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兄妹の話 『なつめの思う事、そして説教』

 なつめの思う事、お兄ちゃんの言動や行動はほとんど実話です。

 誤解されるといけないので言っておきますが、異世界での行動はあくまでフィクションです。


 気持ちのいい朝。清々しい朝。髪をとかせない朝。お腹が空いて、誰かに朝ごはんを作ってもらいたい朝。外の空気が雄一気持ち良く感じ取れる朝。夏は朝四時起きでシャワーを浴びたい朝。冬は二度寝がしたい朝。

 ――二か月経っても、ストーリーが全く進まないままお金だけが少しずつ貯まっていく朝。

 おかしいよね? おかしいよね? 大事な事だから三回くらい言っておくけど、おかしいよね?

 セナさん消えたし、このまま物語進まないと何の進歩もないよね?

 例えばの話だけど、ゲームの時間って、普通一日二四分とか、五十分とかね、そうするよね。何で二四時間制にしちゃった? これ製作者の失敗の一つだよね。

 そういえばずっと前、迷探偵コナソのベイカー街の防衛っていう映画をテレビ放送で見たけれど――

 セナさんが帰ってきてから言うための文句を、ザトールの酒場で紅茶をゆっくり飲みながら考えている。ちなみに今は朝の五時。誰も起きるはずがない。起きているはずがない。何たって毎日忙しいんだから、そりゃあ疲れも溜まってしまい、睡眠時間も増えるだろう。仕事自体は昼からだけど、夜遅くまであるからね。

 少し多めに作った、ポットに入った紅茶を、飲んで空になったティーカップに注いだ。ぼーっとしながら注いでいたため、紅茶が漏れそうになったところで、入れすぎを気づき、ポットの吐出口をすぐさま上に上げ、ギリギリ漏れないところで止めた。さすがに手で持ちながら飲むのは溢してしまいそうで怖いから、少々行儀はよろしくないが、テーブルに両手をつけ、口をティーカップに近づけて、ティーカップをテーブルに置いたまま紅茶を飲んだ。こんな格好見られたら恥ずかしくて仕方ない。でも、誰も降りてくることはないだろう。


「あれ、お前起きてたのか」


 ん!?

 後ろからお兄ちゃんの声が聞こえて、驚きのあまり咽てしまった。ついでにティーカップを倒してしまい、テーブル一面に鮮やかな赤茶色が広がった。もったいない……と、いうか、


「お兄ちゃん! 吃驚するから、元世の時みたいに階段降りる時にもう少し大きく足音立てて、私が分かるようにしてよ!」


 私がそう言うと、お兄ちゃんは苦笑いをして困った顔をする。


「……何で俺怒られてんだ……?」


 お兄ちゃんはキッチンの食器棚から、ティーカップではなく、普通の白いプラスチックコップを持って来て、私が入れた紅茶を何の了承もなく自分のコップに入れた。家でもこんな感じだったなー。お母さんがせっかく次の日の為に作ったお茶二リットルくらいを、私とお母さんがいない間に全部飲み干して、私とお母さんがお茶を全く飲めなかったり、お母さんが夕飯で、せっかく作ったローストビーフ十五枚くらいを、私が塾、お母さんが買い物に行っている間に、いつもは下の階に降りずに自分の部屋で引きこもっているはずなのに、その日だけ降りてきて、私とお母さんが食べていないにも関わらず、一人で十一枚食べる、かつ大きいやつだけ食べて小さいやつを残すという極悪非道な所業をしたのに謝りもしなかったり……あ、でも、このローストビーフの件については、後日、沢山あった鶏の唐揚げを、お兄ちゃんに小さい部分を四個しか残さないという仕返しをしてやったので、ある意味スッキリしたんだけども。

 それに加えて、私とお母さんがいない時に、やかんを焦がして謝りもせずに「これ捨てといて」みたいな感じで、リビングの床に置いておくという、屑所業をしてた。やかんを焦がし理由は大体分かる。どうせ、にこにこ動画である実況者の実況プレイ動画を見てて、やかんが沸騰しているのを忘れていたんだろう。あ、そういえば、前にお母さんがせっかく作ってくれたカレーの大半を、全て焦がしたままにして放置するという、普通じゃあり得ないこともあった。それも全部にこにこ動画でゲームの実況プレイを見ていたことによるものだろう。

