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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1章 【引きニートと妹の異世界転生】
6/232

1話 『普通の異世界?』

☆プロローグのあらすじ☆

とりあえず、兄と共に正体不明のウサギのぬいぐるみに異世界に飛ばされました!以上!


改稿しました!(今更だけど1話長かった……)

2019年10月26日(土)

 う、うぅ……眩しい……。

 ここは一体……?


「お、気が付いたね~」


 こ、この可愛い声は……あのウサギさんの声……?


「そうだよ。というか着いたよ? 異世界の大陸の一つ【パミル】。そしてここは、始まりの町内部≪木漏れ日の広場≫」


 こ、木漏れ日の広場……異世界の割に、ちゃんと日本語で成り立ってるんだ……。


 その木漏れ日の広場と呼ばれる場所は、太陽光が木々の間から差し込んできていた。

 中央付近には噴水があるみたいだ。


 噴き出る水に光が反射して、まるでダイヤモンドのように輝きを放っていた。


「この異世界を作った本人が日本人(ジャパニーズ)だからね」


 嬉しそうな声でそう言った。


「そうなの?」


 驚きを隠せず、少し大きな声が出てしまった。

 周りに人はいないけれど、ちょっと恥ずかしい。


「詳しいことは私もよく知らないよ〜」


 ウサギは首を振り答えた。


「あっそう……というかお兄ちゃんは?」

「あ、まさか、あそこで倒れている人があなたの兄?」


 ウサギが指さしたのは、青いパジャマを着て倒れている男性だった。


「そー! といっても、寝ててよかった……。寝てなかったら、唐突な出来事でショック死してたかもしれなかった」


 私は一息つく。

 私でさえいきなり過ぎてびっくりしたのだから、本当に精神が弱い兄なんて死んでしまう。


「ま、どうせ死んだんだし、変わらないでしょ?」


 ウサギは軽く言うが、死んだのは強制的にこの異世界に送ったウサギのせいだ。


「いや、そういう問題じゃなくて……」


「う、うぅ、眩しい……ここは何処だ……?」


 お兄ちゃんが目を覚ました。

 黒い髪はボサボサだけど、普通ならここまで匂いがくるのに今日はこない。

 それにパジャマがいつものやつと違う……そうか、今日はたまたまお風呂に入る日だったのか!

 よかった~、臭いままこなくて。


「お! お兄様やーっと起床ですか~? 全く待ちくたびれましたよ~」


 ウサギが近づき、陽気な声でお兄ちゃんに話しかけた。


「う、うわ、なんだお前!? ぬいぐるみが……喋ってるだとぉ!?」


 お兄ちゃんは驚きを隠せず変な口調で声を出す。

 すごいオタクっぽい。


「お兄ちゃんおはよう」

「あ、おはよう。じゃない! 何普通にしてるんだよ……あー早く自分の部屋に戻りたい自分の部屋に戻りたい……」


 お兄ちゃんは、頭を抱えながら体育座りでぷるぷる震えている。

 本当に病気なのかな。


「それは無理ですよ~、だって、もうこの世界にあなたのいた家なんて無いんですから」


 ウサギがまた軽々しく答えた。


「ちょ、どういう事だ!?」


 そりゃ驚くのは無理もない。

 なんせ、目が覚めたらいきなり異世界だったんだから。


「要は、今までいた世界とは別の世界に転生してきたって事ですよ」

「な、何を言っているのやらサッパリ……転生?」


 お兄ちゃんと同様、正直私もサッパリだ。

 特に、ラノベを読んでこなかったお兄ちゃんにとって、異世界転生なんて縁がなさすぎる話。


「コホン。ま、とりあえずこの世界のルールをお聞きください」


 咳払いをし、いきなりこの世界のルールを語り始める。


 「この世界では、大陸一つ一つごとにシステムというものがあります。例えばこの大陸【パミル】には、こんなシステムがあります」



―――『自共システム』―――



「このシステムは、働き場所を探し、働いてお金をもらって武器防具を買って魔物討伐! もちろん、討伐は世の為人の為なんだから、ちゃんとした仕事! たまに(よくある)町の人や村の人に材料調達、魔物討伐の依頼を頼まれることも!(※報酬は個人によって違う)」



 《《依頼があったら絶対にやろう!》》

 《《貰おうぜ報酬! 掴もうぜ未来!》》



「と、そんな感じで、討伐で武器防具が壊れたらまた働いて買って討伐、そして働いて買って討伐の繰り返し! ちなみにお金の単位はこの世界では【ギフ】となってます。1ギフ=1円ということでよろしく。それがこの異世界の大陸【パミル】の()()()()と言っても過言ではないようなシステム! いや、しきたりです!」


――終了――


「これが『自共システム』です。お分かり?」


 私たちの方を、自信満々に指さした。


「頭の弱いお兄ちゃんは分からないと思うけど、私はわかったよ」


 異世界に来る前から兄の事を少し見下していた私は、兄をみくびる。


「おい、決して頭弱いわけではないぞ。これでも、家に引きこもってゲームを4年間やり続けたんだ。ゲームの一つのシステムとしてとらえれば、難しいことはない」


 

 兄は腰に手を当て自信ありげに言うが、そもそも兄はこの世界に来た理由を知らない。


 もしや、ただのゲームと思っているのでは?

