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81話 『作戦会議①』

一人一人の長い考察、会話……それが作戦会議の醍醐味です。

 家に着くと、既にリビングにはお兄ちゃんとメルちゃんが座っていた。二人は椅子に座って本を読んでいた。


「セナさんも出て来ていいよ。今回は本当に皆で作戦を放し合おう」


 私のポーチが動いて、中からセナさんが顔を出した。セナさんはポーチから飛び出て、机の上に座った。


「今回ばかりは私が手を貸さないわけにはいかないからね。強制的にステータスを表示させてダモンのつよさ、戦闘手段を探ることも重要だし」


 カグラさんはお兄ちゃんの隣に座り、私はメルちゃんの隣に座った。

「それではこれより、ダモン討伐作戦会議を始めます」


 セナさんが正座をして言った。皆は頷き、真剣な眼差しでセナさんを見つめた。


「まず、ダモンのタレントだけど、おそらく体に触れた相手に状態異常を付与するものだと思う。ここでは、『汚染』と呼んでおきます。私は昨日、ダモンにやられました。この耳の付け根の縫い口が証拠です」


 私は昨日のことを思い出した。でも、昨日のセナさんは状態異常になんてかかっていなかったような……


「なつめさんが思っている通り、私は何故奴に掴まれたのに状態異常の効果がなかったのか……」


 うわわ、いつの間にか心を見透かされていた! だから占い師ってあんまり好きじゃないんだよね! って、もしかしたら朝セナさんと話しているときに思っていたことも見透かされていたとか……? だったらあの件バレてるんじゃない!?


「なつめさんどうかしたの? そんなに焦って」

「いやそりゃ焦るでしょ。心の中で思っていることを見透かされたんだから」

「ごめんなさいね。今日初めて使ったんだけど、やっぱりこのスキルは嫌に思われるのね。もう発動してないから大丈夫よ」


 セナさんはそう言い、私に頭を下げた。そしてすぐ、話を再び始めた。


「奴はおそらく、触れたものではなく、『触れているものに対して』状態異常の効果をランダムか、もしくは自由に選択して効果をかけられる。何が厄介かって、間合いを詰められた時に対処がしづらくなるということ。言いたいこと、わかる?」


 セナさんは私の顔を見て訊いて来た。皆の視線がセナさんから私に切り替わった。


「間合いを詰めさせないで、遠距離攻撃だけで戦う……と?」

「ほとんど正解。それ以外の正解は無いわ。一つ付け加えるとしたら、如何にダモンに状態異常をかけられるかね」


 セナさんは腕を組み、正座をやめて胡坐をかいた。


「魔法には一部に状態異常を付ける魔法があるでしょう? 火だったら燃やすとか、氷だったら足元を凍らせる、または体の部位を凍らせるだとかね。簡単に言うと、目には目を歯には歯を、状態異常には状態異常で対処ってことね」


 セナさんは簡単に言うが、実際に上手くいくかなんて分からない。もし、上手くいかなかったときのことを考えると、自分を攻め立ててしまう気がしてならない。


「うまくいくんですか……?」

「そんなのやる前から言ってたらいつの間にか一週間なんて終わっちゃうわよ。やってもいないことをやらないで後悔するより、やった方が次の戦略を考えやすくて得でしょう?」


 確かに、セナさんの言う通りだ。やる前からやるかやらないかなんて言ってたらいつの間にか日が暮れてこの作戦会議が無意味なものへと変わってしまう。だけど、私はとても怖い。セナさんの予知といい、魔物の暴走、人間の暴走と、不穏な事しか起きてない現状で、何が発生するかも分からないからだ。


「分かったよ。まずはなんでもやることから始めよう。人生はセーブ、ロードができないからこそ、実験をしなきゃいけないから」

「そうそう。じゃあ、一つは遠距離からの攻撃を絶対にすること。では次だけど、ダモンの体力や魔力や物攻などのステータスについて。今まで見てきた黒くなった奴らが皆ダモンの手によって超強化されたものだとすると、その強化を施した主はもっと凶悪だと思う」


 マミさんがモヤモヤを消した人間、私たちを突然襲ってきたゴブリン。そして、私が倒したあのミノタウロス。皆、魔物として、強化されていた。人間が何故黒化したかの理由が定かでないが、マミさんが言ってた心の浸食……それに関りがあるのだろう。魔物は心も完全な魔物として強大に。人間は人間の心の闇を魔化させて魔物そのものに。となると、ダモンは心を操るスキルを持つ可能性が考えられる。


「セナさん。ダモンのステータスは分からないんだけど、スキルについて、一つだけ思うことがある」


 セナさんはまた、私の目を見た。


「言ってみて」

「ダモンは魔物や人間の心に効果のあるスキルを使っていると思う」

「その根拠は?」

「あの、職失ってタレントの人がいたでしょ? あの人、相当滅入ってたし、心もズタズタで、そこを狙われたんじゃないかなって思うの。街であの人が黒化している時、異様なことを叫びながら町の人に手を出そうとしてた」

「なるほど……とりあえず、それは一意見として受け取っておくわ。今はステータスの問題よ。おそらく、レベルは七十越え、ステータスは魔物換算すると、凡そ体力が七千から八千の間で、魔力が三千から四千の間、ただ、物魔攻、物魔防に関しては魔物によるからまだ決められないし、素早さだって分からない。だから、ステータスだけは戦闘中の私に任せてもらいたい」


 セナさんは自分の胸をどんと叩き一回頷いた。

 職失の男性をステータス表示したときもそうだった。強制ステータス表示なんてセナさんにしかできることではないだろう。その能力もこの世界で不慮の事態が起きた時の対処の手段だろう。


「これでステータスについての話は終わり。じゃあ次は……」


 セナさんは目を閉じて俯いた。そして、数秒した後に、一度深呼吸をして、今度は正面を向き目を開いた。


「各々の立ち回りよ」

次話もよろしくお願いいたします!

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