 にこにこ動画には遠回しの風評被害になってしまうが……とまぁそんなことはどうでもいいんですけど、とりあえず、お兄ちゃんの頭は確実に次第に退化していることは明らかだ。

 そうそう、あとはね、週に一回お風呂に入ったりとか入らなかったりとかね、自動車運転免許の更新をサボったりね……せっかくお母さんがお金出したのにね……全てに関してお母さんは私に、お兄ちゃんに対する愚痴や怒りをぶつけていた。まぁいつもいつも言われてるから傾聴みたいに「うん、うん」と言って聞き上手をやって、どうどうしていたわけですが……


「なぁ、俺がスィッチ買ったの知ってるか?」


 私が考え事をしながら紅茶を飲んでいると、お兄ちゃんはいきなり話をしてきた。私はそのお兄ちゃんの言葉に、今度は紅茶を吹き出しそうになり咽てしまった。


「う……ゲホっ、ゲホっ! マジで!?」

「なんだ、元世で、一か月前くらいに買ってたんだけどな……なつめなら気づいてると思った」


 いや、気づくはずないでしょ! そんなにお兄ちゃんの部屋見渡さないし、入ったとしてもお兄ちゃんの部屋に入る前に、息大きく吸ってあんまり空気を吸わないようにしてるんだから! そんな長いしないし!

 ……いや待て私。ずっと前、私が入った時に、お兄ちゃんが布団に何かを咄嗟に隠していた。もしかしてあれがスィッチ? それに、その頃、違うゲーム機をあんまり使ってなかった。あとは、夜中(深夜二時とか)に私が寝てる時、お兄ちゃんの「うわー、何でダメなんだ」とか「もうだめだー、俺は何やってもダメなんだ」という、隣の部屋で寝ている私への睡眠妨害かと思われたあの言動は、スィッチをやっていた時の自虐言動だったというの……?


「ほうえぇ……で、何のソフト買ったの? というかそもそもその資金はどこから出てきたの?」

「えーっと、ゼノブレとモンハンかな。あと、お金は自分の銀行の口座から出した」


 お金残ってたのか!


「っと、スプラとか、マリオとか買わなかったの!?」

「いやー……だって、マリオは実況で見たから別いいかなーって思うし、それにスプラトゥーンは人と人の対決だから、俺がやって他の人より出来悪くなって責められるの嫌だし。暴言とか言われるの嫌だし。なつめも今度買うんでしょ? なつめもマリオの実況見てたと思うけど、あれ見た後で自分でやろうって思う? 別に、見たから良くないって思わない?」

「自分でやってみたいじゃん! それに、スプラ絶対に楽しいから買ってやった方がいいって! 私は絶対に買うけど、お兄ちゃんもスプラ買ってよ」

「いやー、なつめがやってみて楽しそうだったらやろうかな」


 こいつ何でもかんでも、否定的な意見しか返してこない!


「というかさ? お兄ちゃんいつまであんな生活してるの? この前、従姉のいっちゃん(仮)に聞いたけどさ、お兄ちゃん近くのコンビニに行くまでで息切れするんでしょ? もしも、その帰って来る時に倒れたらどうするの?」


 お兄ちゃんは私の振った話が気に入らなかったのか、俯いたままになった。そして、イスから立ち上がって、暖炉の前にイスを持って行って、私から目を背けるように背中を私に向けて座った。


「いや、そん時そん時でいいよ。死んだら死んだで、お母さんも楽になるだろし。それに俺に保険金掛かってるんでしょ? なら死んだらお金貰えるじゃん」

「え? お兄ちゃんに保険かけてないってお母さん言ってたよ」


 それに、お兄ちゃんが倒れたらそれこどお母さんが気が気ではない。もし本当にそうなったら、お兄ちゃんが倒れている現場を見た人が救急車呼んで、治療費やら入院費やらで益々お金かかるでしょうが。


「そうなの?」

「え……あ、うん。たぶん、そんなこと言ってたような気がするけど……」


 少し確信のない私は、少し後ろに引きさがってしまった。

 ……ということはせずに、ぐいぐいお兄ちゃんに話をした。


「あとさ、お兄ちゃんって何で大学中退したの?」

「いやなんか、俺でもよく分からないんだよ」

「え? どういう意味?」

「なつめはさ、挫折とか経験した事ないから分からないでしょ?」

「うーん……? 挫折って、何を挫折したの? その理由は?」

「いやだからさ、俺でも何か分からないんだって。理由も分からない」


 自分で自分の挫折の理由が分からないなんてことあるのだろうか……それに、私が挫折無しの完璧な人間に見えるの? 確かに、お兄ちゃんは部屋に籠って外の世界を見てこなかったから、私が何があったとか、お母さんがどんな苦労しているとかしらないだろうけど、私だって挫折くらい何度でもしてる。お兄ちゃんは、私が英検を合格した時にしか目にしなかったし、高校受験を難なくクリアしたところしか見ていなかっただろうから、私の挫折を知らない。

