45話 『情暖』
ちょっと短め
部屋に戻ると、メルちゃんはまだ机にベターっとくっついて寝ていた。
この子は本当によく寝るな……
寝ているからこそのあの大きさともいったものか。
私も夜遅くまでゲームやってないで、早く寝れば良かった。
今更後悔したって意味ないか……本当は得られるはずだった物も、時が過ぎれば戻せなくなるもんね……
部屋の中を静かに照らしているライトのスイッチを押し、灯りを消してからベッドの上に乗り毛布を被った。
もう遅いし早く寝なきゃね。
そして私は目を閉じた。
何だか、今日一日だけで結構疲れた。色々あったというか、ありすぎたというか。それに、メルちゃんのことも……
最初は、過保護だとか親バカだとか思っていたけれど、普通に、良いお母さんって感じだった。
きっとマグさんにも考えがあったのだろう。外ではマグさんのことをお母さんと言っていたが、家ではお母様って言ってたし、言葉遣いも正そうとしていたんだろう。そういえば夕食食べた時、マグさんは一切喋らなかった。
もしかして私たちの接し方を見ていたのかな。
本当によく分からない人だ。
とりあえず、早く寝よう。早く寝よう……
「ふわあ」
欠伸が出た。
よし、これならすぐ寝れる。
幼い頃から欠伸をしたらすぐ寝れるんだって思っていた。
科学的な根拠はないけれど、気持ち的に『これなら眠れる!』ってなるんだよね。
…………
――もう、どのくらい経っただろうか。
全く寝れない。
昼寝しちゃったからだ。
私は目を開けて、月の明かりだけで薄明るくなっている天井を見た。
よくよく思い出してみると、欠伸をした時に寝れると思ったのは、テレビで怖い系のやつ見たからだったっけかな。
布団の中に潜って震えながら欠伸していたっけか……
まったく、変なところで嫌な記憶が蘇ってくる。
もう一回試してみよう。
私は毛布の中に顔を入れた。
そうして、体を横に傾けると、体が何かに当たったような感触がした。
顔を深くまで入れて見てみると、暗かったものの、中にはメルちゃんがいた。
「ど、どうしたのメルちゃん!?」
メルちゃんは私に気づかれて、苦笑いをして、毛布から顔を出した。
私も続けて、毛布から顔を出す。
メルちゃんは私の顔を見て、にっこりと微笑んだ。
「寒くて」
「さ、寒かったなら自分の部屋のベッドで寝ればよかったんじゃ?」
すると、メルちゃんは私にしがみついてきた。
さすがの私でもその行動には驚いてしまい、つい声を出してしまった。
「ど、どうしたの。メルちゃん」
「だから、寒いの。だから、こうしてくっついていたい」
メルちゃんは私に顔を見せないように言った。
その言葉は私の心に突き刺さった。
小さな鉄製の槍を何度も何度も、胸に突き刺されたような感じがした。
私はメルちゃんの体を腕で包みこんであげた。
「大丈夫だよ。私がいるから」
私はメルちゃんの耳元で、そっと、優しく話してあげた。
メルちゃんはその言葉を聞き、更に強くしがみついた。
「なつめは、あったかいね」
メルちゃんの頬を伝って一滴、涙がシーツの上に零れた。そして、私に微笑みかけた。
今、メルちゃんが何を思っているのか、考えているのかは分からないが、今はそっとしておこうと思った。
そしていつの間にか、私とメルちゃんは眠りについてしまった。