76話 『宝箱発見! 中身は?』
皆を叩き起こして、朝食を皆揃って食べ始めた。今回は、何の卵か分からないけど目玉焼き。そして焼いたパン。あとはサラダと、朝食としてはまあまあの出来。パンの耳を揚げてカリカリにしてもよかったが、砂糖が無いためキャンセル。今度アレンジ料理を作ってみようかな。
それにしても、セナさん以外皆ウトウトしている。昨日遅くまで起きていたのだろうか。カグラさんに至っては、目の下に隈ができている。寝付けなかったと言ったところだろう。村長の話を聞いたからその苦しさは分かる。お兄ちゃんやメルちゃんはただ単に寝ぼけているだけだと思った。セナさんに関しては手掴みで口に放り込んでいた。朝起きてすぐに食べれる人は凄いよ。
私は目玉焼きの黄身に箸を入れ、中の黄身を解放した。トロトロの黄身が白身に覆いかぶさった。一口サイズに箸で切り、黄身のかかった白身を口にした。
予想以上に甘い。この卵は何の生物の卵なのだろうか。
箸が進み、二口、三口と目玉焼きを食べた。パンも外は、食べ応えのある硬い食感に、中は柔らかい食感と、高級と言ってもいい程の一品だった。何故食べ物は焼くとこうも美味しくなれるのだろうか。
全て食べ終えた私は、水の入ったコップを手に取り、最後の一滴まで残さずに飲み干した。
「皆も早く食べてね。私はもう一……あ、外に行って、集落の周辺を見回ってくるから。あと、皿洗いは最後の人がよろしくね」
私がそう言った瞬間、先程までのウトウトをやめ、朝食に喰らいついた。どれだけ皿洗いをしたくないのだろうか……
「あ、私も行きまーす」
セナさんがシンクに皿やコップを置いて、挙手をして私に付いてきた。そのまま私の頭の上に乗った。
「え」
「いいじゃない。私たち仲間でしょ?」
「いつから仲間だと錯覚していた……?」
「ひっど!」
結局私は頭の上にセナさんを乗せたまま外に出た。太陽が早朝よりも高くなっている。当たり前のことなのだけれど、早朝以上に気持ちが良い。
「で、どうするの? なつめさん」
「いやぁ、昨日さ、ライトの魔法で光るスライムみたいな物体を作ったじゃん? それってまたできるかなーって思って」
咄嗟の言い訳をした。朝ライトを超発行させて、プニプニが作れないことは知っていたのに。本当はあの洞窟の内部を確かめたかっただけだった。あれほど強大そうな魔物がいれば奥に宝物があったかもと思ってのことだ。
「朝は無理よ。夜だったら可能だけどね」
「そうなんだ」
「うん。光魔法は夜になるとスライム化するのよ。だから、街灯どかはその技術を利用してできているの。でも、生きてはいない」
「朝ならないのは何故ですか?」
「太陽の光で消滅するのよ。だから、早朝から夜までの間は、魔法としてのライトとしてしか機能をしない。発光時間が夜に比べて短いから、朝昼の一瞬の光は非常に強くなるけれどね」
「なるほど……」
効果時間で変わる発行量か……早朝だったからこその超発光だったんだね。マジッククリエイトといいライトの効果といい、運に恵まれているな私。あのミノタウロス相手にカッコつけて、魔法は作れるなんて口走ってしまったときはどう処理をしようと路頭に迷ったけれど、結果が全てでああなったわけだし、コマンドも分かったし、一石で三鳥くらい仕留めたと思ってもいいのかも。
「そっかー、あ、私行きたいところがあるんだけれど、いいかな?」
「いいけど、どこ?」
「ここを少し下に降りて、すぐ近くにある洞窟なんだけど……」
「……あそこは今の段階では貴方が行ける場所ではないわ。死ぬ覚悟で行っても死ぬだけよ」
「セナさんいるからさ、大丈夫かなって思って。セナさんならお強くてお頼りになるし、魔物に襲われても盾になれるからね」
「あ……そっかー! 私がいるんだっけか。そっかそっか強いもんね私! 今は魔物の攻撃なんて何でもかんでも弾いちゃうからね私! じゃあ大丈夫だ、大船に乗った心算で余裕の立ち振る舞いをしていなさいな」
セナさんは煽てると、案外チョロいことが分かった。
私は早朝来た道をまた歩いて、キケンの髑髏マークがある看板の道を進んだ。焼けカスとか残ってないか心配だ。それに、地面剥げてたらどうしよう。周りの岩々に砂が大量に不自然な形で付いていたらどうしよう。氷のせいで濡れている箇所があったらどうしよう。いや一番重要なのは洞窟を塞いでいる岩なのでは!? ここに誰かが来たってことは分かっても、特定はできないはずだから大丈夫だとは思うけど。
「さぁ、ここがミノタウロスの洞……あれ、グラフィック間違ってたのかな。ここの地面ってこんなに禿げてたっけ。確か入り口付近はもう少し草が生えていたはず……それに、まるでこの付近で竜巻でも起こったかのような砂のまき散らされ方。あとは雨が降っていないはずなのに、所々に水滴やら、地面が湿っているやら……あと入り口も岩で塞が意いているね。もしかしてだけど、なつめさん一回ここに来た? それも早朝」
何でこの状況証拠だけで私が早朝に来たと判断できるの!