 お兄ちゃんは彼女とか作らなかったから分からなかったかもしれないけど、私なんて二回も……

 もう思い出したくない。頭が痛くなってきた。

 あと挫折と言えば、もう勉強のことでだいぶ経験した。いくら勉強しても、全く成績が上がらなかったこととか、さらに辛かった。その時は自分を、ダメ人間と思った。

 もしかしたら、昔のお兄ちゃんは、大学で他の人との差を見せつけられて、自分の欠点に気づいたのかもしれない。でも、たったそれだけで大学から逃げてきたなら、その挫折の理由を見失ってしまったなら、もう意味が無いだろう。きっと、今はただ、『挫折を理由にして、無理やり自分に楽をさせようとしている』のだと、私は勝手に思った。それが、今までのお兄ちゃんの生活で見える全てだった。

 でも、今お兄ちゃんに何を言ったって、「それは違う」って、否定をされそうだったから、私は自分の挫折や、お兄ちゃんの挫折についてのことを言わなかった。


「……どうせならさ、自分の趣味であるトランペットとか本気でやってみたら? それにさ、今じゃゲームでプロになって、大会で優勝とかできれば賞金もらえる時代になったんだし」

「……どうせ俺にはできないし。いいよ、そんなの」

「トランペットの世界一の人だってさ、元々才能がありまくってできたんじゃなくて、努力したからこその世界一なんだから、お兄ちゃんだって努力すれば、楽団とかに入れるでしょ」

「別に世界一になりたいわけじゃないし」


 例え話だから、世界一になれとは言ってないんだけれども……しっかし、どうせ、とか、別に、とか、いちいち否定的だなぁ。


「周りの人はみんな山を登っているのに、お兄ちゃんは途中の休息所で休み続けるままでいいの……?」

「…………」


 お兄ちゃんは、私のいきなり出てきた例え話に言葉を失ったようにして黙り込んだ。


「だったらさ、一旦下山して、また違う道から行くとかさ、そういうのはしないの?」

「…………」


 お兄ちゃんは依然黙ったままだ。もう耳に入っていないのかもしれない。聞こえないフリをしているのか、それとも、寝ているのか……背を向けられていては何も分からない。単に分かりあおうとしていないだけなのかもしれないけど。


「お兄ちゃん、ならさ、せめて、運動はしたら? 最初からハードなものじゃなくて、筋肉戻すために、一日スクワット十回三セットとか、腕立て伏せ五回の三セットとか。あとは、夜中に外を歩くとか、辛い運動はしなくても、生きていくために必要なあ体力は補え……」

「……なつめはさ」


 お兄ちゃんが私の話を区切るように話しをしてきた。


「何でお兄ちゃんよりもしっかりしてるのに、あんまり勉強できないの?」


 うっわ……話を変えてきた。

 しかも、私の挫折経験のある勉強のことを話題にしてくるなんて。


「ちょ、いやいや、別に勉強が嫌いなわけじゃないよ!? 私だって、勉強すればある程度はできるんだからね!?」


 私は机を物凄く強く叩き、イスから立ち上がって、反抗した。


「というかさ、なつめさ、小説書いてるよね?」

「えっ」


 まさか『コレ』が気づかれていたとは……!


「去年の夏くらいに、パソコンの検索履歴から小説のサイトに飛んで、見ちゃったんだけど、最初見た時、一体誰を題材にしてるんだっってキレそうになった」


 人のプライベートを検索履歴からのぞくなんて……これこそズバり外道でしょう!

