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56話 『魔法使いをナメないで』

 他人事過ぎる! いや、ド他人事すぎる! 何が「気を付けて!」なの!?

 ここに来て、メルちゃんを除く三人で、マグさんの部屋で話した時、マグさんに、全員で掛かってこいや的な事を言われたことを唐突に思い出した。ああ、そうだ。私たち四人じゃ全員じゃなかった。もう一匹残ってたじゃないの……セナさん。


「さぁて……本番はここからよ。予め伝えておくけど、これからは私は一切自分のタレントを使わない。あと、あなた達を殺さない程度に死なせるくらいの気持ちで魔法を放つ。さて、戦闘再開よ! ファイヤル! ウォースウォーター! ウィンダル!」


 マグさんは一気に魔法を三つ唱えた。

 火魔法、水魔法、風魔法だ。簡単に言うと、火、汚水、強風! 風で火魔法の火力を高めて、汚水で体を冷ましてくれたかと思いきや、毒ダメージ付与という、希望を与えない極悪三コンボ!


「わっちが守る! ……のだ!」


 カグラさんが前線に出て、強風に耐えながら火魔法を斬って消し、濁った水を自らの体で防ぐ。


「カグラさん! 大丈夫ですか!?」


 私は、無理をしすぎているカグラさんを気遣った。


「全然大丈夫なのだ!」


 カグラさんは少し辛そうな顔をしていた。疲労がかなりたまってきているのだろう。

 あんなに刀を振るっていれば、そりゃ疲れる。

 ただ、一か所からしか魔法がこない分、楽ではある。どこかでカグラさんを休ませる機会を、私たちが作らなきゃ……

 それに加え、メルちゃんの杖はまだマグさんのすぐ近くだ。どうやってもとれやしない。本来は私たちがさっき猛攻している時に、メルちゃんが杖を取ってきてくれるとベストだったのだけれど……何で「頑張れー! 頑張れー!」って応援だけしていて、その場から一歩も動かなかったのか。でも、今更過ぎてしまったことを嘆いても、変わるものは無い。今は、今に集中しよう。


「まだまだまだまだー!」


 マグさんは途轍もない勢いで魔法を連発する。

 多方向からの攻撃をされないものの、これでは策を考える時間がとれない。

 本当にお兄ちゃんを囮に使うしかないかな。うん、それしかないかもしれない。


「お兄ちゃん! どうにか頑張ってあそこに置いてあるメルちゃんの杖を取ってきて! いや、お兄ちゃんだけじゃなくてメルちゃんも! 勿論、せめてもの罪滅ぼしだとでも思いながらね!」

「わかった! 頑張る!」


 メルちゃんはすぐに頷いた。こういう時は切り替えのは速さが役に立つ。

 だけど……


「えー、嫌だよ。戦力で言うと、確実にそっちの方が上じゃん。こっちには、魔法使いなのに魔法が使えない魔法使いと、元引きこもりのニートだぞ? それを分かって言っているのか? もしや、なつめはバカなのか?」

「うん、バカなのは認めましょう。でも、それは理窟責めならぬ屁理屈責めだよ!? メルちゃんは杖さえとれば、このパーティの中では最強になる。それに、お兄ちゃんは私と同じように、『ある程度の低スペック』でしょ? 魔力回復薬十個あげるから、何とか行ってきて!」


 お兄ちゃんは私から魔力回復薬を十個受け取り、嫌そうな顔をしながらメルちゃんと回り込むように走って行った。

 でもこの作戦は、今の状況だと妥当な判断である。なんたって、魔法が一か所からしか出ていないのだから、二手に分かれた方が相手を錯乱させることができる。

 ちなみに、今思ったことは後付けであり、私がお兄ちゃんに言った時には考えていなかった。

 ……この世の中も、結果良ければ全て良し!


「むむむ。二チームに分かれたのね。まぁ、良い判断ではあると思うわ。どちらも処理するの面倒だし」


 マグさんの魔法を撃つタイミングが少し遅くなった。

 というよりも、どちらにも対応しようとしていて、魔法がこちらに撃つ、またはお兄ちゃんの方に撃つかで、対処が遅れているようだ。

 カグラさんもこれで少しは楽になったはずだ。

 あとは、メルちゃんが杖を取れるか取れないかの問題だ……意識を完全に私たち二人に向ける方法を考えなければいけない。

 私の経験からすると、挑発か、石を当てて小さいダメージを与えるというのがある。もしくはその辺のオブジェを破壊してヘイトを集中させるか……ただ壊したら怒られそうだからなぁ……こういうのって後が怖い。

 とりあえず、惹きつけよう!

 私は一心不乱にファイヤをうちまくる。ヘイト、これで少しは溜められるはずだ。


「ちょっと! 火は危ないでしょ!」


 その瞬間、私は、もう過ぎたある事を思い出した。

 あれ、さっきマグさんって、火魔法使ってなかった……?


「あの、マグさん。何で火魔法使えるんですか?」


 私は恐る恐るマグさんに問いかけた。

 マグさんは、おかしなことを聞いたかのように、目を丸くした。


「魔法使いなんだから、これは普通じゃない? ナメないでよね」


 マグさんは私たちに攻撃魔法を集中して唱えてきた。

 しかし……ブックには火魔法以外は使えるって書いてあったはず。何かが確実におかしい。

 ……呪術覚醒をすると使えるようになるって事?

 ……詳しくは後で聞くとか何とかしよう。どうせセナさんも知っているでしょうしね。

 とりあえず、マグさんの気を惹く事には成功した。

次話も宜しくお願い致します!

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