表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/232

77話 『村をもう一度見て回る』

「セナさん。これからどうすれば?」


 そう訊くと、セナさんは腕を組んで神妙な面持ちで話を始めた。


「カグラさん次第……かな」

「どゆこと?」


 セナさんは改まって、祈るように手を合わせた。何かの儀式だろうか。

 ん? この感じ、以前何処かで見たことがある。

 あ、そうだそうだ。セナさんはサン町で星占い師をしているからその儀式かもしれない。何か月か前になるけれど、ザトールの町の星占い師であるイリアさんがやっていた。星の精に聞くとか教えてもらうだとか。

 セナさんはブツブツ何かを言っている。星占いの呪文……だろう。


「んー、やっぱりこの部分だけ予知できないのよね」

「はい? ちょっと何言ってるのか分からないんですけど」

「いやね、星占いで貴方たちの今後の未来を予知していたのだけれど、何故か途中で途切れちゃうのよね。その後も見れないし。こんなこと今までなかったのになー」

「バグじゃないの?」


 セナさんは首を大きく横に振り、笑いながら私の頭を両耳で交互に叩いた。

 ちょっと痛い。ダメージ少し入ってそう。


「私のキャラについては、最高プログラマである私自身が調整やプログラムを組んだからバグなんてあるはずないじゃないの」

「……あのー、今更だけど、二つ疑問がある。まず一つは、星占いで過去って見れる? あと、このゲームってセナさんだけがプログラミングしたわけじゃないの?」


 セナさんは笑うのをやめ、頷き再び私の頭の上に乗った。


「そうそう。この世界での星占いはあくまで予知やタレントやらを見るためのものだから、過去を見ることは絶対に不可能。あと、プログラマは私以外にも数人いたわ。この計画を立てた人もプログラマの一人だった。もう皆リアルで他界しちゃったけどね。私一人でなんて、こんな世界成り立たせる事できないわ。そもそもこんな事考えもつかないし」

「そうなんですか……悪いこと聞いちゃってごめんなさい」


 私が俯くと、セナさんは私を宥める様に、私の肩を耳で軽く叩いた。


「いいのいいの。貴方が気にすることではない。さて、村に戻って見回りでもしてこよっか。お金も大量に手に入ったことだし。謎の書物も手に入ったことだし。実質勝ちね」


 まぁ、うん。確かに本当に勝ったから大丈夫。

 私は再び歩き出して、村に戻る上がり路を静かに歩いて行った。そういえば、セナさんは予知が途切れるまでの間は何を見たのだろうか。おそらく聞いてもネタバレになるからダメって言われるだろうけど、そもそも自由意志を持つ人間がいるこの世界でネタを仕込む事なんて可能なのだろうか。セナさんが星占い師になった理由って、もしかして不測の事態を予期するための策なのでは……?

 ……頭で色々な考えを巡らせたって実際の事実がないから意味がない。もう考えるのはやめておこう。その時が来るまで、私は前に歩くだけだ。

 その後、数分歩いて村の西側に来た。ここは朝に来た家々がある場所だ。……もう見た。

 ここにも人はいたのだろう。南は完全に畑だったけど、家の近くにも、南の畑ほどではないが小さな畑がいくつかあったり、倒れている鍬やスコップ、あとは水を撒くための道具……? 如雨露ではないけれど、プラスチックの容器に、取っ手が付いていて、水を入れる穴に、ブツブツ穴が沢山ある部分はそれは三つに分かれている。おそらく如雨露と同じ使い方をするものだろう。

 荒廃しきった――とまではいかないが、所々道具の劣化や腐食が見受けられ、長い間使っていないのだと思った。何時襲われたかが定かではない。そのことに関して、村長の口から放しが出ることは無かった。カグラさんに責任を押し付ける形になることを避けたためだろう。


「結構前にやられたのかしらね。死体が無いということは、おそらく昇天したんでしょうね。この世界では、人を埋葬する文化がないからね」

「昇天って物理的に行われるものなの」

「まぁ、いずれ見ることになるわよ」


 とてつもなく気になる発言だ。

 昇天って天から一筋の光が下りてきて、その光に沿って人が浮かんでいくイメージがあるけれど、本当にそうなのかな。

 次に、私たちは東側に来た。

 確か倉庫的なものがたくさんあるところだ。ここにあったと思われる食料は、村長の家の食糧庫に運ばれていた。もうここにある倉庫には食料は無いだろう。


「ここは本当の意味で何もないみたいね。次は北側に行ってみようか。昨日よりも全然見晴らしはいいはずよ」

「そうだね」


 私は北に歩いた。昨日行った道を歩いて行った。確かに見晴らしが良い。今日は晴れているし、それに道も見やすいから歩きやすい。昨日は何度かつまずいて転びそうになった。坂道を歩くのは辛いが、空気も綺麗であるし、後ろを向くと大陸が少し見渡せる。山の中腹当たりのはずなのに、大陸がまだすべて見ることができないなんて、どんだけ広いんだこの大陸。

 そういえば高山病とかならないか心配……高山病って熱が出たり、吐き気があったり、めまいがあったり、色々症状が出るらしいが、今来た途中ではそういった症状は見受けられない。カグラさんやセナさんは、そのことも含めて村で休むことを考えた、ということも考えられる。普通、作戦を綿密に立てるったって一週間もとらないだろう。

 そもそもこの世界の空気が酸素でできているかが問題なのだけれど。


「そういえばセナさんが昨日云ってた温泉ってどこにあるの?」

「もっと上の方よ。今はやめておきなさい。もう少し山に慣れてきてからにしなさいな」


 やっぱり高山病的なのはあるんだ……


「そっか。じゃあこの問題が解決してから行ってみたいな」


 セナさんは少しの間黙り込んだ。


「……そうね」


 恐らくこれは、予知できないことへの心配のようなものだろう。一体この先何があるのか、心配でならない。

 私はもう少し歩き、セナさんが昨日落ちていた台車の近くに辿り着いた。

次話もよろしくお願いいたします!

物語は、これからです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