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62話 『懐かしい顔』

 山登りは疲れるなぁ。

 ただでさえ肌寒くなってきているというのに。そもそもこの山って標高何メートルあるの? 遠くから見たら物凄く高く見えたのだけど。近くで見ると、富士山よりも大きいのではないかと思ってしまうくらいの巨大さ。

 ……ここは活火山なのだろうか。所々から煙が上がっている。一番煙が多く上がっているところ……割と近場にあるようだけど、もしやあの場所がカグラさんの言うサンソン集落だったりするだろうか。少し黒煙が上がっているようにも見えるけれど、山でとれた石炭でも燃やして寒さを凌いでいるのか、はたまた美味しい料理を竈に火を焚いて作っているのか。もしくは……


「そろそろ到着だ」


 カグラさんの指さす方向には、先ほど見た、周りに比べて一段と煙が上がっている場所があった。


「カグラさん。あの黒い煙は?」

「温泉の煙とは少し違うな……私にも分からない」


 カグラさんは急に大人っぽく、冷静に言った。

 カグラさんの一人称って『私』だったっけ。わっつとかわっちとかそこらへんだった気がするんだけど……

 ――カグラさんが何かに気づいたように、唐突に駆け出した。突然走り出したカグラさんに私たちは驚いてしまい、戸惑っても締まったが、何とか後を追っていった。


「人の気配がまるでない……いつもならここに門番さんが……」


 やっとのことで追いついた。カグラさんは黙り込んだまま町を見回していた。私たちにはこの集落が元々どんな様子だったか分からないから、どう反応していいか、どういった振る舞いをしたらいいのか分からない。


『う、うわぁ! く、くるなぁ!』


 男性の弱弱しい声が聞こえた。

 人が魔物に襲われている!? この村ってまさか魔物に襲われて……


「カグラ! 声はあっちからだ! 突っ立ってないで行くぞ!」

「あ、ああ……」


 お兄ちゃんは北東を指さした。

 ――急いで駆けつけると、鉄の鎧を身にまとった兵士が、真っ黒なオーラを体から放っているゴブリンに槍を構えていた。しかし、脚は震えていて、壁に追い詰められている様子であった。

 お兄ちゃんはゴブリンの注意を兵士から逸らすためか、唯一の武器である木の枝をゴブリンの頭に投げつけた。ゴブリンの頭に見事命中した木の枝は地面に落ちて、木の枝を当てられたゴブリンが振り返って、私たちに目を向けた。


「あの、お兄さま……? エイムはいいけど、どうするつもりなの?」

「分からん」


 えぇ!? ちょっと、強そうなゴブリンどんどん近づいてくるんですけど! セナさんでもいれば投げつけるか盾にするかできるのに……


『オマエ……タキノ……コロス!』


「ゴブリンが喋ったよ!」

「いやメルちゃんそこじゃなくて殺すって私にダイレクトに言ったことに耳を傾けてくれないかな!?」


 ゴブリンは規制を出しながら私に一直線に向かってきた。

 ゴブリンが私に目にも止まらない素早い動きで棍棒を振りかざす。


「のひゃっ!?」


 間一髪で避けることができた。これも中学生のころバスケで培った反射神経のおかげだろう。

 右、左、下と、華麗にゴブリンの攻撃を避ける。少し能力値が上がっていたらしく、異世界主人公チート物語みたいに、『敵の攻撃が止まっているように見える』とまではいかないが、ゴブリンの動きの割には棍棒の振り

が遅く思える。


「ちょっとみんな! 見てないで助けてよ!」

「いやだって、動きが速すぎてどう仕掛けていいか……」


 三人とも口を揃えて言った。少なくともカグラさんは素早さ私よりも高いはずでしょ!?

 魔法を唱える隙も与えてくれないし、このままだとスタミナ切れでやられてしまう。というかこのゴブリン何でこんなに強化されてるのー?

 私はついに、助けた兵士と同じように壁に追い込まれてしまった。ゴブリンはにやりと笑い、ゆっくりと近づいてくる。


『シネ!』


 ゴブリンが棍棒を振り上げた瞬間、もう駄目だと思い目を瞑った。数秒後、何も起こらないなと思い目を開けると、目の前にいたゴブリンの姿はなくなっていた。

 一体何処に……

 隣を見ると、毛むくじゃらの何者かがゴブリンを押さえつけていた。

 この尻尾、このナンセンスな着こなし……


「あなたはもしかして……!」

「お久しぶりです! 森の時はご迷惑をおかけしました!」

「えー……お久しぶりです。助けてくれてありがとうございます。えっと……」


 ――まだ私が元世にいた頃、テレビで『相手の顔は覚えているけれど、名前を忘れてしまったときはどうしたら良いか』、という内容がやっていた。お母さんが飲み会でいなくて、話相手がいない中、私一人でテレビを見ながら暇を持て余していた時だ。その時、テレビではこんなことを言っていた。


「名刺を新しくしたので、改めて交換していただけませんか?」

「あの、なつめさんちょっと何言ってるか分からないです」


 真っ当な答えを返されてしまった。


ハナタカ面白いですよね!為にもなりますし!

次話もよろしくお願いいたします!

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