 ……さすがにそこまで馬鹿じゃないか。


「さすが引きニートですね」


 少しバカにする様に笑いながら言った。


 「うるさい!」と兄はぬいぐるみに言ったが、全く聞く耳をもたなかった。


「……では、装備についてですが……」


 ウサギは、急に真面目な声に戻った。


「ちょっと待ってくれ、俺の装備パジャマなんだか大丈夫なのか?」


 お兄ちゃんが心配そうに言ったが、


「ん~、まぁ……パジャマはこの世界の初期装備と同じようなものですし、大丈夫でしょ」


 と、お兄ちゃんの方を見ず、適当に受け流した。

 おそらく、布や綿などで作られたものは初期装備扱いになるのだろう。


 どっかで見た。


「はい、仕切り直して、装備について先ほども申し上げた通り、武器防具共に戦闘をして攻撃を与えたり、受けるたびに耐久力が落ちていきます。最終的にはぶっ壊れます。当たらなければ構いませんけど」


 防具壊れたら大惨事は免れない。

 ある意味、ね。


「あ、でも、下着は壊れませんので安心してね。え~、なつめさんには、事前に送り届けてあるとのご報告なんだけど……あーこれかな? 異世界転生セット? この中に入ってるものを使って」


 浮いているウサギの真下に、一つの箱があった。


 確か、この箱は私が玄関で見た――ダンボールの中を見た時にあった黄色い箱……?

 最初はマ◯オのハテナボックス的な物かと思ったけど、そんな素晴らしいモノだったんだ。

 でも、


「何で私だけ?」


 気になる。私だけなぜこんな良い扱い受けちゃってるのかな?


「まぁ、細かいことは気にせずにね。その袋にはたっぷりの装備が入っています。次のレベルに達したら、装備交換していくって感じのサイクルでお願いね! あと、装備可能レベルに達していない武器防具を装備しようとすると、謎の力で強制的に剝がされるからね。今はまだきたばっかりだから、この【レベル1】の布服シリーズ一式と、武器はドでかいオタマを使ってもらうことになるかな?」


 と、取り出したのは、小さい黄色の星の模様が散りばめられている、ピンクのふわふわなズボンと、同じ様な柄のピンクのふわふわな上着。

 あれ、この服パジャマじゃ……!?


 しかもこれ私が昔使ってたパジャマだよね?

 サイズ大丈夫なのかな……。

 それにドでかいオタマって……どんなセンスよ。


「あ、ちなみにこの装備セットに入っているものは、みんななつめさん専用なので他の人は着れません。あとみんな絶対に壊れない。もちろん保証付き。装備が傷ついた時は私に言ってくれれば、できるだけすぐに新品に交換するからね」


 私の気持ちはいず知らず、ウサギは話した。

 何気なく言ってるけど、できるだけって、どういうことだろう。


「なんで妹ばっかり良い扱い受けてんだ? 人間皆平等だろ?」


 兄が手を私たちの間に出し、話に入ってくる。


「はーい、こういう時ばっかり人権使わなーい」


 ウサギは、丸い手を兄の顔の前に出し、話すのを止めさせた。

 確かに、今まで普通の人間としては(たぶん)生きてこなかっただろう兄は、何も言い返せないだろう。


 手を出すのをやめ、私の方を向き話し出す。


「あの、ちょっと質問なのだけど、ステータスとかってどうやって見るの?」


 私は手に顎を乗せて、ウサギに質問をした。


「お、いい質問! ではお教えしましょう!」


 また私の方に指をさし、元気な声で反応してくれた



―――『ステータス表示について』―――


「ステータスはこの世界に入ってきた時に、腰ポーチ着けられた【ブック(最新版)】で見ることができます」

「こんなに小っちゃい機械なんだ……」


 ブックと呼ばれる機械は、iPone(あいぽん)5くらいの大きさの端末だった。


 「そうでもないのですよ? 試しにステータス表示のアイコンをタッチしてみてください」


 おそらく緑色のアイコン、小文字でステータスと書いてあるものだろう。

 他にも色々あるみたいだけど。


「おぉ! 目の前にステータスが大きく表示された! ちょっと近代的……!」


 横幅が二メートル、縦の長さが百五十センチほどの、長方形の青い画面(スクリーン)が現れた。

 

 名前が左上に書いてあって……その下に、タレント……能力……?

