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68話 『家の中はどうなってる?』

「これ俗にいう、ヤバイだよね?」


 私がそう言うが、メルちゃんとカグラさんは口をぽかーんと開けたままで、呆気にとられている。


「す、すごいよ! あんなしょぼかった魔法がこんなになるなんて! もはや上級魔法並みの威力だよ!」


 一言余計かな。


「メルちゃん、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、これどうすればいいの?」

「いや本当はね、水なんて使わなくても、物体に対して効果のある、回復魔法のキュアーで全部取り除けるんだけど、どうなるのかなーって思ってつい」

「ちょいちょい、それ早く言わなきゃだめなやつじゃん」


 私がメルちゃんの肩を手で掴んで前後に揺らしても、メルちゃんは片手で自分のほっぺを掻いて照れくさそうに笑っていた。


「貴重な魔力回復薬を無駄に使わせないでよね。今のでほとんどの魔力値持っていかれたんだから」

「はーい」


 緩く返事をして、私に魔力回復薬を十個渡した。これは、マグさんと戦った時にお兄ちゃんにあげた魔力回復薬だ。まだ持っていたんだ。今の私のMPは九だから……全部飲めば完全回復かな。

 私は自分のブックを取り出して、ステータスを確認した。MPは百十、前よりも少し上がっている。あと、レベルや他のステータスも上がっているらしい。マグさんとの戦闘で、経験値が少し貰えたのだろう。完全回復とまではいかないが、ほとんど回復することができる。

 そして、マグさんすら説明し忘れていた新事実。マグさんだったからこそ分からなかったことなのかな。融合魔法はMPを多量に失うということだ。

 アクアーは基本的にMPを三、使用する。それが、融合魔法となると、凡そ十五倍のMPが必要になる。成功する可能性は低いし、その上にMPの使用量が多いと、使い勝手が悪く思えてしまう。きっと、ピギナーの魔法使いが、絶体絶命の時にピギナーズラックに賭けて使う魔法なのだろうけど、こうも易々と使う人はいないだろう。マグさんとの戦闘で魔力回復薬がなかったら確実に死んでいた。ありがとうマミさん。そして、私は一つ気づいたことがある。マグさんとの戦闘で、MPが枯渇していた時に、融合魔法が使えた。もしかしたら、元の魔法を二回使える分の魔法を魔力があれば融合魔法を唱えられるのでは、と考えた。だから、魔力回復薬を飲む前に試してみたいことがある。


「キュアー、キュアー」


 私が家に手を当てながら回復魔法を唱えると、家の中や、壊れた壁が直り、数秒で家が綺麗になった。まるで新築の家だ。

 やはり私の考察は合っていた。私の魔力ではこの家を回復魔法で綺麗にするまで何時間かかったか分からない。これが融合魔法の強みと言ったところだろう。

『不足している魔力値を通り越して上級魔法並みの魔法を初級魔法で唱えることができる』

 今、私のMPは零だ。


「融合魔法ってそんなに成功するんだね! お母さんでもあまりできてなかったのに!」


 メルちゃんは目を輝かせて、私の両肩をつかんで揺さぶった。私はさっきのメルちゃんみたいに照れくさそうに笑った。


「あのー、カグラさん? 大丈夫……?」

「魔法……いいなぁ……私も使えたならなぁ」


 魔法少女のアニメを見た後の少女みたく変な余韻に浸っていた。今度私が昔使っていた魔法のステッキでもあげよっか……いつになるか分からないけれど。


「さて、片付けもざっと終わったことだし、家の中を見てみよっか」


 メルちゃんが涎を垂らして、天井を見上げているカグラさんを揺さぶって我に返し、家の中にはいるよ! と一言云ってから三人で中に入った。


「家具は木製か鉄製なんだね。色が無いのは淋しいけど、我慢するしかないね」

「すまないな、この村はまだ未完成で、装飾や塗装を済ませていないのだ」


 二つも村を作るとなれば長い年月がかかるだろうし仕方ないとしか言えない。


「でも、生活必需品はすべての家の設置されているから心配は必要ないのだ」

「確かに、テーブルやキッチン、水源もあれば、ダストボックスにトイレもあるから、最低限の生活はできそうだね」

「部屋も一人一人で分けられそうかな?」


 暖炉がないことだけが不便ではあるけれど、寒さは着るものがあれば凌ぐことができるから心配することはない。暑かったら死ぬしかない。

「次は二階に行こう。部屋の数はそこで分かるよ」


 メルちゃんは大きく頷いた。そして、リビングに入っててすぐ右にある通路に行き、トイレの横にある階段を上がっていった。

 今気づいたことは、トイレが分かり易いようにトイレの扉の上の張ってある紙に、『トイレでーす』って書かれていることだ。


次話もよろしくお願いいたします!

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