52話 『融合魔法』
なつめの新たな能力が目覚める!?
ど、どうしよう……
こんなことになるとは……というか、ブックで、マグさんの使える魔法欄が大雑把な説明過ぎて、どういう魔法があるかすら分からなかった。
どれだけの種類があるかは把握できないとしても、どんな魔法があるかくらいは……
と、そうこう考えているうちにでっかい手みたいなのがもうすぐ目の前に……!
「とりあえずダメージを軽減する為の策を何か……」
私がそう言うと、お兄ちゃんが私に何かを伝えようとして、肩をトントンと手で叩いてきた。
「なつめ、ちょっといいか……」
「え? こんな時に何?」
「少し面白い事を思いついた。俺じゃあ魔攻が不足してるから、なつめにやってほしいと思った」
魔攻が不足……何? 魔法使うの? そんな、私まだ覚えたてなのになぁ。
「セナはおかしい事を言ってたよな。『実体がないものの攻撃しか通らない、その上掻き消すことができない』って。つまりそれって、『実体がないものを当てることによって相殺できる』ってことだよな?」
「え、お兄ちゃん何言ってるのか分からないんだけど……」
私が背負っていたメルちゃんをお兄ちゃんが無理やり抱き上げ、背負ってから、私に初級魔法である光魔法のライトと雷魔法のサンダを、同時に発動して範囲放出しろと無理難題な事を言ってきた。
お兄ちゃんがしたい事は何となく分かった。
ライトが魔力を溜めた光の珠であることから、初級魔法の魔力膨張による破裂放出的な物を狙っているのだろうけど……そんなことできるのかな。でももうこれしかないし、やるしかないか……!
レベルをもう少し上げてればシールドを覚えられたのに! 損!
「ライト!」
私は仕方なく魔法を唱えて、明るい光の珠を創り出した。
「お兄ちゃん、ちなみにこれって私たちに影響ないよね?」
「さぁ……とりあえず、初級魔法でダメージくらう方がまだ良いだろ! 頼んだ!」
くっ、やるしかない!
「サンダ!」
私は光の珠に、手から一瞬で放出されたサンダをうまく当てた。一瞬手がピリッとした。やはりまだ完全には使いこなせていないのかもしれない。
すると、魔力が制限以上に入ったかと思われる光の珠は、また一層眩い輝きを見せて、一気に膨らみ始めた。
「お兄ちゃん、伏せて!」
私はそう言い、お兄ちゃんを伏せさせて、私もすぐ伏せた。
光はまだ膨張を続ける。
手はもう私たちを完全に囲んでいる。
お願いだから、早く……!
私が願っていると、ようやく完全に膨らんだらしく、巨大な風船が割れるような凄い音がしたと思ったら、目を瞑っていても分かるくらいの光量が辺りを包みこんだ。
眩しい……! 目悪くなりそう!
光が消えたかと思い、目を開けると、周りにあったはずのうようよした巨大な手は消えていた。地面を見ると、どよどよとした紫の液体が飛び散っているのが分かった。
ダメージは……たぶんない。目が少し痛いくらいだから大丈夫。……のはず。
「光属性と雷属性の融合魔法による闇魔法相殺とは……一応防げる方法の一つとは言えど、また難しい方法を……」
セナさんが小声で言った。
……マイクに電源入ってるのに無駄に小声で。
マグさんも驚いているようで、目を点にしている。
「セナさん説明プリーズ!」
私はセナさんの方を見て言った。
セナさんは仕切り直したように手でマイクを持ち、机の上に乗って話を始めた。
「さっき私が言ったのは有効な防御方法、ということだから、普通に防ぐ方法だってあるの。それで、一つが今なつめさんがやった『融合魔法』。ちなみに、知ってるかもしれないけど、対属性というものがあって、火系には水系、水系には電気系、電気系には土系、土系には風系、風系には火系、が有効。そして、闇系と光系は互いに強く、互いに弱いという性質があるの。だから、光の膨張による闇魔法の打ち消しができる。それと、初級魔法であっても、それ以上の上級魔法であっても、融合魔法は威力が増す……それもかなりね。そもそも融合魔法自体、才知ある魔法使いでさえも、何十回のうち一回成功させることができるかできないかの技術だし」
「へぇ」
私は頬杖を突きながら頷いた。
説明、長いなぁ。要約すると、とりあえず魔法と魔法を重ねることで強くなれるよってことかな。
「私でもあんまりできないのに……」
マグさんが低めのトーンで俯きながら呟いた。
なんかー……悪い事しちゃったかな……
あれ、そういえばマグさん手にもう一枚カード持ってなかったっけか。
もう色々混乱しすぎて覚えていない。
ああ、もうやになっちゃうよ!
(前書きより)と、いうこともなく、普通に戦闘続行です。
ずっと考えていたのですが、もし、対属性同士をかけ合わせたらどうなるんでしょうね??? 気になります。
ワイトも気になります「ワイト」