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78話 『昔の話と気配』

「昨日のままだね」

「そりゃそうでしょうよ」

「この台車って、元々何処にあったものなの?」


 セナさんは集落の方を指した。


「元々集落にあったものだと思う。確か私が定期的に野菜とか、他に作物を貰う時に、村人にこの台車で運ばせてたから」

「一応納税制度はあったんだね」

「そんなに厳しいものじゃないよ。三日に一回、一人分の作物を持って来てもらっていただけだし」

「集落の人たちとの交流は?」


 セナさんは唐突に陽気に喋りだした。


「あーね、集落の子達とは密会してよく遊んでたわ! ダモンやパミルとは遊んだことないけれど、一回集落に来た時に、子ども達が遊びたい遊びたいって目をキラキラさせながら言ってくるものだから、ついつい遊んじゃって、また遊ぼう! って言ったら子ども達が、いつ? いつ? って聞いてきて、その後も何度も何度も同じやり取りして、殆ど毎日遊んでたわ。それにね――」


 セナさんの話は長々と続いた。私は立ち話が疲れてしまい、台車のすぐ近くにあった座るのに丁度いいくらいの岩を見つけて、そこに座った。セナさんは私の目の前に浮かびながら話し続けた。

 セナさんの話によると、パミルとダモンは一回会ってから、それ以降は一回も会っていなかったらしい。カグラさんの情報もその時は全くなかった。

 そこから話は大きく変わって、セナさんが勇者四人に倒された後の事を話し始めた。


「んでね、私が精神的に潰された後の話なんだけど、パミルはカグラさんを村に置いて、魔王の幹部に就いたのよ。理由は知らないけどね。それから少し経って、私は姿を変えこの世界に再君臨したわ。たぶん今見られても、『私』だと誰も認識できないでしょうね。さすがに名前言ったらバレるけどね。ね?」


 セナさんは私の鼻につく寸前まで顔を寄せてきて、私の目を真っ黒い目で見てきた。たぶん、ガイルさんが聞こえる範囲で私がセナさんの名を口走ってしまったことを根に持っているのだろう。あと、これからは言うんじゃねえぞ的な威圧も加えてあるのだろう。


「あ、ちなみにカグラさんを助けたの私ね。カグラにはパミルから貰ったと思われる神性能力が入っていたわ。そのおかげで今の特異的な身体能力や、スキルやタレントが手に入ったのかもね。これから元々同じ屋根の下にいた元家族と対面する気持ちってどんなものなのかね!」


 その時、一瞬ではあるが視線を感じた。そして、寒気もした。周りを見てみたが、誰かがいるわけでもない。それに、歩いて岩の後ろを確認しながら回っても、誰かが隠れていることはなかった。


「どしたの?」


 セナさんが首を傾げて私に訊いてきた。


「セナさんの話が終わった瞬間ね、一瞬何処かからか視線を感じて、それに寒気も感じたの。だから誰かいるのかと思って探してみたんだけど、誰もいなくて」


 セナさんは顎に手を付け、考える仕草をした。


「アニメとか漫画とかの見過ぎじゃない?


 考えた結果がこれか! と一ツッコミを入れたところで、腰に手を当てて私はため息を吐いた。


「そんなはずないでしょ。バカなこと言わないでよ」

「バカとは失礼な! 私は真面目に言ったまでよ」

「は?」


 私はウサギのぬいぐるみのほっぺを両方つねって、横に伸ばした。


「何が真面目だって! せめて幽霊とか、ホラーチックなの思い浮かべるでしょ」

「いてっててて! というか、ヒョラーなんて興味の欠片もないひー? しょもしょも視線を感じるなんて普通の人間じゃないわよー」

「普通の人間じゃなくて悪かったね!」


 私は限界までほっぺをつねって一気に放した。耳で叩かれたダメージはこれで返すことができただろう。あと、今のセナさんの発言にむしゃくしゃしてしまった。

 私は至って普通の人間だ。


「もういいよ。探しても出てこないんじゃ仕方ない。話は戻るけど、この台車は何でここにほったらかしにしてあるの?」

「ここで襲われたんでしょうね。残念なことだけど」


 あのゴブリンかオーガにでも襲われたのだろう。戦えって言われても、正面で堂々戦える敵でもないのだから、村人は一方的にやられてしまったのだろうと、私は思った。


「休憩していたところを襲われて、パミルに持っていく作物を運んでいたのだと思うのだけれど、ダモンが勝手に魔物を暴走させてこうなってしまったんだって思うよ、うん」


 セナさんは腕を組んで何回も頷いた。そして、少し離れて私に手を差し向けた。


「貴方たちは、これからそのダモンくぉ倒しいに行くの。自覚ある?」


 私は下を向きながら先程座っていた岩にまた座った。そのまま、私はセナさんに向かって話した。


「自覚はあるよ。でも、あのモヤモヤがついたゴブリンにすら正面で勝てないのに、勝てるかどうかっていうと……」

「そうねー。そこも今後の作戦会議で検討していかないとね。私も作戦会議で貢献したいところだけど、ダモンの情報量が少なくてね……この世界、現実からじゃ、どういう人がどうしてるなんて見れないものだから」


 セナさんは地面に着いて太息を出した。聞こえるように「はぁ」なんて言うもんだから、私もため息を吐いてしまった。

 カグラさんも本当に小さい頃に育てられていただけであって、ダモンのことは深く知らないだろうし……圧倒的不利な状態だ。こんなんで勝てるのかな……セナさんの予知のこともあるし、心配だなぁ。


「これ以上は危険だから、そろそろ帰りましょう。まずはみんなと話し合わないと」


 セナさんがそう言って、私のポーチの中に入って来た。


「だね」


 私は立ち上がって、集落に続く道を進んだ。村に帰ってから、皆と何を話し合おうか考えながら。

次話もよろしくお願いいたします!

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