 でもねお兄ちゃん。知ってるか分からないし、自覚あるかも分からないけど、元々お兄ちゃんが引きこもりのニートになってなかったら、『コレ』は生まれてなかったんだよ。

 って言ってあげたい。


「俺もさ、小説みたいなの小さい頃に書いた事あるんだけどさ、途中でやめちゃったんだよね。分量が書けなくて」

「……それはお兄ちゃんが、その世界観のコンセプトとか、どういう方針にするかとか決めてなかったからじゃない? 私はそういうの作るときは、予めどう作るかって決めてるよ。絵描くときだってそうだし。まずは誰を描くか――次にどんなポージングにするか――服とかはどうするか――あとは髪とか色とか」

「ちなみに、今それって続いてるの?」

「続いてるけど……」

「今どのくらい?」

「大体十五万文字くらいかな」

「へー」 


 お兄ちゃんは、それだけ言って、イスを元あった場所に戻し、乾いた笑いをして二階に上がって行った。

 くっ、逃げるが勝ちか。元からこんなものだったから、仕方ないっちゃ仕方ない。

 だけど、自分の言われることからは逃げて、人に言う事だけ言って帰る姿は非常にみっともない。これだから、せっかく、親戚のおじちゃんが、「音楽のコンサート見に行くべ」って言ってきても、「行かない」の一点張りだとか、せっかく心配してきてくれてる人に対して、「もう来ないでください」なんて言えるのだろう。

 ずっと前、お母さんがこんなことを言ってた。

『自分の人生を自分自身で潰している』

 もう、全くこの通りだろう。本当にこのままでやっていけるのか……私はとても心配だ。

 お母さんが、次の春にはお兄ちゃんを追い出すと言っていた。そう言われて本当に出て行くかはわからないけれども、それが一番最善の方法なのだと思う。なんたって、自分を治らない病に掛かっているかのように、「どうせ治んないから」って言って、カウンセリングを受ける事とか、病院に行く事を拒むし。

 それと、これはお母さんに聞いた話なのだけど、お兄ちゃんは高校生時代、一週間くらい不登校になったらしい。それも、ゲームを夜遅くまでやっていたから、朝起きることができなくて学校を休んだとか何とか……あとは、大学生時代に、お兄ちゃんは楽団でトランペットをプープー吹いていた訳だけど、演奏会時、お兄ちゃんが任されていたパートをお兄ちゃんがドタキャンして、家に電話が来たこともあったそう。

 お母さんは、私がお兄ちゃんのことを聞くと、昔からおかしかった、と言う。亡くなったお父さんも、かなりのゲーム好きであったため、その遺伝が来て、更にお兄ちゃんのゲームのやり過ぎによる脳破壊が起きているのかもしれない。実際、私もゲームが結構好きであるから、遺伝は私にも来てる。でも、私はゲームを深夜の二時くらいまでやるときもあるけど、学校には遅刻をせずにしっかり通っている。

 結局、せっかく親に学費払ってもらっているのに……的な話になってしまうから、この話はもうやめておくけど、お兄ちゃんは元世では良いご身分だよ。働かずして食って遊べて寝床もあるんだから……三十代になってからが、ニートには一番厳しくなってくるというのに……

 でも今、一番意識してほしいのは、この世界。このゲームを、魔王を倒してクリアできない限り、私たちは元世に戻れない。本当にこの世界でお兄ちゃんが更生させられるかは分からないけど、今はこの世界を信じるしかない。

 そういえば、お兄ちゃんは、この世界に転生させられた理由を知っているのかな? 私は何か、ついでにっぽかったけど、メインはあくまでお兄ちゃんだからね。

 っと、こんなことを考えてるうちに、ポットに入ってる紅茶がぬるくなってきちゃった。私の特製紅茶を今から起きてくる他の人にも飲ませてあげたいし、また温めなおそうかな。

 それとも……ちょっとそこらへん散歩でもしてこうかな。何だか変な空気がこの部屋にあるし。少し、外の新鮮な空気を吸いたいかも。

 街はちょっと荒れてるけどね。

 ……なんて、何で私、人に話している気分で物事を考えてるんだろう。バカみたい。

 さて――まずは紅茶を温めなおそう。温めなおした紅茶が入ったポットは、そろそろ起きてくる人たちのために、ティーカップ四個をテーブルの上に置いといて、メモ書きを残しておこう。

 『散歩に行ってきます。すぐ戻るので、朝ごはんを用意しておいてください。お願いします』ってね。

 ちなみに紅茶が好きなのは本当です笑

 一番良いのは、町はずれの喫茶店で、朝とか昼の時間帯に、一人でミルクティーを飲むことですかね笑

 一人の時は一番自分の気持ちの整理がしやすいですから。まぁ私のお兄ちゃん程一人になってしまうと、ダメになりますけどね笑

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