表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/232

57話 『納得のいかない決着!』

私は何とか納得しました。

 覚醒後から、マグさんは闇、または光の魔法を一切使わないようになった。手加減をしているのか、それとも使えないのか――

 どちらにせよ、私たちにとっては嬉しい限りだ。それに、火の魔法を使うようになってから、唱える頻度は少ないものの、一回発動する度に何か辛そうにしているのが窺える。というよりも、何かに怯えているような……そんな感じがする。やはり、マグさんが火そのものを嫌うのに関わりがあるのだろうか。

 呪術ってくらいだから、自分の体力を削って攻撃を強力なものに変えるとか、危険なものなのかもしれない。某ロールプレイングゲームにおける「呪いの装備」みたいに、「お祓いをしないと装備が外せないというリスクはあるけど、結構強い!」のようなコンセプトを持っているのやもしれない。

 うん、まぁそれはそれとして、カグラさんのスタミナがこれではもたない。

 せめて私がシールドなるものを使えればよかったものの……後でレベルを上げた後、覚えよう。


「カグラさん! どうにか接近戦に持ち込むことはできませんか? 魔法使いは基本的に遠距離攻撃型が一般的なので、メルちゃんみたいな脳筋魔法使いでもない限りは魔法を唱えることは難しくなるはずです!」

「できなくは……ないが、今のこの状況ではちょっと厳しいぞ! せめて、動きを止める手立てがあれば可能なのだが……」


 動きを一時的に止める手立て何て――いや? 無くもないかもしれない。要は、マグさんの気を自分自身に向けさせればいいんだ。今までの過程は、この機会に繋げる為にあったのかもしれない。

 ただ……そこからが問題だ。どうやって気を自分に向けさせるか……今や火をそこまで恐れていないように見えるし、他の魔法で動きをとめる手段を考えよう。

 とりあえず、色んな魔法をマグさんの足元に向けて唱えてみよう。それが最善であろうから。

 サンダ! ファイヤ! ウィンド! アクアー! ロックロック! アイスー!

 私は色々な初級魔法を唱えたが、魔攻が弱すぎて途中で弱まってしまう。これでは動きを止める云々以前の問題だ。

 ……あ、いいこと思いついた私。さっき融合魔法は威力がかなり上がるってセナさんが解説してた。よし、確率が物凄く低いらしいけど、やらないよりは十分マシだろう。

 対属性で強弱同士を組み合わせるのは難しい。そもそも融合ができるかすら怪しい所である。

 動きを止めるのであれば、痺れさせるか、足を氷で固めるかだけど……氷は水属性の部類に入ってるから、対属性の電気属性と合わせるのは不可か……そういうの聞けばよかったなぁ……

 セナさんは依然トランプしてるし……あれ何? 神経衰弱?

 ちっ……今は私の方が、絶賛神経衰弱中だわ。

 もうセナさんはどうでもいいや! もうやるだけやってみるしかない!


「アイスー、サンダ!」


 何となく手のひらを合わせて、両手の中に水をため込むようにして、魔法を唱えた。何だかヒンヤリしているようで生暖かいという、気持ちの悪い感覚がある。


「なつめ、なるべく早く頼むっ……!」

「わ、分かっていますとも!」


 カグラさん、刀で完全に防ぐ事ができない攻撃は全て自分自身で何とか耐えている。

 私が回復魔法を唱えているからギリギリ耐えているものの、途切れさせたら二、三発で終わりだ。


「もう何とかなってー!」


 私は斧を縦に大きく振りかぶる様にして、溜め込んである魔法を全力で飛ばした。

 体中に電気が迸った。というよりも、静電気でパチッときた感じだ。

 体育館にある、冬に静電気を発する観客席のことを思い出した。

 私の手から放たれた魔法は、少しブレてしまったせいか、マグさんの立っている位置の少し左側の地面に落ち、そこに雷が落ちた。落ちた場所には氷柱が高くでき、その氷柱は電気を帯びているかと言わんばかりに、ビリビリしている。