「いやいや、きっと他の冒険者さんが来たんだよ。ほら、手鳴らし程度にさ、他の大陸の人とか」
「そうかなぁ……」
「そうだよ! セナさん! 私たち仲間だよね!? 仲間の言葉は信じようね!?」
「こういう時ばっかり仲間意識は出てくるのね。まあいいわ。どちらにせよ、この洞窟にいる魔物には勝てる人はそうそういないでしょうし、逃げる為に魔法をぶっ放して来たってところでしょう。この岩の後ろに血のついた矢があるってことは、ダークエルフに矢で体の一部を射られたのでしょうね」
「ダークエルフ……」
強そうな名前。でも倒してしまったなんて口が裂けても言えない。
「通常攻撃のダメージは六十で、威力は高い癖に、命中率だけは非常に悪いのよ。アレ」
よく天に召されなかったな私。これだけは自慢してもいい。
「中に入りましょうか。魔物の気配は無いみたいだから、何処かに出掛けているのかもね。あ、ピクニックにでも行ったのかしらね」
あの方々は天へのピクニックを楽しんでますよ。今真っ最中でしょうね。
セナさんは冗談を言ったのだと思う。今私が考えたことをセナさんに伝えてみたい。
「ダークエルフやミノタウロスは活動時間は基本的に夜だから、朝にいないなんてことは普通はあり得ないんだけれどね」
「へ、へぇー」
侵入者がいると気づかれてからの対抗行動だったのか。悪いことをしてしまった感が半端じゃない。
洞窟の中では、私の足音が壁に反響し、何重にも重なって音を出し、それ以外では、時々蹴る石が壁に当たったり、奥から水滴の音が聞こえたり、耳を澄ませば音は沢山聞こえてくる。
「あれ、本当に誰もいないわ。宝箱があるだけなんて、こんなこと常識的にあり得ないと思うんだけど」
本当に宝箱ってあったんだ!
「魔物のレアドロップってね、なんで宝石とか高価なものがあるか分かる?」
「何でですか?」
「あれってね、自分が大事にしているものは、自分の手で持ち歩くからなのよ。じゃないと、盗賊とかに留守の間盗まれちゃうでしょ?」
「なるほど……」
「でも、ここのミノタウロスは何も持たずに出て行った。この意味が分かる?」
セナさんが急に私の目を見て話し始めた。その眼差しはとても険しいもので、表情は分からないものの、黒い眼で見つめられると、何も言えないくらいの威圧感を感じだ。
「さ、さぁ?」
「なつめさん貴方が……」
私は息をのんだ。もしバレていたら、魔法を作ったことがバレてしまうとも考えた。神さまでも仏様でもなんでもいいので、どうか私をお救いください……!
両手を合わせて胸の前に置き、目を瞑って静かに祈った。
「幸運すぎるってことよー!」
「は?」
拍子抜けした。私は緊張していた肩をなでおろして、深いため息を吐いた。
「そっか。で?」
「ささ、奴らが戻ってくる前に宝箱を開けちゃって中身を回収して家に戻ろう!」
「え、あ、うん。そうだね。早く戻ろうね」
この罪悪感をどう拭ったらいいか教えてくれる人はいないのだろうか。
赤い宝箱を開けると、中には一つの書物と、金貨が十数枚入っていた。私は書物をポーチの中に、ガマの中に金貨を十数枚全て入れ、ポーチの中にしまった。
……魔物にせよ、金品を取るのは複雑な気持ちだ。
……残ったものは無い。書物は家に帰ってから自分の部屋で読むとしよう。この大陸での情報や、もしかしたらダモンについても載っているかもしれない。一応、あのミノタウロスもダモンの支配下だったらしいから。
セナさんは鼻歌交じりに左右の耳を交互に揺らした。私はその様子を見ながら何も考えずに歩いた。
洞窟から出て、私はすぐ、セナさんに今後の予定のことを話した。
次話もよろしくお願いいたします!




