67話 『生き延びた人々』
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「連れてきたぞ」
村長が六人ほど人を連れてやってきた。その中には子どもが四人、大人が二人いた。
「村長、本当に……これだけなのか?」
「ああ、他の者はみなやられてしまった。いつもは人を襲うことのない温厚な魔物達のはずなのに……」
カグラさんはある女の子を見て、咄嗟に駆け寄った。その女の子を力いっぱいに抱きしめ、背中をさすった。
「ルリ……怖かっただろう。それに、ミナは……」
「カグラお姉ちゃん! ミナは、ここは危ないからって、ここから離れてどこか遠くの大陸に行ったって聞いたよ!」
ありがちな比喩表現だ。どこか遠くに行った、察しがいい人ならよく分かることだろう。察しが悪くてもある程度は分かるであろうけど、天国に旅立ったのだろう。
「そうか……それならよかったよ。私は、ルリがいるだけでもここに来た意味がある。本当に二人とも……生きててよかった……」
カグラさんは微笑んでいた。
「カグラ様……申し訳ございません。私共の力不足で……」
「いや、いいんです……むしろあの異常な魔物を振り払っただけでもよくやったと言えるでしょう……村長、今日はここで泊めてもらえる?」
「ああ、当たり前であろう。ここには使ってない家が沢山あるからそこを自由に使うがいい」
「ありがとう、村長……」
カグラさんは私たちに、付いてくるように指示をした。私たちは村長に挨拶をして、その家を出て行った。カグラさんが道を案内して、私たちの泊まる場所を教えてくれた。ここの入り口の近く、早めに出ていけるようにするためだろう。
「本当は早く行きたいところなのだが……今回は質が悪すぎる相手だ。作戦を慎重に立てないと、とてもじゃないが、今のわっちらでは勝てる相手ではない」
カグラさんは真剣な眼差しで石造りの一軒家を見ながら言った。
カグラさんはダモンについて何か知っている……?
「それってどういう……?」
私が問うと、カグラさんは俯き嘆息した。
「これを話すと長いことになるのだ。さて家の中に入ろう。こんな状態であるが、ざっと七日間は態勢をちゃんと立てる必要がある」
「え、七日間もなのか」
お兄ちゃんは気怠そうにそう言い、ため息を吐いた。面倒事を早く終わらせたいお兄ちゃんにとっては苦でしかないだろう。それとは反面に、メルちゃんは楽しそうだ。
地面にいる黒くて小さな生物を指で突いて遊んでいる。
「これは仕方のないことなのだ。作戦は完璧に練るぞ。前みたいに曖昧で抽象的にならないようにな」
ああ、これ私のことだ。私の頭の中で考えていたことをこの三人に直接言えてなかったから。あの時みたくならないように、今度は慎重な会議をしなければ。カグラさんがここまで言うくらいだ。きっとダモンは強敵中の強敵と言ったところだろう。
「それじゃあ、少しの間滞在するなら家の中掃除しないとね。あの家を見てからだと、ここも埃が多そうだし」
「私手伝うよ!」
「わっちもやろう」
「俺はパス」
お兄ちゃんだけが参加しない。こういう時くらいは役に立ってほしい。
「それじゃあ……お兄ちゃんは外で見張りね。五、六時間で終わらせるからずっと立っててね。座っちゃ駄目だよ」
お兄ちゃんは「はいはい」と言って家の扉の横に立った。やすめの格好をしている。
私たちは家の扉を開けて中に入った。扉を開けた風で、地面や壁にこびりついていた埃がタンポポの種のように舞い上がった。
「これは酷い……立体構造の二重マスクが必要な案件だよ」
掃除機が欲しい。あと掃除用具色々と欲しい。
うちの魔法使いは幻想通りの箒持ちではないし、そもそも掃除に長けている人がいない。
「掃除をしようと言ったけれど、ガイルさんでも連れてくればよかったかなぁ」
「ここは魔法を使おう! なつめ得意でしょ? こういう埃って、水でやればなんか取れそうだよね?」
水でやると埃は逆にくっついちゃうんだけど……試す以外にやりようがないのならやるしかない。異世界ゲームらしく異常事態でピカピカになるんだ!
「アクアー!」
私が右手の人差し指を前に向けると、水が少量出てきた。水勢は弱く、ちょぼちょぼ出てくるだけで、何の意味もない。何の意味もない。そんなのは関係ないけど。
「これはだめだね」
「じゃあさっ、魔法融合だっけ? やってみたら?」
「正確には融合魔法ね。試しにやってみよっか!」
メルちゃんがカグラさんに私から五歩以上離れてって言った気がした。カグラさんとメルちゃんは私から距離をとった気がしなくもない。
「アクアーとアクアー!」
私が両手の付け根同士を合わせて、手を広げると、その両手の間に青く透き通った水の珠ができ、そこから水がレーザーみたく勢いよく放たれた。水の勢いに少し押されながらも、私は何とか踏ん張った。
発射が終了して、家の中をみると、水浸しで、それに加えて壁に穴が開いていた。強い。革新せざる負えない。けど壁の修繕費どうしよう。色々なことが頭に過った。
次話もよろしくお願いいたします!