 これにはさすがのマグさんも驚きを隠せなかったらしく、冷や汗を出して隣を横目で恐々見ていた。それより、何たってあたりの空気が淀むくらいの劈く音がした。

 っと、こんないい機会を逃すわけにはいかない。


「カグラさん、マグさんの『気が抜けてる』隙に速攻お願いします! あとメルちゃん早くマイ武器取ってってー!」


 それに応じてカグラさんは走って斬り込みに、メルちゃんは走って武器を取りに行った。

 お兄ちゃんはその間何もしていない。とりあえず、本来の意味で物理的なボディーガードさえしてくれればいい。と、私は思っている。


「のわっ! またこの展開? 体力もたないもたない!」


 と、マグさんは楽しそうに笑いながらカグラさんの刀斬りを避けて避けて避けまくる。

 メルちゃんはその隙に、少し放れた地面に置いてあった武器をローリングしながら格好よく掴み取った。

 よし……これなら……


「メルちゃん、一気に決めるよ!」

「はい!」


 返事を返した後、メルちゃんは言われもしないのにパワーアップを何度も何度も唱え始めた。

 私の作戦が何故か伝わっているのかもしれない。奇跡だ。

 私はあることを思いついたので、アクアーを唱えてあたりを水浸しにした。


「カグラさん、一旦戻ってきてください!」

「っ……! しかし!」

「お願いします!」


 カグラさんは少々悔しそうな顔をして、飛んで戻ってきた。


「ふぅ……さぁて、またみんなで集まっちゃってどうしたのかしら? メルが武器を持ったくらいでは私は負けないわよ?」

「それはどうでしょうか?」


 私はそう言い、「アイス、アイス……」と、両手の指先を全て合わせて、手と手の中に丸を作り、ぶつぶつと唱えた。


「みんな! 水浸しで悪いんだけど、全力で思いっきり高く飛んで!」


 私がそう言うと、お兄ちゃん以外の二人は高く飛んだ。


「アイスー増し増しで!」


 私は手の中にあった魔法の気みたいなモワモワしたものを水面に投げつけた。

 すると、あたり一面に広がっていた水は一瞬にして凍り付き、マグさんの足を凍らせることができた。

 そう、一つの魔法の魔力が弱いなら足していけばいいじゃないか! そんな悪い思い付きから生まれたのが、この増強魔法である。


「ふぅん……なかなかやるね。でも、こんなもの私の火にかかれば……」


 マグさんが自身の周りに火魔法の柱を何本か作った。が、氷は一切溶けることが無い。マグさんは唖然としている。

 魔法を使った私は、「あっ、その手があったの忘れてた……」と思ったが、私も火で溶けない氷には疑問しか覚えない。私たちは滑る氷の上に、何とか転ばないように着地した。


「メルちゃん! 今こそ決着を!」


 パワーアップをし終えたメルちゃんは氷面に杖の丸い先端部分を叩きつけて、その反動で高く跳ね上がった。もちろんその先には、身動きがとれなくなって気がこちらに回っていないマグさんがいた。

 マグさんはメルちゃんの飛躍に気づき、少し考える仕草をしてから、攻撃魔法は唱えずに、メルちゃんの方を見つめていた。まるで攻撃を待っているかのようだった。


「お母様! ごめんなさい!」


 あのドラなんとかベースのあるチームのキャプテンである、クロなんとかえもんがする満月大根斬りのようなフォームで、マグさんに攻撃を仕掛けた。マグさんは攻撃をされる瞬間に、一瞬でシールドを発動した。メルちゃんのあの全力攻撃を受けても、壊れないシールドだ。相当堅いのだろう。

 それに、すごい風圧が、少し離れた私たちのもとにもやってくる。シールドと超攻撃のいがみ合いによって生まれたものであろうけど、爆風より少しだけ弱いくらいのものだ。ただでさえスベスベの地面だから、風圧に押されて滑りながら押し出されてしまいそうになる。

 少しずつ、マグさんのシールドに罅が入っていく。マグさんは少しずつ広がっていくその罅を見て、何か安心しているように見えた。そして、ついにマグさんのシールドは破壊された。


「よかった……はい、終了! 私の負け負け! 作戦崩れ、されど実力十分! これ以上の長期戦は私の体がもたないわ」


 マグさんはメルちゃんの攻撃を、スッと足以外の体だけでうまく避けて、自分の帽子の中から白旗を取り出して、ゆっくり左右に振った。メルちゃんは勢いそのままで、氷面に上半身から突っ込んだ。あれは痛い。

 というか、何か全く勝った気しないんですけど! 本当にこれでいいの?

最初からこうしとけ感半端でないですね('Д')

次話も宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