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74話 『実験をしてみたい』

 朝。カーテンを開けても、神々しく輝かしい太陽の光はやってこない。あるのは昨日と変わらない薄暗い光景のみ。日焼けをしないのは良し。むしろありがとう。でも、日常生活の上で朝の光を浴びれないことは非常に残念である。人間はこうやって気持ちよく目を覚ます生き物だから。

 太陽の光には悪い効果もあれば良い効果もある。特に、私みたいな女の子には紫外線が厄介。肌は女性の命ともいわれるし。ガングロ卵ちゃんみたいな人が偶にいるけど、正直友好関係を結びたいとは絶対的に思えない。人の個性を見定めるって意味でも、肌は重要な体の一部分。良い効果があるとしたら、紫外線によってビタミンDを作り出してくれること。日焼けは嫌だけど、ある程度の日光浴は生命力を維持させるためには欠かせないと、友達に聞いたことがある。でもその友達、日光浴をするのに、日焼け止めを塗ってサングラスをかけながら寝ていた。これは推測だけれど、私よりもバカだ。確実に。

 ……話が飛躍しすぎてしまった。頭の中で考えると、次々に話が浮かんできてしまって困る。

 時刻を確認。ブックを腰からとって手に持ち、時計のアイコンをタッチ。

今の時刻は、六時。あれ、早く起きすぎたかな……深夜帯で寝ていたから、睡眠の感覚が狂ってしまったのかもしれない。たまーに早く寝ると、二十二時に寝たのに二時に起きたとか稀にある。

皆を起こすのは悪い。一人で日の光を浴びてくることにしよう。

私は部屋から出て、足音を立てないようにコッソリと廊下を歩き、階段を降り、物音を立てないように、地面に置いてある壺や割れた皿に気を付けながら歩みを進めた。そして、扉もなるべく音を立てないように静かに開け閉めをして、地下のサンソン村から出て行った。

地上に出てみると、日の光がすぐ目に入ってきた。窓から差し込む光は特に気持ちがいい。家を出て、寝巻のまま地面に寝そべり、全身で太陽の光を浴びた。

こんな寝そべって陽を浴びたのは小学生の頃追いかけっこで捕まって、疲れて倒れた時以来だ。やはり心地が良い。

さて、集落の周辺でも見て回るとしよう。昨日は時間が無くて、見ることがあまりできなかった。セナさんは私の部屋の机の上で毛布をかけて寝ていたし、来ることはないでしょう。

私は昨日見舞われなかった集落の東エリアと西エリアを歩いてみた。西は大きな農業スペースだった。東は住宅があれば倉庫もあった。ついでに、襲われる前に使われていたであろう大食糧庫らしきものもあった。食糧庫に入った瞬間に、穀物の香りがしたから間違いはないだろう。そこにあった食料を村長の家に持ってきて、なるべく村に出ずに食料を確保するという寸法だったのだろう。ちなみに、昨日は村長さんや他の方々は何を食べたのだろうか。私がセナさん探しに行った後に食料庫に取りに行ったのだろうけど。セナさんが落ちて突き破ったと思われる天井は塞がっていたし。

今日は肉類を食べないと力が出ないかもしれない。私の見解では、村や人の警護の為に私たちがいると考えても強ち間違いではないだろうし。力が出ないと戦はできない。

そういやキューポイの住処とかマグさん教えてくれたっけかな。確かこの集落の少しした辺りに分かれ道があって、『この先の洞窟はキケン(髑髏マーク)』って、ご丁寧にも看板に書いてあった気がする。融合魔法の威力も試してみたいことだし、あと、もう一つ試してみたいこともあるし。一人で行ってみるのもいいだろう。マグさんの館にいた時、作戦会議の場でお兄ちゃんのポーチからこっそりくすねた何でも切れるナイフもあることだし、使用回数もまだ九回ある。近接戦闘の経験はないし、戦闘系のゲームでもスナイパーをやっていたから、知識もゼロであるけど、謎の余裕でいけるでしょう。テスト前日日になんとかなる! って考えてしまう感覚と何ら変わり映えはない。

私は道を逸らし、看板のある道を進んだ。奥に洞窟があり、深呼吸して洞窟の内部へと入っていった。

 大きな寝息が聞こえる。これがキューポイの寝息……? どちらかと言えば、魔獣とか邪獣とか、そういった獣の類な気が。

 寝息が途絶えた――

 大人九侵入して魔法を唱えるつもりであったけれど、それはナメすぎていたらしい。大きな揺れとともに、巨大生物の足音が聞こえる。この洞窟内部では、融合魔法で迎撃は危うい。もし崩れてしまえば、もし私が生きていたとしても、探すことができなくて回復魔法を私に唱える手立てが消え去ってしまう。ここは一度引いて、外の道に出るとしよう。それが得策だと私はみた。気づかれてしまってはもう遅い。早めにこの洞窟から出るために走って逃げることにした。

 足音は一回一回がとてもではないが、腰が抜けそうな程の恐怖を覚えるものだった。圧倒的な『差』を見せつけられている感覚がした。場所で有利をとって戦うこと以外に私の勝算はないだろう。

 洞窟の出口から入ってくる光は益々大きくなっていった。

 やっと出口だ――

 そう思った次の瞬間、何かが私の横を通り過ぎて行った。何か鋭く、細いものだ。

 もしや矢……? それにあそこまで速い矢を飛ばせるとなると……そうとうな剛腕も持ち主……? 制度は悪く、命中率はかなり低いものの、当たったらそのまま矢とともに吹き飛ばされてしまうのではないかと思えるほどの速さだ。ただ、とても嫌な予感がする。

 これはキューポイなのだろうか。矢を撃ってくる牛なんて聞いたことがない。闘牛でもそれは無理難題だ。もしかして、他の魔物なのでは……

 私が洞窟から出た瞬間、無数に放たれた矢野一本が私の左腕に刺さった。その衝撃で、私は勢いのまま地面に転げ倒れてしまった。


「痛!」


 これはバーチャルの世界ではないことを改めて実感した。アニメで見る矢を受ける兵士の気持ちがよく分かる。ここまで痛いと戦闘なんて怖くてしたくない。単なる恐怖でしかない。

 こういう時って矢は抜いたほうがいいんだっけ? 抜かないほうがいいんだっけ? ああ、頭が混乱状態だ。これも一種の状態異常とも言えるだろう。落ち着け私、落ち着くんだ。矢の長さは直径五十センチといったところ。矢は私の腕を貫通はしていない。ただ、骨に当たって骨が砕けてしまっただけと思える。骨折よりも遥かに痛いんだけど! でも今は子どもみたいに泣くことはできない。一応この大陸での約束事は守らないといけない。自分のことだ。自分のことで他人には迷惑をかけてはいけない。引き起こしてしまったのは全て私の責任。ならば、その責務を全うするのみ!

 私は道中に会った巨大な岩の後ろに隠れ右手で、力一杯に左腕から矢を抜いた。

 これもこれで痛い。しかし、矢を抜かなければ、腕が自由に動かせないし、治癒魔法をかけても回復ができない。面倒な状態異常効果だ。

 私は治癒魔法を融合し、自身に唱えた。そして、魔力を完全に戻すためにポーチから魔力回復薬を十本取り出して飲み干した。お腹が水でたぷんたぷんだ。魔力回復薬がフルーツの味付けで良かったと心の奥底で思ってる。マミさん感謝します!

 さて、腕も完全に治ったことだし、お次はこちらの手番としようかな!

次話もよろしくお願いいたします!

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