 あとは自分のステータスが、上からHP、MP、物攻、魔攻、防御などが表示されている。


「ね? すごいでしょ? まぁ、こんな感じで見ることができます。次のレベルまでの経験値も表示されるから、いっぱい使ってみてね」


「あの、この名前の下に書いてある、タレント能力【不明】って表示は?」


「お、やっぱ気になる?」


 またまた私の方に指をさした。

 嬉しそうだ。



―――追加説明『タレント能力について』―――



 「タレント能力とは、その人だけがもつ特有の能力、すなわち()()()()()()()()です。例えば~、……あ、ほらあの人!」


 ウサギが見た方向には、木漏れ日の広場のベンチに座っている男性がいた

 まるで世界の終わりを見て来た様な顔だ……。


 なんか涙が頬を伝っている様な気がするんだけど……一体何があったんだ……。



《《強制・ステータスオープン!》》



 ウサギがそう言った瞬間、その人のステータス表示が私たちの目前に現れた。

 プライバシー侵害しまくりの技。

 失笑。


「と、こんな感じで、あの人はタレント能力【職失】というモノを持ってます。あれは……職業を失いやすいという才能かぁ。可哀そう」


(うわぁ、私たちが元いた現実の方でも普通にありそう……というかそれタレント能力になっちゃうのかい……)


 軽く言うけど、現実的に言うと辛い話だ。

 というか、勝手に見といて蔑むな。


「あなた達は来たばっかりだから不明みたいだけど、この町の【占い師の館】に行けば、調べてもらえると思うから、まずはそこに行ってみてね」



―――説明終了―――



「はいはい……」


 私は肩を撫で下ろしてため息をついた。


「あのー……」


 兄が恐る恐る話に入ってきた。


「はい、ではおしまい! ちなみに私は、この大陸の港町に来るまで、それではまた後ほど」


 が、ウサギは無視をして、手を振りながら、私のポーチの中へ入った。

 ポーチはドラ〇もんのポケットの様に、無限に近い空間になっているようだ。


 なんか嬉しい。

 何処にでも行けるドアみたいな便利道具、入れたいな。


 ウサギのお兄ちゃんスルーは、可哀想ではあるけど……まぁよくやったと言う感じ。


「くぅ……気に食わない奴だ……」


 お兄ちゃんは機嫌が悪くなったのか、地面にある小石を蹴り、地団駄を踏んだ。


「ま、まあさ、ゲームみたいな世界何だしお兄ちゃんなら大丈夫でしょ? とりあえず、占い師の館に行こうよ!」


 私はお兄ちゃんを慰める様に、まあまあと手を出す。


「確かに、俺にとっちゃ普通の異世界だからな。行くか」


 また自信を取り戻したのか、腰に手を当てる。


 普通の異世界?

 なんじゃそりゃ。

 お兄ちゃんは、引きこもってゲームばかりやっていたからなのか、だいぶ頭が狂ってしまったらしい。


 かわいそう。


 そして、これから、私たちの冒険がとてつもなく過酷になることを、まだこのウサギ以外知るよしもなかった……。



「っと、まだ終わらないで終わらないで! 言い忘れてた事があった!」


 ウサギの頭がポーチから出てきた。


「え? なに?」

「あなた達の旅の目的! 伝えるの忘れてたわ!」


 ウサギがまた陽気な声で話し始める。


 あぁ、たしか聞いてなかった気がするような……一体何なんだろう?


「あなた達の目的……それは……」


 真剣な声に戻った。


 それは……?

 ドキドキが益々増幅する。

 いや、たぶんアレでしょうけど……。


「この異世界の大陸一つにつき一つあると言われている【宝珠】を【7つ】集めることです」


 あれ、ちょっと思ってたのと違う。

 魔王を倒せとかそういうもんだと思ってた。


「ほう……ん? ということはこの世界では大陸は7つあるってことでいいのか?」


 こういう時ばかりお兄ちゃんは察しが良い。


「まぁ、そうなるかな。でね、最終的な目標として、あなた達にはこの異世界の魔王を倒してもらいます!」


 陽気な声に戻り、嬉しそうに言った。

 やっぱりか。


「え? ちょっと待って! 私たちがこの世界の魔王を倒すって、何で!?」


 私は驚きの表情を浮かべる。

 話が急展開すぎて、全くついていけない。


「それはね……この転成プロジェクト自体に招待されたのはあなた達のみ……だからあなた達しかこの世界に転生した者はいない……すなわち! あなた達がこの異世界での主人公ってことになるのよ!」

「ええ!?」


 私の声は、この町中に響き渡っただろう。


 正直、理由がめちゃくちゃなのだ。

 だけど……私の中で微かな期待感が生まれていた。


 これから、私たちの新しい異世界での生活が始まるのだと――


 新たな世界、新たな出会い、そして新たな発見――


 私たちが生まれ変わるのは、これからなのだと!




 って、ちゃんと生まれ変わってほしいのはお兄ちゃんの方なんだけど。

次話もよろしくお願いいたします!

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