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53話 『勝負はまだまだこれからだ!』

 と、いうか、本当に当初の計画が完全に丸つぶれになってしまった。そう簡単に成功するとは思ってはいなかったけれども、まさかここまで酷い結果に……どうしよう。

 昔からゲームセンターとかで、コインゲームのメダルを、最後の一枚から千枚にしたり、ガチャガチャで、最後の二百円で欲しいやつ当たったり、ピンチに強いタイプではあったけれども……

 こういうのはいやだ!


「……気を取り直して、再開よ!」


 マグさんが言った。

 メルちゃんのスタミナが回復しない限り行動の幅が狭められる。当てになるのはカグラさんくらいだけど、それではカグラさんが疲れてしまって、むしろ後から畳みかける為の力が無くなってしまう。

 お兄ちゃんレベル低いステータス低いで、できるとしても……囮? いや、複数のカードに対して囮を作ってもあまり意味が無いような気もする。

 私が考えている間にも、マグさんの放したカードは宙に浮いてウヨウヨしている。


「お兄ちゃん、この状況どうしたらいいと思う!?」

「俺に言われても分からん!」

「こういう時こそのお兄ちゃんでしょ!?」

「正直こういう場面では兄妹も何も関係ないだろ!」


 私たちが言いあっている様子を、マグさんやセナさんやスリルさんはどんな顔で見ているのだろうか……仲が良いか悪いかよく分からない兄妹なもんですみません。


「あのー……本当に始めていいかな……?」


 マグさんが困った顔をしながら訊いてきた。

 私はお兄ちゃんに「ばか!」とだけ言って、喧嘩を無理やりやめた。


「始めて大丈夫です!」


 マグさんにそう言うと、苦笑いしたまま何回か頷いた。そして、マグさんは両手を空にかざして呪文を唱え始めた。


「海の煌きをまた、漣の音色をもう一度――シーミッシェメント!」


 そう唱えた瞬間、空間が歪んだように見え始めた。曇っているだけで、雨も降っていないはずなのに、地面が湿っている。

 まさか――!


「お兄ちゃん、メルちゃん、カグラさん! 体にできるだけ空気を取り込んで! どういう原理かよく分からないんだけど、たぶんこれ…………『空気が水になってる』!」


 私がそう言うと、みんな深呼吸をして、いっぱいいっぱいに空気を吸い込んだ。そして体中が水に包まれた。

 ……それにしても不思議だ。水の癖に、全く浮力がない。しかもこの現象が起きているのは、この庭だけにしか見えない。周りが湖だから水しかないのは確かだけれど、明らかに不自然……それに、何でスリルさんやマグさんは息を止めていなで、悠々としているのだろうか。ていうか、スリルさんに至ってはぐっすり眠っていらっしゃるし……

 息を止めて、数十秒後……やっとのことで空中の水が消えた。私たちは口を開けて、大きく空気を吸った。これだけでだいぶ疲れてしまった。

 私は自分のブックをすぐ取り出した。

 ――あれ、服が全然濡れてない……? ブックでステータスを即行で見る。しかし、体力の減りは全くない。

 一体この魔法は何なんだろう……ダメージを与える訳でもないし、私たちにデメリットがあるわけでも……

 そういえば、今まで宙に浮いていたマグさんのカードが全部消えている。


「あっ……魔法紙製だから水魔法とか火魔法で消えるの忘れ――おっとぉ、口を滑らすところだった」


 マグさんは口を両手で抑えて、目を細くし、横目で見てきた。

 いやだいぶ口滑ってると思うんだけど……でもいい情報を聞く事ができた! これからはMPが続く限りアクアーかファイヤでマグさんの使っていないカードを攻撃しよう。私にはそれくらいしかできない。

 あとは……


「お兄ちゃん。マグさんがカードを飛ばしたらファイヤをカードに当てて。お兄ちゃんエイムだけは良いはずだから、お願い」


 マグさんに聞こえることが無いように小声で言った。

 お兄ちゃんは「分かった」と言って、頷いた。


「メルちゃん、一人で立てそう?」

「……うん!」


 一回大きく頷き、お兄ちゃんの背中から降りて自分で立った。


「カグラさんもまだ動けますか?」

「もちろん! 全然余裕なのだ!」


 そう言って、笑顔で私にグッドサインをくれた。

 ……勝負はまだまだこれからだ!

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