竜巻ができた。

 その竜巻で、酔っ払いたちが吹き飛ばされていった。


 ……おばさん、この竜巻の中でも顔色を一切変えていない……?

 顔のしわが少し揺れているくらいだって!?


 おばさん強っ……!

 いや? 違うな……。

 あのおばさんを中心に竜巻を起こしたのか……!


 一体何なんだ、この女は……!


「ふぅ、さて? これでもまだやる気です? もしくは酔いが覚めて、少しはやる気無くなりました?」


 袋を背負い直し、手を腰にあてながらそう言った。


「ば、ばけもんだぁぁぁ! にげろぉぉぉ!」


 赤い服を着た酔っ払いが、周りの6人にそう言った。


『『うぃぃぃぃぃ~うぅ~』』


 酔っ払い達は、涙ながらに消えて行った。


「あ、あのー……」


 俺は、恐る恐るその女性に話をかけた。


「……あなた……」


 フードを被った女性が俺の方に近づいてくる。

 な、なんだ?


「さっき、あのパン屋のクリームパンを美味しそうに食べてましたよね?」


 まさか、食べていた時の視線って……この人の!?


「……かった……」


 なんと言っているのか、聞き取りづらかった。


「へ?」

「食べたかったです、あのパン! ねぇ、私にも買ってよ! ねぇ! 助けてあげたよね!? ずっと見てましたよ。気づきませんでした? 視線。あなたがあのパンを食べるところを……だからキラキラな視線を送っていたというのに、あなたは2個目を口にしてしまった……。話しかけるのはちょっと嫌だったけど、気づいてくれればよかったのに! 助けたお礼に買ってください!」


 よく分からないが……だいぶ怒っているようだ。

 それにしても、あの視線の主はこの人だったか。

 てかお金持ってないのか……? あれ1個100ギフだぞ……?


 いや、待てよ。

 もしや、これが目的で俺を助けたのでは……? 


 ……なるほど。

 もう、逃げることはできなさそうだ。


「はぁ……わかったよ……」

「やった……!」


 フードを被った女性は、嬉しそうにはしゃいだ。

 100ギフのパンだけの為に俺とおばさんを助けるとは……。


「じゃあ早速行きましょう!」


 と、俺のパジャマを掴み、無理やり連れて行こうとした。


「あ、ちょっと待ってくれ。あそこで固まってるおばさん、起こしに行かないと」

「わかりました。来るまで待っていますよ。逃げたら承知しませんからね」


 女性はフードの下でニコニコ笑っている。

 なんか怖い。


 といっても、だいぶ変な奴に絡まれてしまった……。

 面倒くさそうだし、パン買ってあげたら、どっかで食ってる隙に逃げるか。


「あのー、おばさん?」


 声をかけると、おばさんは意識が戻ったらしく、一瞬ふらついた。


「あぁ……あの子、あんたのお連れさんかい……?」


 おばさんはキョトンとして、目を丸くしていた。


「いやぁ、あの人は……」

「あんた、凄い仲間さんがいるんだね……これをもってお行き」


 と、(ふところ)から差し出したのは、見覚えのある3枚の金貨。


 あれ、これって……3000ギフ!? こんなにもらっちゃっていいのか!?

 もしかして、これが依頼的なものなのか!?(ちがう)


「助けてもらったお礼だよ」


 優しい口調でそう言い、微笑んだ。

 そして俺の右手を掴み、金貨3枚を握らせた。


「あの子のために使っておやり」

「……あ、ありがとうございます」


 そして、おばさんはどこかに去って行った。


「さて行きましょう! 早く、早く!」


 フードの女性がいつの間にか傍にいた。

 そしてまた、俺のパジャマを手で引っ張る。


 すごい力だ。

 ズルズルと引っ張られてる。


 背は同じくらいだし、大人ぶってる感じはするが……。

 声は依然幼いな。

 態度も子どもよりだし。


 なつめも、小さい頃はこのくらい可愛げがあったのになぁ……。

 今はちょっと怖い。

 成長……か。


 今まで通った道を逆戻りして、あの広場にやってきた。


「あ、待ってください。この店――」


 フードの女性が立ち止まったのは、あのお洒落な店だった。


「おい、ここは高」

「――キューポイのビーフ! 私これ大好きなんです! 食べたい! その後にパンを食べたいです!」


 おそらくフードの中では目を輝かせている事だろう。


 まぁ、お礼にもらったお金と俺の持ち金、合わせて足りるし……いいとするか。

 こうなったら仕方ないしな……。


「わかった」

「ふふっ、ありがとうございます」


 女性は微笑んだ。

 それにしても、このフードの中はどんな顔をしているんだ?

 適当な理由をつけてとってもらうことにしよう。


「あ、あぁ、そうだ、さっきからずっと思ってたんだが……そのフードとってくれないか? 話しづらいし、周りの人の目が気になる」


 理由を適当に見繕ったつもりだが、視線は結構気になってた。


「わかりました!」


 そう言い、フードをとり、ローブを宙に浮かせるように投げ捨てた。

 中からはツインテールの女の子が出てきた。


 ゲームで見るような魔法使いの服だ。

 イリアさんに少し似ている格好をしている。

 もしや、星占い師か?


 しかし、背が高いな……。

 俺と同じって、大体160後半くらいじゃ――


「よいしょっと……」


 そのツインテールの女の子はブーツを脱いだ。

 そして、腰に付けていたポーチから靴を取り出し、それを履いた。

 

 底上げブーツ!?

 まさか……15cm以上も盛ってたっていうのか!?


 今だと……なつめよりほんの少し小さいくらいだ……。

 なんでそんなに盛ってたんだ……?


「さて、中に入りましょう!」


 まぁ、今は気にすることじゃないか……。


「あ、そういえば名前を聞いてなかった」


 ふと思い出した。


「あっと……そうでしたね。一応教えておいた方がいいですよね」


 そして、その子はその場で振り向く。


「私は旅する魔法使い――メルです!」

☆ちょっと番外☆(あとがきです)(あとから『本文に入れとけや』って思ったやつです)


「そういえばあなたのお名前は?」


 メルが聞いてきた。


「俺は紫式 哉太だ」

「なんか職につけなさそうな名前」


的確にあててくれやがるので、俺は黙り込む。


(……)


「図星……ですか?」


そうだ、図星だ。何も言い返しようもないし。


「この大陸で生きていけるんですか?」


俺を真顔で見上げ、見つめながら言う。


「妹にまかせる」


当然のようにそう答えた。


「妹もいるんですか……かわいそうに……」


両手を胸の前で合わせ、どこかに祈るように空を見る。


「不甲斐ない兄で悪かったな」


これでも4年間ニートやってたからな。


「そうは言ってないんですけど……」


ため息をつき、そう話した。


「あと、お願いだから敬語やめてくれないか?何か慣れない」


そうそう、なんか話しづらい原因はこれだった。


「うーん、わかっ……た。」

慣れていなさそうな感じだ。


「話しづらそうだな」

「仕方ないじゃないの! あんまりこの話し方慣れてないんだから!」

俺の服をガシッと掴み前後に勢い良く振る。


「ちょ、やめてくれ! ってか何で慣れてないんだ!?」

「そぉ、それはぁ……な、なんでも!」


俺の服をパッと離したため俺は倒れ込んだ。

そして、モジモジして、何か隠している素振りを見せている。


「そうか……」


 一体どんな理由があるのだろうかな……。

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