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55話 『呪術覚醒』

 このまま無理やり魔法で押していけば、ダメージの一つくらいは与えられるはずだ。

 何せ相手は魔法使いの癖に魔法に対する耐性が無いんだ。きっとお兄ちゃんの魔法でもダメージは与えられるはず。あとは、カグラさんの刀技が炸裂すれば……!


「ちょいちょいと! 火の魔法はやめてよ! よく分からないけど、見るのも嫌いだし、近づいてくるのも嫌いなの!」


 マグさん、見るのが嫌いなのはよく分かんないけど、私、一度だけ狐火的なの見たことあって、自分の真横を通り過ぎて言った事があったから、その、近づいてくるのが怖いっていうのは何となく分かりますよ!

 でも、今はやらなければやられる時だから、人の何であろうが、やらなきゃいけないんです!

 と、私は自分の心の中でメモをして、そのメモに釘を打ち付けるようにして、自分の意志が揺らがないようにした。でもその通りではある。

 マグさんに一発のファイヤが直撃した。火はマグさんの服には燃え移らなかった。ゲームで言う……そう、継続ダメージ的なものを与えられるかと思っていたのだけれど……もしやさっきの変な水魔法に関係があるのかな?


「あっつい! まさか私の弱点を知っているなんて……あなたホント何者なの!」


 マグさんは火があたった右腕をさすりながら、カグラさんの刀裁きを只管に避け続ける。何故ダメージを喰らっても、あそこまで元気に質問ができて、その上に攻撃を避けることができるのか……私には分からない。

 と、いうか、こっちにはあなたの娘であるメルちゃんがいるんだから、弱点の一つや二つ聞く事はできるでしょう!

 私は魔力が尽きない限り魔法を撃ち続けた。ファイヤはマグさんに何発もあたり、体力を一方的に減らしていった。ちなみに魔力は尽きない。

 マグさんも体力が結構減ったみたいで、動きが鈍くなってきた。

 そしてついに……


「あたっ……!」


 マグさんが倒れた。カグラさんは刀を鞘にしまって、横にしたままマグさんのお腹に押し当てて、動けないようにした。


「どうですかマグさん!」


 作戦通りでは全くないけど、結果オーライでしょう。


「はぁ、はぁ……疲れた疲れた。熱いし、お腹苦しいし……」

「ついにやったか!? ちょっと時間かかりすぎたけど、やったか!?」


 唐突にマイクを握り締め、実況をし始めたセナさん。

 戦闘が少し長引いてしまったからか、セナさんは急遽作った自前のカードで、スリルさんとババ抜きをしていた。私は魔法を撃ちつつ見ていた。

 私たちは割と真面目にやってるというのに……


「私が初心者冒険者さんたちに、『この状態』でここまで追いつめられるとは……思わなかったわ。それより、夜に話してた、作戦はどうしたの?」

「え」

「いやだって昨日の夜――なつめさんの部屋で……」


 マグさんのその言葉を聞いた私は、あることを思い出した。

 そういえば昨日、私がトイレに行く時だったかな……扉が少し開いていたんだよね……

 廊下は灯りが点いてなかった。外の光は、この家の構造上私がいる部屋には届かなかった。

 ……そうか、お兄ちゃんが中で火を点けたから、それに反応して飛び出してきたんだ。気配やら足音やらは全く無かった。ステルスを使って気配を消していたのだろう。作戦会議に限りなく近い何かをしていた私たちの会話をずっと聞いていたのだろう。

 てことは、私がトイレに行ってから、私が階段を上がって来るまでのタイミングを計って図書室から出てきたのか……なるほど、私が図書室から出て行った後に言った言葉も、これで理解できたかもしれない。

 良い仲間かどうかは放っておいて、私たちはある程度良い人ではある。


「作戦が崩れても、協力し合うっていうのが私たちなんだと思います!」


 私は咄嗟に考えを改め、マグさんに返答をした。


「そうだ!」

「頼むからお兄ちゃんは黙ってて!」

「何でだよ……」


 お兄ちゃんは私に便乗して肯定したが、お兄ちゃんは作戦会議にほとんど貢献していないため、発言の自由はここでは一切適応されない。


「ふむふむ、まぁ、楽しそうだったから問題は無し。あとはこの戦いだけなんだけど……」

「マグどのにとっては絶望的な状況。わっちらの勝ちではないのか?」


 カグラさんは首を横に傾ける。

 マグさんは楽しそうに笑った。ピンチという言葉を知らないのか、それとも、この状態をピンチだと思っていないのか。


「あはは、私がそんな簡単に負けを認める訳が無いでしょう。こんなステータスの私でも、魔王を倒した勇者の一人になったんだから、それなりの秘策があるのよ」

「ひさく……?」


 メルちゃんは首を傾げる。

 私たちは確かに、マグさんのブックを見たんだ。そんな秘技的なものは載っていなかった。

 でも、様子から見て、張ったりと言う訳でも無さそうな……あからさまに自信があるように見える。


「いやぁ、本当は使うつもり無かったんだけど……これは今後の――いえ……それじゃあいくわ!」


 マグさんは押さえつけられながらも、呪文を唱え始めた。


「なるほど…………か」


 セナさんが小声で何かを言った。

 声が小さすぎて聞こえなかった。


「セナさん、今なんて……」

「炎に焼かれし追憶の欠片、哀れな少女に希望の悲を与え、連なる事象より慈愛を組成し、我が力となれ――! 『エヴェイユ・ソルシエール』!」


 マグさんの首飾りが、異様な赤い輝きを放出した。

 私は何故か嫌な気がした。カグラさんもその気を感じ取ったのか、刀で抑えるのをやめ、私たちが立っている場所に飛んで戻ってきた。すごいジャンプ力だ。

 現世だったらオリンピック金メダル間違いなしだね。

 マグさんの周りを炎柱が取り囲む。

 これは一体……


「これ! 今こそセナさん、解説を!」

「うん。これは間違いなく――魔道具による呪術覚醒――! 分かりやすいように言うと、装備スキルね! あの魔道具……首飾りの詳細は――? 分からないけど、とりあえず魔力値が異常に膨れ上がってる! みんな気を付けて!」

マグの所持する首飾りについては、後々説明いたします。

一つだけ情報を言うなら、詠唱無しでも自身を覚醒させることができるということです。

そういえば、館の中で盗賊との戦闘で……?

次話も宜しくお願い致します!

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