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72話 『癖を直したい』

 家に入ると、皆がリビングで待っていた。


「みんな揃いにそろってお腹鳴らしちゃって、自分たちで食料持ってきて食べてても良かったに」


 リビングにある椅子に全員座っていた。疲れた後に料理をするのは嫌です。もーなんでもいいから適当に作ってくれば良かったのに。お兄ちゃん大学の頃、一応自炊してたんだから、何かしら作れるでしょう?


「早く飯を頼むー」


 お兄ちゃんがそう言って、テーブルのにあるコップを手に取り、水を飲んだ。


「わっちもメルもカナタも料理ができないから、なつめに頼るしかないのだ」

「お兄ちゃん料理できるよね?」

「できないできない。この世界の食材もほとんど知らないし。知ってると言っても、レタスくらいだ」


 ああ、メルトレタスね。あの、口に入れたら蕩ける野菜ね。もはや野菜である意味があるかどうかすら疑わしいレタスね……

 ザトールのガイルさんの酒場で一回使わせてもらったことのある野菜だ。元世と同じ調理方法では、レタスが消えてしまう、というよりも、溶けて無くなってしまう。一度食べると病みつきになる野菜ではある。だが、滅多に取れないらしい。あの時のガイルさんは酷く落ち込んでいた気がする。ガイルさんではなく、私たち四人で食べたから。


「どうした、なつめ。ぼーっとして」


 考え事をしていて口を動かさなかったのを不自然に思ったカグラさんが指摘をしてきた。


「ああいや、何でもないよ。それじゃあ、作ろうか。今の時刻は……二十時……? ごめん。すぐ作るね」


 夕食というよりも夜食と言いたい時刻だ。

(この数年後、一週間に一度は二十三時以降に夕食を食べることになる。というか、月、火、水、木曜日は殆ど二十一時以降になる)

 さて、何を作ろうかな。持ってきた食材はほとんどが野菜だ。簡単に野菜炒めにでもしよう。

 台所の壁に掛けてあるフライパンを手に取った。部屋の灯りを反射した鉄板の光沢が綺麗だ。調味料はコショウでいいかな。あとは油を引いて、パパっと炒めちゃおう。

 その後、野菜炒めだけでは物足りないと思い、汁物も作った。白飯たるものがないのが非常に残念だ。


「はーい、できたよー」


 野菜炒めの入った大きめの皿を持ち、まずはテーブルの中央に一つ。その後、カニミソスープを四つ運び、箸やら自分のコップやら、個別の皿などを持って行って、二十一時頃に夕食となった。

 皆美味しそうに食べてくれる。作った甲斐があったと感じさせてくれる。これだから人が食べている姿って良いんだよね。

 にしても、セナさんが戻ってきたことをみんなに伝えるべきか伝えないべきか……あと、ダモンに会ったことを伝えるべきか……

 私はコップに入った水を見つめ続けた。コップの中に入っている水は、当然のことだけど、飲まれ使われるだけの水は、抵抗をしない。人間に造られたもの以外の生物は抵抗をする。

 いや私は何を考えているんだろう。当たり前のことを当たり前のように考えて。

 それより……いつの間にか皆いないんですけど……寝てたわけでもないのに全然気づかなかった。こういうことが最近よくある。ぼーっとすることに集中するっていう……

 一応各個の皿は片づけてくれたらしい。

 椅子から立ち上がって、台所のシンクを見ると、皿が縦に綺麗に積み重ねられている。ここは回転寿司屋じゃないんだよ……どうせなら水をかけておいてくれれば洗いやすかったのだけれど。

 このシンク。スポンジも洗剤もない。水が出るだけのシンクってあんまり意味なくない? こんな時にマミさんでもいてくれれば、スポンジも洗剤も創造してもらえたのに……

 大変惜しい人をなくしてしまった。どこにいるかも不明だし、いつ消えたかもわからない。マグさんに一応聞いておくべきだったかな。

 考えることが山ほどあって頭がパンクしてしまいそうだ。適当に洗って片づけて、水気を取ってから洗い物入れに入れとこう。今日はそんなところで、色々考えるのも億劫だから、早くお風呂に入って寝てしまおう。

 私は全ての食器を指で擦り、汚れを殆ど落として、食器入れに入れた。

 近くにあったタオルで手を拭き、風呂に入る準備をした。タオルは家の中にあるため、風呂に入るのに困ったことはない。大きめのタオル一枚と、お湯が出るものがあれば風呂には入れる。あと着替えも。寝巻は持っているし、いざとなったらキュアーで綺麗にすれば……キュアーで綺麗に……? 洗い物……? キュアーの対物効果……? うっ、そういえばお皿洗うのにキュアー使えばもっと簡単に終わったし仕上がりも美しくできたのでは……?

 この、すぐに忘れる癖、直したい。


更新が少し遅れてしまいました。忘れてただけなので、なろう人生としては致命傷で済みましたね。

次話もよろしくお願いいたします!

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