46話 『やっと戻ってきたか!』
朝、起きた。眠い。すごく眠い。
……あっ、あれ? メルちゃんが隣にいない。
私は徐にベッドから出て、机の上に置いてある自分のブックを手に取り時間を見た。
——十二時——
めっちゃ寝てるじゃん! というかもうお昼じゃん!
そりゃメルちゃんとっくに起きてるに決まっている。
ああ、朝ごはん……食べたかったなあ。
ため息をついて、ベッドに倒れた。すると、扉をドンドンと叩く音がした。
「なつめー、起きろー、昼だぞ」
お兄ちゃんの声だ。ずっと前までお兄ちゃんの方が私より起きるの遅かったのに。というか昼夜逆転の生活をしていたはずなのに。私の方がぐうたらになってるような……気のせい?
「起きてるよー」
私は返事をして、ベッドからまた立ち上がり、体を伸ばした。髪がボサボサになっている。
ここブラシとかあるかな。髪とかしたいな。水かければどうにかなるかもしれないけど、朝から髪を濡らしたくはない。
「早く昼食べにこいよー」
「わかったってば」
異世界転生セットの中から、いつものエプロンと服を取り出した。
そうだ。そろそろ装備変えたいな。
でも、次の装備ってどんなもの何だろう。また私が昔使ってたものだったりして。
次は二十五レベルで装備できるようになるんだっけ。
次の装備、ちょっとくらい見たっていいよね。
私は箱の中から二十五レベル用の装備が入っている大きな茶色い紙袋を取り出した。
……武器はなし。
防具は白いワンピースと麦わら帽子らしい。
私の持っていなかったものだ。
これ今の時期に装備するもんじゃないだろうなあ。
お金そこまである訳ではないし、ワンピースを着たとしても、温かい着物を買う余裕はない。
寒い時期はどうにか25レベルに上がらないようにしたいな。
私は袋を箱の中にしまい、いつもの服に着替えて、部屋から出ようとした。
「あああぁぁ」
後ろからすごい低い呻き声が聞こえた。
久々に聞いた。セナさんの声だ。
箱の中からウサギのぬいぐるみが出てきた。
とても疲れているらしく、出てきたと思ったらすぐに床に倒れた。
「あれ、セナさんどうしたの? というか何でずっと出てこなかったの?」
私はウサギのぬいぐるみを、ウサギの耳を掴んで拾い上げ、机の上にちょこんと置いた。
「……が」
「え?」
「バグが」
バグとは一体何のことだろうか。
「この世界でバグが生じちゃって、ずっと直してた……」
相当疲れているのか、前のような元気はない。
というかこういう異世界にもバグってあるの?
というかどうやって直したの?
「あなたたち二人に関わらない人、要はモブである町人とかが、変な場所に瞬間移動したり、壁の中にめり込んだり、空歩き始めたり、色んなバグが発生してて、さっきまで元の世界で直してきたんだよね……」
え、めっちゃ怖くない、それ。
特に人が壁にめり込むってどんな状況なのよ。
想像しただけでも恐ろしいのだけれど!
続けて、セナさんは机でゴロゴロしながら話を続けた。
「でさ、この世界でいうと大体三ヶ月間くらい? まあそのくらいだけど、メンテナンスのために、イベントがほとんど発生しないようにしていたんだよね」
「なるほど……いや分からない。メンテナンスって何? それに、元の世界に行ったの?」
セナさんは自分の発言したことがやっと頭の中に入ってきたらしく、いきなりバタバタして慌て始めた。
どうやら、詳しく聞いてみる必要があるようだ。
この世界はどういう世界なの?