80話 『ルリとなつめ』
これからは更新が遅れる際はお知らせする癖をつけないとですね……
村長の家に着き、インターホンがないのでドアを三回ノックした。呼び鈴として鈴くらいは置いておいてもいいじゃないの。
「はいはい」
村長がドアの隙間から顔を出し、私を見て笑顔で出迎えてくれた。
「カグラさんがここにきていると聞いて来たのですが……」
「ああ、いますよ。今リビングでルリと話していると思いますよ」
「……今、行っても大丈夫ですかね?」
村長は頷いて、ドアを開けて私をリビングまで連れて行ってくれた。
リビングには小さな女の子とカグラさんが座って話をしていた。
ルリという女の子は、昨日は髪を結っていなかったが、今日はポニーテールにしていた。カグラさんも女の子も澄んだピンク色の髪で、とてもよく似ている。本当の姉妹みたいだ。確か、このルリって子もカグラさんと同じ捨て子だとか……どっちも、生みの親は誰なんだろう。
「あ、なつめじゃないか! 丁度いいところに来ましたね! なつめをルリに紹介したいところだったのだ!」
「はっはっは、昔の癖の語尾が出てきたな!」
なんて不安定なんでしょう。
私はカグラさんの隣に座り、ルリという女の子は私をキラキラした目で見てきた。なんでこの時期に袴みたいなの着ているんだろう……カグラさんの真似事かな?
「貴方がなつめさんだね! お姉ちゃんがすっごい自慢してた人だね! なんか変な服着てるね!」
何この子!? ちょっとお姉さんに対して口悪いんじゃない!? 無邪気な笑顔して毒舌な子って結構好き!
あ、いやいやそうじゃなくて、
「う、うん。ルリちゃんでいいのかな?」
「そう、私ルリ! カグラお姉ちゃんの妹なの!」
カグラさんは何回もウンウンと頷いて、腕を組んだ。
「そう、ルリは私の妹だ。剣術、運動神経は絶妙に微妙だが、頭は良い。自慢の妹なのだ」
村長が私たちに水を持ってきてくれ、その後、ルリちゃんの隣に座った。
「ルリはまだ小さいのに、本当に賢い子でしてなぁ。魔法書を読み、この年で、初級魔法のあらゆる使い方を全て完璧に覚えた。中級魔法からはもう少しレベルが上がらないとできないが、適正になったらすぐに覚えることができるだろうて」
「あらゆる使い方……」
私がそう言うと、ルリちゃんが私に話してきた。
「火の魔法は暖炉に火を付けるのに使えるし、ライトは夜に容器とかに密閉すると効果時間が長くなるのとか、水魔法だったら、雨が何日も降らなかったとき、畑とかお花にアクアーで水をあげるとかね!」
「普段の生活で上手に使えるようにしてるんだね」
「そう! あと、風魔法と水魔法で水の渦巻きをつくって、服を洗濯することもできるよ!」
これは洗濯機だね。
今思い返せば、洗濯機なんてものを作った人は素晴らしい天才の一言に限る。
「それでは私はこれで。ちょいと上の家に大事なものを忘れてきていたのを思い出しましてな。今から取ってきますじゃ」
村長はそう言い、椅子から立ち上がって部屋を出て行った。部屋には私とカグラさんとルリちゃんがいる。そういえば、他の村の人はどこに行ったのだろう。
「ルリちゃん。他の人たちはどこに行ったの? 見当たらないけど」
「みんなは違う部屋にいるよ!」
と言い、上を指した。よく耳を澄ますと、話声がほんの少し聞こえる気がする。この村が襲撃に遭い、生き残った人たちはルリちゃんを含めて六人だったかな……そういえば門番の人も見かけてないけど……この上の部屋にいるのかな。
「そろそろ行くか。なつめ。私を呼びにきたんだろう? 作戦会議のために」
カグラさんは腕を組んだまま話した。ルリちゃんは作戦会議と聞いて首を傾げて、下唇に右手の人差し指を当てた。
「さくせんかいぎ?」
そう訊いてきた。誰しもが通るであろうこの疑問。戦闘をしている人たち、つまり冒険者の通用語みたいなものなんだろう。メルちゃんも知らなければ、カグラさんすらも知らなかった。私達も冒険者と名乗っていいのかは不確かなのであるが。
「作戦会議っていうのはね、魔物と戦う時に、どう戦えばいいかを話し合うことなんだよ」
ルリちゃんは机に乗り上げて黒い眼を輝かせて私を見てきた。
「すごい! かっこいい!」
「私も知らなかったんだけどな、なつめに色々教えられてから分かった。なつめは物知りだぞ」
「やっぱりすごいね!」
私は何だか褒められるのが恥ずかしくて頭を掻いて少し笑った。
「それじゃあカグラさん。行こう」
「よし」
ルリちゃんと別れて、村長の家から出て行き、自分たちが住んでいる家に帰ってきた。
次話もよろしくお願いいたします!