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引きニートの兄を更生させるために異世界転生  作者: 桜木はる
第1章 【引きニートと妹の異世界転生】
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プロローグ 『始まりの終わりの始まり!』

大きく改稿しました!

2019年10月25日(金)

 7月7日、曇り。


 お兄ちゃんは、今日も異臭のする部屋に引きこもっている。

 この状態は、かれこれ数年くらい続いている。

 大体4年。


 私は、父、母、兄、姉の4人家族の中に産まれた。

 どこにでも普通にあるような、二階建ての家の下で暮らす一般家庭。

 とどのつまり、末っ子だ。


 が、私が幼稚園の時、父親が癌で亡くなった。


 ――それから4人暮らし。


 そして、姉は都会の大学に行き、


 ――3人。


 一応、お兄ちゃんも大学に行くために家を出た。

 けれど、何故か2年くらいしてから戻ってきて、引きこもりのニート(クズ)になった。


 今現在、母の手一つで、高校生の私とお兄ちゃんをパートの仕事だけで養っている。


 それを知っているはずのお兄ちゃんも、自分の心の病に対し、治す為に病院に行けと言っても「行かない、どうせ……」の一点張り。

 超ムカつく。


 これじゃあ、私の大学に行く為のお金が金食い虫(お兄ちゃん)のせいで無くなっちゃう!

 って、こんな所で怒っても仕方ないんだけど。


 ちなみに私の名前は柴式なつめ!

 ピッチピチのJK二年目!


 あ、お兄ちゃんは哉太って名前。

 引きこもりのニート(クズ)。以上。


 ……え? 今そのお兄ちゃんは何をやっているかって?

 もちろんのこと、現在進行形自宅警備員です。


 え? 違う? 今何をしているかって?


 うーん、多分ゲームかなぁ。

 私が長年貯めてきたお金で買ったwiiv(うぃいぶい)なんて、完全にお兄ちゃんのものになってしまったし(壊れた)。

 それに、私の唯一の友達(パソコン)も、私が学校に行ってる間ずーっと使われているせいでボロボロに。

 お兄ちゃんが一切洗わない手でキーボードを触るものだから、ベタベタになって、加えて一部反応しないキー出てきちゃったし、もう壊れてきている。


 せめて、お風呂には入ってほしいんだけどなぁ。

(ご飯持って行くとき部屋の中に入るけど、部屋の中臭いからキツいのです。これホント)



 ……病院にも行かない、外にも出ようとしない、ずっと部屋の中で、引きこもったまま。


 自分自身を暗い檻の中に閉じ込めて、その檻の扉を開けるための鍵を持っているのに、頑なに開けようとしない。

 そんな感じだ。



《あーあ、『何処でもいいから』お兄ちゃんを更生させてくれるところはないのかなぁ……》



≪ピンポーン≫



 インターホンの音が鳴った。



(誰だろう、もう22時過ぎてるのに……)


「タイガー宅配でーす!」


 元気な男性の声が聞こえた。


 明らかにおかしい時間だ出ても大丈夫だろうか……変な人じゃないよね……?

 もしくは怖い人じゃないよね!?


「はーい……?」


 恐る恐る出てみる。

 すると玄関には、「トラみたいに早い!(タイガーですが)」のCMでおなじみの、緑の制服、頭には可愛い虎のイラストをつけた帽子を被った人が立っていた。


「えー、《セセラギ ミナミ》さんから《紫式 なつめ》さんにお荷物が届いています~、サインお願いします~」


 お兄さんが爽やかな笑顔で、荷物を渡してくれた。


 (せせらぎ) 南海(みなみ)……? こんな名前の人は聞いたことがないましてや知り合いにもいるはずがない……。

 もしやお兄ちゃんが出会い系サイトを……?


 いや、典型的なコミュ障だしありえないか。

 うん。ムリムリ。

 私だったら絶対断るし、あんなクズ。


 ペンを受け取って、柴式と書いた


「ありがとございました~」


 また、元気な声をだして出て行った。


 はーいっ……と、それにしても大きい荷物だ。

 一体何が入っているのだろう……。

 とりあえず部屋で……ってこれ! 


 ふと、ダンボールの上に貼ってあるお荷物情報の欄を見ると、【異世界転生セット】と書かれていた。


 これはどういうことだ?


(そもそも、お荷物情報に中の物書かなくてよくない? あのお兄さん気づかなかったのかな……)


 ……もしや、私が微かに思っていたことが直に……!?

 いやいや、異世界転生とか、ラノベ? って話だ。

 

 嫌に胡散臭いし……。

 何か悪い宗教のものだったりして……?


≪テーレッテレー≫


(――!?)


 何処からか音が聞こえた。

 なんか、魔女が出てくるお菓子のCMみたいな音。

 確か名前はねるね――やめとこ。


 ダンボールを開けてみると、中から大きな得体の知れない物紫色の生物が――


(ううん、ここはかわいいウサギさんにしておこう)


 耳の長いウサギのぬいぐるみが飛び出してきて、急に喋り出した。


「てれれーん! あなたたち兄妹は【異世界転生! ~人生転成プロジェクト~】の実験——あ、素晴らしい企画の一参加者として選ばれました~!」


 可愛い声でウサギのぬいぐるみが話す。


「は、はぁ?」


 私は突然のことに驚き、加えて不審に思って眉をひそめた。

 すると、ウサギは私を見てふふっと笑った。


「えーっと、確かあなたにはお兄ちゃんがいて、そのお兄ちゃんを引きニートから常人に更生させたいが為に、『何処でもいいから』転生させる場所へと、と言ったんだよね? いや、心の中で思ったのかな?」


 な、何で知ってるの!? 


「ま、まぁ、強ち間違いではないですけど……。むしろ全部あってます……」

「えへへ……なら、行きましょう! 異世界という、この次元と別離された世界へと!」


 ちょ、ちょっと待ってよ! 私何も―― 


「ほうほう、それではお兄ちゃんを檻から救い出すことはできぬぞ~?」


 うざったらしい声で私に言った。

 くぅ……それにしても、このウサギよく喋る。

 私の心が読めているみたいにベラベラと……。


「ふふ、実際、そうだからね」


 ウサギは手で口を押さえ、笑いながら答えた。


 え……?


「では改めまして、無駄話はここまで!」


 今までの全部無駄だったの!?

 

 「さぁ、飛びましょうか! あなたもきっと私の本来の姿も見たい事でしょう! ね? それでは――強制送還! 行き先、【最初の町 ザトール】へ!」



 ――レッツ! 異世界転成プロジェクト――!



 ウサギが片手を勢い良く掲げると、目の前が光に包まれ、体が宙に浮かぶような感覚が走った。


 「……あ、言うの忘れてたけど、転生は転生なので一回死ぬ。気にしないでね。うん」


 何処からか、ウサギの真面目な声が聞こえた。


(ちょ、ええぇ!?)


 死んじゃうの!?

 それ一番重要じゃん!?


 あー! やっぱりこんな変なこと思いつくんじゃなかった……!

 これから、冷蔵庫のプリンを食べようって思ってたのに!


 ……というか、あなたの姿を見たいとは一言も言ってないんですけど!?



☆★☆

次話もよろしくお願いいたします!

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